科学ジャーナリスト塾第15期(2016年9月〜2017年2月)の記録

第15期科学ジャーナリスト塾

第15期塾生による最終作品

第1回(2016年9月7日(水)開催)「ガイダンス」報告
第2回(2016年9月21日(水)開催)「海を書く―それぞれの視点」報告
見学会 南極観測船「しらせ」見学会(2016年9月22日(木)開催)報告
第3回(2016年10月5日(水)開催)「質問とインタビューの仕方」報告
第4回(2016年10月19日(水)開催)「編集者からみた写真」報告  
第5回(2016年11月2日(水)開催)「北極海にどう向き合うか」報告
見学会 東京大学生産技術研究所 巻俊宏研究室(2016年11月16日(水))報告

見学会 東京湾の運河など(2016年11月19日(土))報告
見学会 海洋研究開発機構「かいめい」(2016年11月22日(火))報告
(※第6回は11月の3見学会)
第7回(2016年12月7日(水)開催)「ライティングの指導(1)」報告
第8回(2017年1月18日(水)開催)「原稿の発表―ライティングの指導(2)」報告
第9回(2017年2月1日(水)開催)「原稿の修正―ライティングの指導(3)」報告
第10回(2017年2月15日(水)開催)「完成記事の発表、修了」報告


第15期塾生による最終作品

 科学ジャーナリスト塾第15期の塾生たちが制作に挑み、完成させた記事(最終作品)を掲載します。今期の塾では「海」を題材としており、どの記事も海にかかわる内容となっています。作品掲載日は2017年2月15日(追加分は2月18日、3月22日)。

深海の地形を探る ~海水との戦い~ 藤田豊
ウナギの数が減少、地球温暖化が一因に 第15期塾生作品
サメは人喰いか? 沼口麻子
海に行くなら、「住民」をよく見てみて 菊池結貴子
地震の研究に欠かせない海での調査 今野公美子
日本ももっと海中ロボットに注目を 安藤聡子
水族館は何のため? 高山由香
鉄から見えた、森と海の絆 宮澤直美
サンゴ礁の危機 安部真理子
クロマグロの危機をビジネスが救うか? 第15期塾生作品
海・山・川と共に生きる人は科学者そのもの 中川美帆

深海の地形を探る ~海水との戦い~
藤田豊(塾生)

「地球は宇宙より未開の地だ」と、海洋研究開発機構(JAMSTEC)広報部長の田代省三さんは言う。現在、月や火星の地形図は完全にできあがっているのに対し、地球は3割強でしかない。地球は7割が海で覆われているためだ。深海の高い水圧が海底探査を難しくし、海底の地形図は海洋全体の5%しかできていない。海水との戦いが続く海底の地形探査を探った。

 海の深さの測り方

 陸上の地形図は、江戸時代に伊能忠敬が行ったように、時間と手間をかけて測量すれば作ることができる。現在では航空写真やGPSの利用も可能だ。では、海底の地形はどのように調べるのだろう?

 光や電波を反射させ、往復にかかる時間を測れば、距離がわかる。しかし、電磁波は海水中で急速に弱くなるため、この方法は使えない。戦前は、船舶から重りの付いた綱を垂らすという簡単で原始的な方法で、水深を測っていた。第2次世界大戦中に、軍事兵器として、海水中でも遠くまで伝わる音波を利用した「ソナー」が登場した。戦後、ソナーは魚群探知機など民生用にも使われ、JAMSTECでも研究船に搭載して海底の調査を行っている。

 現在、ロボットの開発が進み、海底地形の探査にも利用できるようになった。

 かわいくて賢い海中ロボット

 東京大学生産技術研究所准教授の巻俊宏さんのグループは、自律型海中ロボット(AUV、Autonomous Underwater Vehicle)を開発している。AUVは自律型なので人の指示なしで動く。海上の船舶と通信用ケーブルでつなぐ必要がなく、海底での行動範囲は広い。

 巻研究室の水槽実験室でAUV「Tri-TON 2」と対面した。小太りでかわいい。勝手に「亀太君」と名付けた。底面の撮影開始。ポリ容器が沈んでいる水槽の底をレーザー光で照らしながら進む。調査範囲の撮影が終了して停止。亀太君は撮影漏れ箇所がないか、しばし考え込む。次の瞬間、ゆっくりとポリ容器の側面に回り込んで撮影再開。さすが自律型の亀太君、偉い!

 撮影場所の位置を記憶するAUVにより、深海の地形探査が可能になった。しかし、AUVは、海底地形図作りには費用が高すぎるし、認知度も低い。

 地球から未開の地が消える日は、まだしばらく到来しそうにない。


「亀太君」Tri-TON 2を見つめる参加者
撮影:藤田豊

(本稿は、科学ジャーナリスト塾が実施した2016年11月16日の東京大学生産技術研究所見学会と同月22日の海洋研究開発機構見学会をもとにしている)

ウナギの数が減少、地球温暖化が一因に
第15期塾生作品

 ハレの日のごちそうとして日本人に愛されてきたニホンウナギが2014年、絶滅危惧種に指定された。養殖技術や流通技術の進歩による低価格化による消費量の増加や、ウナギの稚魚の密漁などによる獲りすぎが、ウナギが減った原因と考えられている。しかし、地球温暖化もその理由の1つとなっているようだ。その謎に迫ってみる。

