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■科学ジャーナリスト賞2009日本科学技術ジャーナリスト会議(JASTJ)では、創設10周年を記念して「科学ジャーナリスト賞」を新設、これまでに4回の表彰を行いました。
11月, 2006
「きっと面白い話がある」という情熱 第2回科学ジャーナリスト賞受賞 横山広美氏
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第2回科学ジャーナリスト賞受賞 横山広美氏
9月18日の月例会では、第2回科学ジャーナリスト賞受賞者の横山広美さんを招き、「Web作品の可能性-『光と人の物語~見るということ~』の制作を通じて」というタイトルでお話しいただいた。作品制作の経緯から、科学コミュニケーターを志したきっかけまで、非常に親しみやすい語り口で紹介された。科学コミュニケーションの媒体としてのWebの役割はますます高まりつつある。一方で、科学をいかにわかりやすく伝えるかは、どの媒体でも共通のテーマだ。この両面を含んだ横山さんのお話について、会員との間で活発な意見交換が行われた。
企業、制作スタッフ、研究者との出会い
横山さんの受賞作品『光と人の物語~見るということ』は、Nikonの一般向けページで掲載されているものだ。全体で5部構成、非常に幅広い内容で、掲載期間も3年近くに渡る(現在も進行中)作品だが、実は横山さんの最初の企画案がそのまま採用されたもので、これには横山さんも驚いたという。さらに横山さんは、制作会社のスタッフとの連携、特に、ふんだんに使われているイメージや動画を作成した、熱意あるデザイナーの存在をあげた。個人で執筆するイメージが強いサイエンスライターだが、Web作品の場合には、クライアントの理解や他のスタッフとの協力が欠かせないことがよくわかる。
『光と人の物語』には、これまでメディアに登場したことのない研究者が多く登場する。それは「誰も取材したことがない研究」を意識して取り上げたためだ。苦労して研究者を見つけ出し、最終的には「きっと面白い話があるに違いない」という勘を働かせてコンタクト。取材慣れしていない研究者の元に何度も通い、最終的には饒舌に語ってくれたというエピソードからは、研究者との出会いを楽しむ横山さんの熱意が伝わった。取材する側の心構えとして、心に留めておきたい部分だ。
サイエンスライターの「専門分野」
今年4月から東京大学大学院理学系研究科准教授として、大学での科学コミュニケーション活動にも携わっている横山さんは、大学院では高エネルギー物理学で博士号を取得。研究活動のかたわら、サイエンスライターとしての執筆活動を始めた。研究に携わっていた立場からは、自分がきちんと理解して書くということは譲れないという。取材前の準備段階で、必要があれば原著論文を読み込むことも。科学的知識があることは、どの分野の理解にもつながり、また取材でも役に立つと語った。一方で、自分の専門分野を扱う際には、専門家でない人の気持ちに戻るのに苦労したという。思い入れのある分野では、熱心に書きすぎて難易度が高くなってしまう。どこまで書いていいのか、という面では苦労したようだ。
各章の導入に用いている歴史上のエピソードなどの素材を探す方法など、制作のノウハウに多くの質問が集まった。一方、今後の仕事の方向性について聞かれ、「一(いち)クリエーター」として働きたいというこだわりがあるが、プロデューサーとしての仕事が増えてしまっているのが悩みと明かす場面も。さらには会場からは、企業が行う科学コミュニケーションとJASTJの関わりという、将来的な視点も提示された。
(第6期科学ジャーナリスト塾 熊谷玲美)
「科学と芸術の出会う物語」の行方-第2回科学ジャーナリスト賞(Web作品『光と人の物語』)受賞者は語る-
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-第2回科学ジャーナリスト賞(Web作品『光と人の物語』)受賞者は語る-
9月18日(火)、第2回科学ジャーナリスト賞を受賞した横山広美氏を招き、月例会が開催された。講演テーマは「Web作品『光と人の物語』の制作を通じて」である。NIKONの依頼による作品誕生の秘話、まだ誰も取材していない宝石のような研究者を探し、文字どおり三顧の礼で話を聞き出したり、携帯電話でつかまえて1時間も話し込んだりしたインタビューのこぼれ話、導入の物語を見つけだす創作の苦労話。その講演後の質疑応答では熱のこもった質問が続き、それに応えるように、横山氏は創作の原点を惜し気もなく披露してくれた。
サイエンスコミュニケーターと芸術家
情報発信をする際に最も大事にしていることは何かという質問に、横山氏は「インタビューを受けた人から「自分の言っていることと違う」と言われることのないようにすること」だと語った。その誠実さが彼女のサイエンスコミュニケーターとしての原点である。
また、横山氏は科学を伝えることは貴方にとってどういう意味をもつかという質問に対しては、「自分のため、自分が楽しいこと」だと答え、「ある一定の制限の中で何かを表現することがクリエーターとしての楽しみであり、喜び」なのだと語っている。