 ウナギは大回遊魚

 温暖化の影響を考えるには、ウナギのユニークな生活史を知っておく必要がある。

 川の魚のイメージが強いウナギだが、意外なことにその産卵場所は太平洋のはるか南、マリアナ海嶺のスルガ海山付近である。アジア大陸や台湾、日本各地の川で成長したウナギは繁殖期を迎えると一気に海まで下り、2500kmにも渡る旅をしてスルガ海山付近にたどり着き、一斉に産卵をする。そこで孵化した稚ウナギは北赤道海流に乗って西に進み、フィリピン沖で黒潮に乗り換える。黒潮に乗って台湾や中国大陸沿岸、そして日本沿岸まで北上してきた稚ウナギは、体長5~6cmまで成長してシラスウナギと呼ばれるころになると川を上る。この途中で捕まえられたシラスウナギが養殖池に入れられて食用に回されるのである。

 産卵場所が変わって、黒潮に乗れず

 このように生後と繁殖前に大海を回遊することがウナギの生活史の醍醐味だが、近年、黒潮に乗ることができない稚ウナギが増えている。温暖化によって海水温度が変わり、スルガ海山よりも南に位置する場所で産卵する割合が増えてきているのだ。そこで孵化した稚ウナギは、北赤道海流の南側に乗ってしまい、西に進んでもうまく黒潮に乗れず、逆に南向きのミンダナオ海流に乗ってしまう。体長数cmの稚ウナギに黒潮に乗り換えるほどの泳力はなく、本来の生息地であるアジアに到達することができない。こうして成長する場所を見つけられない稚ウナギはそのまま無駄死にしてしまうのである。

 温暖化にともなう産卵場所の変化が、ウナギの数が減っている一因となっているようだ。


ウナギの産卵場所と孵化後の回遊ルート

サメは人喰いか?
沼口麻子(塾生)

 サメが話題に上ると、「人喰いザメは何種類いますか」と聞かれる。わたしがサメの取材を仕事にしているというと「どんな怖い経験がありますか」と必ず尋ねられる。

 わたしはいつもこう答える。「人喰いザメというサメはいないし、サメで怖い経験も一度もしたことがない」

「サメ=人喰い」という構図は、1970年代に大ヒットした映画『ジョーズ』が発端だ。その影響により、メディアがサメを話題にするときは、こぞって恐怖心を煽る演出をするようになった。その洗脳とも言える間違ったサメ情報を否定し、正しいサメの情報を積極的に流さなければ、わたしたちのサメに対する誤解はいつまで経っても払拭されない。

 わたしは「シャークジャーナリスト」と名乗り、サメだけに特化した情報発信をしている。馬鹿げているように思えるかもしれないが、真面目だ。世界各国を訪れて、自ら体験したサメとの出会いをありのまま記事にしたり、漁師や科学者に密着取材してレポートしたりする。それでもサメと対峙する人々からもサメが怖いというエピソードは聞いたことがない。

 現在、世界中には500種類以上のサメが存在する。手のひらサイズにしか成長しないもの、プランクトンを食べるもの、深海で美しい光を放つもの。サメを紐解いてみると、人喰いとは無縁の多種多様さが伺える。けっして、人を襲うだけがサメじゃないのだ。 「そうは言っても、サメに襲われた人はいますよね」。そう思われるかもしれない。

 そもそも海は人間の生活環境ではない。例えば、自宅の庭に得体の知れない宇宙人が立ってこっちを凝視していたら、あなたはどうするだろうか。わたしだったら、セキュリティ会社に電話をかけるか、なるべく宇宙人を刺激しないように安全な場所へ一目散に逃げるだろう。自宅や家族を守りたい人は、追い払う方法を考えるだろう。腕っ節に自信があれば、一か八か、武器を片手に戦いを挑むかもしれない。

 サメも然り。海という日常の生息環境の中に、突如としてみたこともない生物である人間が現れたとしたら。恐怖のあまり、その場を去るか、または攻撃してきてもおかしくはないだろう。みたこともない海洋外生命体を専門的に食べるサメなどいないのだから、人喰いザメは存在しないのだ。

海に行くなら、「住民」をよく見てみて
菊池結貴子(塾生)

 海を「見て」楽しむ

 レジャーの季節に海辺を訪れたとき、海をどのように楽しむだろうか。水着に着替えて浮き輪を持ち、水遊びを楽しむのも良いが、ここではあえて水に入らず、海を「見る」という楽しみ方を紹介する。海の中にはたくさんの「住民たち」がいる。彼らにとって、海は日常を過ごす住まいである。その生活を覗いてみるのだ。

 気付きづらい生き物

 浅瀬を上から覗いた写真の中にいる住民を探してみよう。


神奈川県三崎市の海。クリックすると、貝がいる場所に矢印が示される。
撮影:菊池結貴子

 手前の岩にいくつか丸いものが張りついている。貝の仲間だ。カサガイやヒザラガイという種類で、多くの場所で見られる。触っただけでは動かないほど強固に岩肌に張りついている。そのため岩と同化し、気付かないことが多い。また、イソギンチャクや、岩に張りついて生きる甲殻類に出会うこともある。

 さらに、目を凝らして水中を見てみよう。岩やコンクリートの入り組んでいるところや、海藻が生えている岸壁には魚がいることが多い。水面が反射するので見づらいが、慣れるとすぐに見つけられるようになる。

 動きでわかる魚のオスとメス

 写真の中には、2匹の魚も見える。ハゼの仲間だ。ここで「魚がいた」で終わらせず、根気よく見続けてみてほしい。魚はよく動くので、見ているとその種類の特徴がわかってくる。写真の魚は、熱帯魚のような派手さはないが、ちょんちょんと少し跳ねるように泳ぐ姿が愛らしい。

 魚が複数いれば、追いかけあったり、攻撃しあったりするようなけんかの場面を見ることもできる。それらはオス同士だ。魚には、オスとメスで見た目が変わらない種類が多いが、けんかをするのはオス同士がほとんどなので、動きを見て性別を知ることができる。けんかの理由はなわばり争いや、メスの取り合いなどだ。

 また、時には、上から見てもわかるほど腹部がふくれた個体に出会うことがある。産卵に向けて卵を用意しているメスかもしれない。その種類では、近いうちに産卵期がやってくるということが、見ただけでわかるのだ。

 生き物をしばらく見つめてみると、さまざまな発見があり、きっと面白くなってくるはずだ。せっかく海辺へ出かけるのならば、普段出会えない海の住民にも目を凝らして、海をよりいっそう楽しんではいかが。

地震の研究に欠かせない海での調査
今野公美子(塾生)

「地震の研究には海での調査が必要だ」と言われても、多くの市民はピンとこない。しかし、陸のプレートと海のプレートの境界にある日本列島は、プレートがぶつかる部分で起こる「海溝型地震」の恐れに常にさらされている。1923年の関東大地震、2011年3月の東北地方太平洋沖地震、そして30年以内の発生確率が70%といわれる南海トラフ地震も海溝型地震である。どのような周期でどの程度の地震が起こり得るのか、危険性が高まっている場所はどこなのか。予測するには、海底からのデータが欠かせない。

 日本付近の海底には、国や大学などが観測網を張り巡らせている。海底の地震計からは、地震の規模や頻度がわかる。探査船から音波を出し、その反響具合で海底下の地殻構造を解析できる。観測船の位置を全地球測位システム(GPS)でとらえ、さらに海底の装置との距離を音波で測れば海底の東西南北への動きを測定でき、水圧などからは隆起や沈降もわかる。これらの調査から、地震につながる「ひずみ」がたまっている領域などが推測できる。

 いま地震学者に注目されているのが、地震のような揺れを生じずにゆっくり断層がすべる「ゆっくり地震」と呼ばれる現象だ。地震計ではとらえることができないが、海底の移動方向や距離などをみれば、ゆっくり地震が起きたかどうかがわかる。ゆっくり地震により、その場所のひずみは解消されるようだが、周辺では逆に大きな地震が起こる可能性が指摘されている。

 ゆっくり地震の研究は始まったばかりだ。影響を見極めるには、海での観測例を積み重ねていかなければならないという。全国1000か所以上で常にGPS観測ができる陸上と違い、海では船を使うので、観測地点も観測頻度も限られる。調査費用もかかるため、無人で観測できる仕組みづくりなどが必要になると専門家は言う。

 私たち科学ジャーナリスト塾生は2016年11月22日に海洋研究開発機構(JAMSTEC)で最新探査船「かいめい」などを見学した。その日は午前6時前に福島県沖で最大震度5弱の地震が発生し、仙台港で1.4メートルなど各地で津波が観測され、緊張が高まった日だった。JAMSTECの船2隻がすぐ震源地に調査に向かうと聞き、海での調査の必要性を肌で感じることができた。

 最新の科学研究は、専門家以外には理解するのが難しいが、活字メディアで仕事をする一人として、難しいことをわかりやすく、そして正確に書くことに挑戦し続けたい。


海底下の地殻構造を調査できる探査船「かいめい」=2016年11月、神奈川県横須賀市のJAMSTEC
撮影:今野公美子

日本ももっと海中ロボットに注目を
安藤聡子(塾生)

 多様な用途、経済的にも優位なタイプ

 東京大学生産技術研究所の巻俊宏准教授を訪問し、研究中の海中ロボットのデモンストレーションを見せてもらうとともに、この分野の研究の概要と現在直面している状況をうかがった。思いがけないことに、国内でのこの分野の研究の注目度は高まっているとは言えないという。世界第6位の排他的経済水域をもつ日本なのだから、海に関する技術開発をもっと活性化すべきではないだろうか。

 海中ロボットには有人のロボットや、無人であっても人が操縦するロボットなどもあるが、今回お話を伺ったのは、自律型無人潜水機(Autonomous Underwater Vehicle、AUV)に分類される。AUVは、ロボット自身が必要な情報を収集し終わっているか、またエネルギー補給が必要かなどを判断できる。そのため、人間が到達できないような危険な場所での資源探索、生物研究など多様な用途が考えられるとともに、経済的にも優位性があるという。

 海洋資源探索に生かせる高度な技術

 日本の科学研究の取り組みの方向性に大きな影響を及ぼす科学技術基本計画の中でも海洋に関する技術開発などを推進することが宣言されているので、さぞ日本の海中ロボット研究も注目されているだろうと思っていた。だが、巻准教授によると市場が小さく、国内メーカーが育たず、認知度が低いなどの厳しい環境にあるそうだ。

 それは論文数の推移からもうかがえる。世界全体で約25年間にわたって論文数が伸びている傾向と比較すると、国内では研究への注目度が高まり続けているとはいえない。

 陸上のロボット運用に比べ、AUVは海中という厳しい環境であるがゆえに直面する技術的な課題があるとともに、ロボットの維持、管理自体にも費用がかかるという。とはいえ日本近海には豊かな海洋資源が期待できるエリアがある。また日本にはロボットや船舶関連での高度な技術資産もある。最近異分野技術の融合によるイノベーションの加速化が叫ばれているが、この分野にも是非適用してほしい。


Web of Science Core Collection 2017/1/20(Clarivate Analytics)より作成

水族館は何のため?
高山由香(塾生)

 水族館で何を学べばよいのか? およそ半年に渡る日本科学技術ジャーナリスト会議の科学ジャーナリスト塾で海についてさまざまな立場の人に話を伺い、一つの仮説を立てました。「水族館は人間が地球とのかかわり方を自分なりに見つけるための箱庭である」と。はじめのうちは、可愛い生き物や不思議な展示に目を奪われることでしょう。何度か訪れ地球環境や生物の多様性に触れることで自然と、一人ひとりの取るべきかかわり方が見えてくることでしょう。