この言葉から分かるように、サイエンスコミュニケーター・横山広美氏は芸術家なのである。6才から絵を習い、音楽にも親しんでいた横山氏は、中学2年生のときに出会ったニュートンの『初期宇宙論』に衝撃を受け、科学コミュニケーターになった。『初期宇宙論』を読んだのは、カソリックの学校で多感な少女時代。神はどこから生まれたのか、神を創った神は存在するのかという疑問に一人悩んでいた時期だったという。「宇宙も生まれるんだ。」それまでの神への疑問が宇宙につながった。横山氏にとって『初期宇宙論』はサイエンスの神秘と神の神秘を一致させたビックバンとなったのである。
サグラダ・ファミリアと『光と人の物語』
横山氏の「Web作品『光と人の物語』」は、科学と芸術の融合の物語である。それは横山氏のこれまでの人生を表現している。私はこの作品を見たとき、まるでガウディのサグラダ・ファミリア(聖家族教会)のようだと思った。それはガウディが建築の詩人だと言われるように、横山氏がWebの詩人だというだけの意味ではない。横山氏の作品はサグラダ・ファミリアのように、未完の完全性をもつ建設途上の完成品なのである。
横山氏の作品『光と人の物語』は「宇宙と光」、「生命と光」、「創作と光」、「光の駆使」、「見る力の発展」の5章立てから成る。各章はさらに、「導入の物語」、「研究の背景」、「最近の発展」、「未来への挑戦」という4部構成になっている。章ごとの4部構成を5巡するわけだが、現在は第2章「生命と光」の第3部までが完成している。これから第5章の第4部まで、らせん階段のように続いていくことになる。
全体から見たら未完で建設途上のこの作品は、どの時点をとっても、完全であり、一つの芸術なのだ。サグラダ・ファミリアは完成したとき、そびえ立つそれぞれの塔の鐘が協和音を奏でる計画だと聞いた。横山氏の作品が完成するとき、きっとそれは横山氏ですら今は気がついていない新たな可能性を現わすことだろう。それはいったい私たちにどのような音色を奏でてくれるのだろうか。
(第6期科学ジャーナリスト塾 樋口和憲)
思いと出会いから生まれる物語 Nikon『光と人の物語 ~見るということ~』
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Nikon『光と人の物語 ~見るということ~』
9月18日、第2回科学ジャーナリスト賞受賞者の横山広美さん(東京大学理学系研究科准教授)を招き、例会が開かれた。Nikon『光と人の物語~見るということ~』は、引き込まれる導入、最先端の科学、美しい映像が特長のweb作品。その制作について、企画から詳しくお話しいただいた。司会は漆原次郎さん。第6期の塾生も講義の一環として出席。作品にまとめるコツ、科学ジャーナリストの心がけなどについて、参加者からは多くの質問が出されていた。
初めて読む話にしたい
Nikonの読み物ページの企画依頼を受けた横山さんは、宇宙・生命・芸術などと関連づけた5章立ての構成で、光を取り上げることにした。「作品全体は時空間的に広がりのあるもの。最先端の科学を取り上げ、どこかで聞いた話ではなく、初めて聞く内容にしたい」という提案は、Nikon側にそのまま受け入れられた。毎回の話題も一任された。
横山さんはもともと、文章や油絵で表現することが好きだった。中学生の頃に初期宇宙論と出会い、「宇宙も生まれるんだ!」と衝撃を受け、科学を伝える人を志す。執筆活動は大学院在学中に開始。他方、素粒子ニュートリノの研究で博士号を取得し、最先端の物理学にも詳しい。こうした背景を持つ横山さんだからこそ、読んで面白い作品に仕上げたいという思いは強かった。
『光と人の物語』は文学・歴史・絵画といった幅広い話題で始まり、読者を惹きつける。この冒頭の物語を選ぶ基準は、私たちの生活あるいは盲点と結びついているか、各回の内容を象徴する話としてふさわしいかだという。
世の中に知られていない面白い研究は、学会の講演タイトルなどから発掘する。研究者に取材し、時には論文をいくつも読んで研究内容を理解する。
作品中の映像は、神秘的な魅力を持つ美女のようだ。難しい話に苦手意識を感じる読者をも、作品に引き込んでしまう。美しい映像は、科学の表現に熱心なWebデザイナー・制作スタッフとのやりとりから生み出される。
出会いに恵まれた
『光と人の物語』は、企画をそのまま受け入れてくれたNikon、熱心で有能なスタッフなど、初めから出会いに恵まれたという。最先端の研究、導入の物語は、横山さんが探し求めて出会ったものだ。熱意と行動、謙虚に学ぶ姿勢、正しく伝えようとする誠実さ、感謝の言葉、穏やかな笑顔。横山さんの人間としての魅力が、よい出会いを引き寄せている。
「研究者として専門分野を学んでよかったのは、科学の手法がわかったこと」と話す。取材先でも、話しやすいと言われるそうだ。しかし塾生からの「科学ジャーナリストを目指す人がやっておくべきことは?」との問いには、「いろいろな人が自分の立場から科学を伝えればよいと思う」と答えられた。自分は自分でよいのだと励まされ、作品だけでなく、横山さんご本人と出会えたことに感謝している。
(第6期科学ジャーナリスト塾 江川晋子)