 トラブルの原因は「一方的な甘え」

「地球上の全ての生物は海で生まれた。海は生命の源だ」と、教科書にあります。生まれた場所を実家と呼ぶならば、海は実家に例えられるでしょう。

 独り暮らしの部屋が荷物で溢れたとき、不用品をとりあえず段ボールに詰めて実家に送ったことがあります。この延長線上に、海洋投棄があります。廃棄の手間や捨てることへの罪悪感も無く、目の前からガラクタが消えて私はスッキリします。しかし実家では確実に場所を塞ぎ、迷惑になっていました。

 他にも、実家に帰省した折に「食材の宝庫だ」とばかりに勝手に料理をたくさん作ってしまった思い出があります。使えそうなものがたくさんあると、不思議と無駄づかいしてしまうという心理です。これを海に置き換えると、魚介類や石油といった資源の乱獲と重なるでしょう。

 どちらも、片方が一方的に相手に配慮無く頼る状態、つまり甘えが原因とまとめられます。

 ヒントは水族館にあり

 では解決法はというと、「自分の行いを自覚する」ことに尽きます。でも、漠然としたイメージを持つだけでは自覚ができません。そこで、まずは水族館へ足を運んでみてはいかがでしょうか。

 私たちにとって水族館は身近な存在です。日本では大小合わせると120館以上が運営されています。

 水族館へ行ったら、ぜひ姿や形が奇妙な生物を探してください。たくさんいるはずです。彼らは、水中という異世界に暮らす異形の住人です。いかに私たち人間、特に自分自身と違っているかを観察してください。相手との違いを知ることが、自分の輪郭を知ることも助けてくれます。

 波打ち際の向こうは呼吸のしかたさえ違う異世界です。海は彼らのテリトリーなのです。

 大海にも「お邪魔します」の気持ちで

 海の中は外国よりも異世界です。適切な距離感を持った付き合いが必要です。では、その距離は具体的にどのくらいと考えたらよいでしょうか。

 一つの目安として、「お邪魔します」の気持ちを持つことで、心理的に程よい距離感が生まれます。まずは水族館で、海と人間がつきあう上での丁度よい距離を体感してみませんか?

鉄から見えた、森と海の絆
宮澤直美(塾生)

「生命は海で誕生した」と言われていますが、その海が実は「貧血」状態だということを皆さんはご存知でしょうか。昨年は海に関する見学会に複数参加する機会があり、その一つで、東京湾の水質再生プロジェクトを進めている東京海洋大学の佐々木剛准教授から「海は慢性的に鉄不足だ」と聞きました。調べてみると、陸の生物とも関係の深い話だったのでご紹介します。

 鉄は生き物の必須元素

 鉄は、私たちの体に欠かせない栄養素の一つです。私たちは酸素を利用して生きていますが、血液中のタンパク質が酸素を運ぶときに鉄が使われています。鉄が不足すると酸素を十分に運べず「貧血」になってしまいます。また、植物が行う光合成にも鉄が欠かせません。“食物連鎖は鉄が無くては始まらない”と言っても過言ではないのです。

 海の鉄不足は酸素のせい?

 地球は鉄の惑星と言われるほど、鉄が豊富に存在します。その星の生物が鉄を利用して生きているのも納得です。ではなぜ、生物が誕生したはずの海が鉄不足と言われるのでしょう。

 実は、海中にあった鉄は、沈殿して鉄鉱石となってしまったのです。その昔、光合成をする生物が誕生し、酸素が大量に存在するようになりました。海に溶けていた鉄は酸素と結びついて沈殿し、長い年月をかけて鉄鉱石となりました。その後、ある生物は酸素を利用する方向に進化し、さらに、酸素は上空でオゾン層を形成しました。われわれが陸上で生活できるのはこのためです。こうして、生物の陸への進出の大前提となった酸素によって、海は鉄不足になりました。

 海の鉄は陸から

 では、現在の海の生物たちは、鉄をどこから得ているのでしょう。主に陸から供給されています。中でも、元北海道大学教授の松永勝彦さんによれば、森林の土壌に含まれる「フルボ酸」という物質が、鉄を安定に溶かして海まで運び、海藻類にも吸収されやすいということです。

 近代化にともない、森林破壊が進む近年、海の鉄不足が原因の一つとなり、「海の砂漠化」とも言われる「磯焼け」の現象が各地で発生しています。今から28年前、気仙沼の漁師、畠山重篤さんは、海のためには森を育てることが大切だと直感して仲間と植林を始めました。その後、松永教授の研究により科学的な裏付けを得て、活動は全国に広がりました。平成13年に施行された「水産基本法」では森林の保全まで言及されています。先述の佐々木准教授も、岩手県宮古市で、森・川・海のつながりをテーマとした教育活動を続けています。

海の鉄不足と供給のイメージ

サンゴ礁の危機
安部真理子(塾生)

 サンゴという動物が長い時間をかけて作り上げるサンゴ礁という地形。かつてサンゴ礁のサンゴはふみつぶしてもすぐに生えてくるほど沖縄には豊富に広がっていた。このサンゴ礁は海のめぐみとして海産物を私達に提供し、また台風や高波を和らげる防波堤の役割も担う。近年このサンゴ礁にはいくつもの脅威が迫っている。開発行為に伴う赤土の海への流入、埋め立てによる消失、オニヒトデなどの食害生物による被害、海洋酸性化、高水温等による白化現象などが原因である。

 台風は人間にとってやっかいなだけではなく、恵みももたらしてくれる。その1つが海水温の上昇を抑えることだ。真夏に強い光でを浴びて上がってしまう海水温をかきまぜて低下させていることだ。この効果はサンゴにも深く関係している。サンゴが生きられる適切な水温は18度~30度である。30度を超える日が長く続くと、共生している褐虫藻という小さな藻が出ていってしまい、色が白くなり、栄養が取れなくなってしまう。その状態が2〜3週間以上続くと、サンゴは死滅する。じつは、このようにして台風の到来が遅かった2016年の夏は多くのサンゴが死んでしまい、日本で最大と言われている石西礁湖では約7割のサンゴが死んでしまった。

 大きな危機は沖縄島(沖縄本島)北部の辺野古・大浦湾のサンゴ礁にも迫っている。この海域のサンゴ礁も2016年夏の高水温などによる影響を受け、生きているサンゴも減り、サンゴ礁に生きる生き物たちも減ってしまった。そこにさらなる追い打ちをかけているのが米軍普天間代替施設建設事業である。

 この海には262種の絶滅危惧種を含む5334種もの生物が記録されている。国の天然記念物であるジュゴンも含まれている。この生物多様性豊かな海に、米軍普天間飛行場の移設計画が1990年代から持ち上がり、今日まで大きな問題でありつづけている。この海域の生物多様性の豊かさは国内外で認められているにも関わらず、計画は進んでいる。

 防潮堤を作る技術をいくら磨いても天然の防波堤にかなうものはない。サンゴの移植技術をみがいてもサンゴ礁という地形の再生には寄与できていないのが現実だ。それなのになぜ天然の防波堤であるサンゴ礁を壊す計画がまだあるのか疑問である。

 2016年末より海上の作業が再開され、2月6日より汚濁防止膜の設置という名目のため大きなコンクリートブロックが次々に投下されている。サンゴ礁への影響は明白だ。日本政府は直ちに工事をやめて、日本の財産としてこの海を守るべきである。


年1回のペースで続けている辺野古沖の定点観測の結果。「サンゴ被度」は生きているサンゴが海底を占める割合のこと。水色グラフは水深3mの浅場での調査、青色グラフは水深10mの深場の調査結果を表している。初回の調査は1998年6月に実施したため健全なサンゴ礁の状態を記録できたが、1998年の夏は世界規模の大きな白化現象が起こり、翌年からは被度が低い状態が続いていた。2008年頃から再び復活の傾向となっていたが、2016年の夏の影響を受け再び被度が下がっている。
(沖縄リーフチェク研究会、日本自然保護協会のデータ提供による)


白化しているキクメイシ。
撮影:安部真理子


この海に暮らすジュゴンとウミガメ。両方とも絶滅危惧種である。
©東恩納琢磨

クロマグロの危機をビジネスが救うか?
第15期塾生作品

 「近大マグロ」。近畿大学水産研究所の完全養殖によるクロマグロだ。研究から32 年の年月を経た2002 年、卵を人工ふ化させて成魚まで育て、その成魚をふ化させることに成功した。その間、研究者たちは生態もよく知られていなかったクロマグロを徹底して観察。人工ふ化した稚魚が突然死する原因を突き止め、飼育環境を変える様々な対策を講じた。こうした研究成果を経て、近大マグロの量産化や市場化が始まっている。

 2012 年時点での太平洋クロマグロの資源量は 2 万 6000 トン。1960 年に比べて約 8 割減の落ち込みぶりだ。2014年には国際自然保護連合が絶滅危惧種に指定した。養殖マグロも流通しているが、天然の稚魚を捕獲して養殖する方式のため、乱獲すれば資源量を減らすことになる。資源の枯渇は喫緊の課題となっていた。

 そこで近畿大学が完全養殖に挑み、成功を収めた。2015年には、豊田通商と組んで大量生産に乗り出し、2020 年に年間 30 万尾の稚魚を生産する計画を発表している。日本国内の養殖需要の半分に相当する量である。

 近畿大学は稚魚を供給するだけでなく、成魚まで育て、「近大マグロ」として販売してもいる。養殖魚専門の料理店「近大卒の魚と紀州の恵み 近畿大学水産研究所」では、近大マグロをお造りなどで提供。気になる味は、クセもなく脂がのっていて美味しかった。近大は「社会に対して率先して養殖魚の価値を問いたい」(研究所HP)としている。

 研究にとどまらず、ビジネス面からもクロマグロの危機に対して取り組む近畿大学の今後を注視したい。

海・山・川と共に生きる人は科学者そのもの
中川美帆(塾生)

 過去の日本に通じる南極の生活

 日本は高度成長期、「自然環境から離れる暮らしが現代風」という気運があった。集落の山、川、海を利用し、生きるために必要なものを自ら用意する暮らしは減っていった。

 過去の日本の暮らしは、いま南極で行われているようだ。科学ジャーナリスト塾の課外授業でお聞きした、南極に赴任したハウスメーカーの方のお話からそれが伝わってきた。

 研究はマイナス30度を超える氷に閉ざされた場所で行われる。設備のトラブルとなれば、自分で対処しなくてはいけない。家事も自分で。極寒の厳しい環境でささやかな楽しみは食事や宴会だと言う。花見も行う。

 南極での暮らしは、日本人が忘れた暮らしと重なる。普段は田畑を耕し、牛を育て、魚を獲る。そんな人たちが年中行事では、司祭をつとめ神楽や歌舞伎など余興も演じる(写真1、2)。

 農作業は科学者の営み

 自然と共に生きる人たちの営みは、科学の視点と切り離すことができない。

 ノーベル賞受賞者の大村智さんは「研究を支えた基礎は、幼少の頃の農業の手伝い」と言う。そしてこうも。「農作業は、科学者のやることなんですよ。気候を気にする、温度を気にする、それから水分がどうであるかとか」

 農作業は海、山、川と一体になる営みだ。季節の変化は人びとを待ってくれない。竹の縄づくりでは竹の収穫期はわずか三日。早いと縄が弱くなり、過ぎれば硬く作業がしづらい。的確な判断と効率的な作業の繰り返しが求められる。

 自然と共に生きた先輩方の暮らしは科学者の研究の仕方と同じだ(写真3)。

 自然と共に生きる暮らしを今に残す島

 奄美群島は古い日本の文化を今に残す場所だ。旧暦で年中行事を行う。深い山の懐に集落があり目の間に海が広がる。川や湧き水にも恵まれている。  日本の歴史の大きな局面にも登場する。明治維新を牽引した薩摩藩の財源は、薩摩藩が奄美の人々に強いた圧政によるところが大きい。太平洋戦争のときは大島海峡の浦々に海軍の要港や特攻基地がつくられた(写真4)。

 自然、そして歴史が一体となった先輩方の知恵や生き方を今に残す場所と言えるかも知れない。

 厳しい環境の暮らしがニーズをうみ、技術革新をもたらす。そうした歴史をもつ土地に、わたしたちは住んでいる(写真4)。

 日本は海に囲まれた島。海も山も川も豊富な土地。地震などの自然災害も経験してきた。多様な科学者が生きてきた記憶を残す土地なのだ。そこにある智慧を学ぶことが、今を生き抜くヒントになる。


(写真1)2015年に鉄骨から木製に改築されたアシャゲ(集落の神まつりを行う建物)。普段は大工ではなくバスの運転手をしている集落の区長が製図を引き、立て替えた。アシャゲの横の道は海につながり、反対側は山につながる。加計呂麻島・須子茂にて。


 
(写真2)上:旧暦8月に行われる豊年祭での演目「稲すり節」。稲の収穫のあとスルシ(稲すり臼)で籾を摺る様子を模している。中央の笠をかぶっている人がスルシ役。単純作業の籾摺りが鮮やかな色の衣装と動きで表現されている。豊作の願いや収穫の喜びが、いかほどかしのばれる。奄美大島・油井にて。下:スルシ(木製のすり臼)。上下に二つの臼を重ね、上の臼の横棒を持ち回転させ揉みを摺る。左は奄美市立奄美博物館展示品。


(写真3)大島紬の独特の光沢と深みのある黒色は、絹糸に田の泥(鉄分)と車輪梅の煮出し液(タンニン)で何度も繰り返し染めることでできる。世界の中でも奄美群島だけで行われている技法。奄美市立奄美博物館展示写真。

 
(写真4)上左:奄美群島の集落は目の前に海が開き背後の三方を険しい山に囲まれている。加計呂麻島・須子茂にて(地形模型の①)。上右:入り組んだ海岸線の奥まった入江に集落がある。奄美大島・大和村にて(地形模型の②)。下:加計呂麻島の地形模型(奄美市立奄美博物館展示模型にキャプションを追加)。


第10回(2017年2月15日(水)開催)「完成記事の発表、修了」報告

卒業は新たな始まり
宮澤直美(第15期塾修了者)

 最終回は、web掲載された最終作品を投影しながら始まった。改稿の早かった順に、塾生が作品の前回からの変更点や込めた思いを発表した。これまで共に指導を受け、互いに意見を交わした仲間の作品には、いつの間にか愛着がわいていた。前回も講師だった漆原次郎氏からのコメントは褒め言葉中心で、今後も書き続けようという気持ちを後押しされた。

 仕事にも意欲的な塾生であればこそ、平日の参加が難しくなってしまうこともあるようで、塾生16人中、出席11名、web掲載9作品(2月15日現在)となった。うち2作品は今回初の登場。サメとサンゴへの熱い思いが伝わる意欲作だった。思えば、塾生の状況は様々だ。すでに書くことを仕事にする人、将来を考える学生、社会活動を続ける女性たち……。後半は、講師陣・先輩も含めた懇親会となったが、とても時間が足りず、それぞれの思いが会場に溢れた。

 アルコールが少し入ったところで、佐藤年緒塾長より修了証書が授与された。記念品にJASTJ編『科学を伝える‐失敗に学ぶ科学ジャーナリズム』をいただいた。そして、藤田豊さんと私が皆勤賞!

 普段はその作品を通じて触れるだけの人たちから指導を受けられる塾。今期はテーマを設定して見学に出るなど、初めての試みも多かったという。この貴重な機会を皆勤できて満足。照れ隠しに「暇人です」などと言ってしまったが、ただ貪欲なのだ。

 今回、生まれたつながりを大切に、これからも新しいことを吸収し、発信し続けていきたい。

収穫は「たくさんの目」の種でした
高山由香(第15期塾修了者)

 2月15日は科学ジャーナリスト塾の最終回だった。およそ半年間、共に学んだ仲間と会うのも今日で一区切りと思うと、社会人の私でもソワソワしてしまう。講師は前回に続き、サイエンスライターの漆原次郎氏。どことなく落ち着かない空気を引き締め、丁寧かつ鋭い解説で最後の講義が進んでいった。

 10名の塾生が卒業制作の最終公開添削を受けた。自分が書いた文章がほんの少しの修正で劇的に改善されるのは、嬉しい反面とても悔しい。この「ほんの少し」の違いの積み重ねが、プロフェッショナルの仕事なのだ。

 後半は卒塾セレモニーで、皆勤者の発表や講師陣・サポーターからのメッセージなどがあり、急に寂しさが湧いてきた。はがきサイズの終了証書は、手帳に貼ってお守りにした。

 塾では、多くのプロとのご縁をたくさんいただいた。また、ディスカッションを通して「世の中には自分とは違う考えの人がいる」ことを実感した。回数を重ねると、自分の意見を持つと同時に「彼ならどう考えるだろうか」「彼女ならこの点を心配するはずだ」と、具体的な人物像が、私の中に形成されてきた。同じテーマで話題の切り取り方や興味の持ち方を比較したことで、「他者の目」の種を拾ったのかもしれない。

 不特定多数の読者へ向けて情報を伝えるとき、この「目」をどのくらい持っているかで伝わり方に違いが出るだろう。これからも意識して種を集め、よい書き手になると心に誓った。

 
第10回塾のようす(撮影:都丸亜希子)


第9回(2017年2月1日(水)開催)「原稿の修正―ライティングの指導(3)」報告

トピックセンテンスからブレない文章を書く
藤田豊(塾生)

 第9回科学ジャーナリスト塾が2月1日に開催され、JASTJ Web編集長の漆原次郎さんが、塾生の原稿を添削しながら、ライティングの指導を行った。

 漆原さんは「トピックセンテンスが重要だ」と繰り返し強調した。伝えたい事をトピックセンテンスにまとめ、最初の段落に置く(前回の高橋講師からも同様の指導があった)。最後までそこからブレない。伝えたい事にプラスにならない話題は(どんなに書きたくても)書かない。漆原さん自身がトピックセンテンスを目につく場所に貼って執筆していると、具体策の伝授まであった。

 読んでスッと入ってくる文章を書くには? 伝えたい事を一つに絞る、読みなれている文章の型からはみ出しすぎない、一文を短く区切る。この話題の時、塾生の伊藤隆太郎さんから「読者が知っている内容は入りやすい」との指摘があった。未知のことを紹介する科学記事では新規情報を既知情報の上に乗せると分かりやすくスッと入ってくる文章になる。ひとつの書き方だ。

「原稿ができあがったら声に出して読むと、文章がスムーズかどうか分かる」との漆原さんの言葉が印象に残った。さらに、音読する事により筆者がある程度、第三者的に文章に向き合うことができ、伝えたい事が明確であるか、トピックセンテンスからのブレはないか、を判断する効果もあると考えられる。

 この文章のトピックセンテンスは明確だろうか? そこからのブレはないだろうか? 読者に今回のジャーナリスト塾の内容が伝わっただろうか?

奥義「見えるところに貼りなさい」
伊藤隆太郎(塾生)

 塾、というよりは道場だ。1対1の文章指南。ジャーナリスト塾もいよいよ終盤に入り、2月1日の9回目はサイエンスライター漆原次郎さんとの真剣勝負だった。

 まずは、書くときの身の構え。「その文章の中で伝えたいことを集約した一文を、執筆前につくり、見える所に貼りましょう」。この構えで、原稿はブレにくくなる。読み手にも「伝えたいこと」が伝わりやすくなる。

 だが、その伝えたいことが抽象的ではいけない。「日本の海洋技術について」……これはダメ。「海洋技術の今を伝える」……まだダメだ。「日本近海で、資源として有望なマンガン団塊が大量に見つかった」。うむ、これなら手に取りたいし、読んでみたい。

 では、どのように伝えよう。実際に塾生原稿に一つずつ、漆原さんが手を入れる。「○○だそうです」「○○といいます」……。文中に繰り返された表現が、書き換わる。「××さんが△△という資料で○○と述べた」。根拠を示せば読者は引きつけられるし、説得力が高まるだろう。文章に力が増していった。

 勝負が進むにつれ、議論も起きた。「地球の地形図は3割ほどしか完成していない」という話題を、どう書き出すかをめぐり、意見が割れる。「海底がまだ5%しか分かっていない、という背景から書くべきだ」「いや『地球はたった3割だ』という全体像をまず示すほうがいい」。さあ、どっちか。正解はないし、だから難しくて楽しい。

 比喩を用いるときのルールや、タイトルの付け方の原則など、指導はどこまでも具体的。師範の技にみんなで鍛えられた。

 

 
第9回塾のようす(撮影:都丸亜希子)


第8回(2017年1月18日(水)開催)「原稿の発表―ライティングの指導(2)」報告

脱エッセー。伝える文章の基礎講座
沼口麻子(塾生)

 1月18日、JASTJ科学ジャーナリスト塾で、講師の高橋真理子氏(朝日新聞社)による、文章添削の実習指導が行われた。高橋氏は、本講座の提出期限を厳守した塾生8名の文章を例に、報告文や主張文の特徴を明示した。私が衝撃を受けたのは「小学校で教わった作文はエッセーであり、伝える文とは違う」という言葉だった。

 高橋氏によると、そもそも、学校における文章とは「書くこと」だけを目的としているので、作文は自由に書き連ねてよいエッセーの部類に入る。

 しかしながら、現実世界において文章・記事を作る一番の目的は「伝えること」。それは、事実を読者に伝える「報告文」である。理解してもらうためには正確性を最優先する必要はない。また、「主張文」とは事実に基づき、取材先や著者自身の主張を伝える文章のこと。そして、最初の方で訴えたいことを明確にした一文「トピックセンテンス」をいれることがもっとも重要だという。

 今回、私個人として一番面白いと感じたのは塾生の高山由香さんの「大海にも『お邪魔します』の気持ちで」という文章だった。海洋投棄や水質汚染を、家を汚すといったユニークな喩えを用いて、わかりやすい視点で表現していた。高橋氏から学んだ伝える文章の基礎を身につけ、高山さんのように更に独自の表現で読者の心を掴む文章を書ける日が来るのはいつだろうか。締め切りに間に合わずに原稿を提出していなかった私は、少し猫背になりながら、講座終了とともに次回の塾の原稿締め切り日を手帳に太字で書き綴った。

的確であることと魅力的に見せること
菊池結貴子(塾生)

 塾もラストスパート、最終作品の作成に入った。「海」にまつわるテーマで、一般市民向けの記事をつくる設定だ。第8回では、初稿に朝日新聞の高橋真理子氏が赤ペンを入れ、塾生全員でそれを共有した。プロの講師にくまなく文章を見てもらえる、貴重な機会だ。

 それぞれの原稿に対するコメントを振り返ってみると、塾生間で共通するものがあった。

 まず、読者目線が足りていないという指摘。冒頭に「何を伝えようとする文であるか」が明示されて初めて、読者は記事の内容をつかみ興味をもつ。しかし、今回はそれを欠いた原稿がほとんどであった。その一方で、「読者にとって不要な情報」として文や語句を削除されたものもあった。とにかく読者目線に立って、必要な情報を適切なタイミングで提示し、余分な情報は積極的に削る。直感的な理解に頼れない科学の話題では特に重要なことだろう。

 また、「的確であること」と「魅力的であること」のさじ加減を直された塾生が多かった。タイトルや見出しでは、興味をひく魅力的な表現が欲しいが、これが難しく、つい事実を淡々と記してしまう。一方、文末で締め方を工夫しようとするあまり、事実にそぐわない表現や紋切型の語句を使ってしまう例もみられた。場面や内容によって、どちらを重視するべきか見極める必要がある。

 どちらの点も、改善には練習あるのみだが、明文化されたことでだいぶ意識しやすくなったように感じる。学んだことはぜひとも今後活かしていきたい。

 

 
第8回塾のようす(撮影:都丸亜希子)


第7回(2016年12月7日(水)開催)「ライティングの指導(1)」報告

文章に鉄則なし、あるのは“最低限”のみ
菊池結貴子(塾生)

 気が付けば、10回にわたる塾にも終わりが見えてきてしまった。第7回の塾、講義のテーマは「ライティングの指導」。元朝日新聞論説委員の武部俊一氏を講師に招いた。

「文章にこうすれば良いという鉄則はない。しかし、最低限おさえるべき心がまえはある」との語り出しで、10点弱の心がまえを教わった。その詳細はJASTJ刊行の『科学ジャーナリストの手法』(化学同人、2007年)に書かれているので、ぜひ同書籍を参照されたい。

「言葉に敏感になる」という点について、特に考えさせられた。「倫理的に問題がある」「議論を呼びそうだ」といった表現は、記事をうまく終わらせているように見えて、実は中身がない。学術研究に関する文章でも、こうした便利な一言に逃げてしまうことがあるが、そこを具体的に言い換えると文章に深みが出るはずだ。しかし、その言い換えは容易ではなく、“最低限の心がまえ”でさえレベルが高い。新聞記者の技術の膨大さがうかがえた。

 講義後、最後に書く課題作文の形式を話し合った。会報『JASTJ News』のように、さまざまな種類の文章を分担して作成し、全体でひとつの主張をもった紙面を作成するという案も出ていたが、今期の塾の共通テーマ「海」について各々執筆するということにまとまった。ただし、主観を前面に出したエッセイや感想文は避ける。その点が明確になったことで、これまでの報告記事よりも一歩進んだ文章に挑めそうだ。

一流へのチケットは「エチケット」
高山由香(塾生)

 12月7日、今年最後の回の講師は元朝日新聞論説委員の武部俊一氏。前半はジャーナリストとしての作法、いわばエチケットいう視点からの解説だった。文章の商品価値を「締め切りを守って50点、見出しとリードで残りの半分」という例えで説明した。半世紀もの間、締め切りを守ってきた大先輩の教えは簡潔だ。

  品と深みのある文章
 結論として、文章を書いていない時の過ごし方が重要だといえる。読み手に負荷を与えない正しい日本語、具体的で平易な表現の研究、そしてバランス感覚や教養。どれも地道な訓練と知識の積み重ねが必要だ。「同じ現場を取材しても文学や歴史の素養のある人が書く文章には滲み出るものがある」。その表現で誰かが傷ついたり、読み手の誤解を招いたりすることはないかを常に想像すべし。この教えは第4回の授業でも取り上げられた。文章修業は人生修業、生涯をかけての学びなのだ。

  卒業へ向けて
 残すところ3回となり、最後の課題が説明された。塾生の背景を考慮し、制約は緩やかだ。自由テーマの文章にプロの講評を受けるチャンスである。出席者7名で行った課題についてのディスカッションは、各自が思い描く読者像を知る初めての機会だった。同じ講義を7回も受けてきた同士なのに、思い描く「普通のおとな」は文字通り十人十色だ。その全員にわかりやすく伝えるテクニックは存在しない。あるのは伝えたいという思いだけである。

 約束と思いやり。誠実な文章は人そのものだ。

 

 
第7回塾のようす(撮影:都丸亜希子)


見学会 海洋研究開発機構「かいめい」(2016年11月22日(火))報告

地震研究に頼もしい新型船「かいめい」
今野公美子(塾生)

 11月22日の塾では、神奈川県横須賀市の海洋研究開発機構(JAMSTEC)本部を訪問し、田代省三広報部長らに話をうかがった。JAMSTECは元々、人間が300メートルの深さまで潜る技術や、深海まで行ける有人潜水船の開発を目的にできたという。前身の海洋科学技術センターの創立は1971年。人間は古来から海と共に生きてきたが、深い海への本格的な挑戦はまだ半世紀の歴史でしかない。

 新しい挑戦をリードする最新の海底広域研究船「かいめい」を見学した。2016年3月に完成したばかりで、地震探査や資源サンプルの採掘が主な任務だ。巨大な「糸巻き」に巻かれたケーブルは計1万2千メートルあり、海底の地殻構造を3次元で調べることができるという。試料解析などの研究室を備え、Wi-Fiも完備。居室は個室で、研究も生活も快適そうだ。

 東南海・南海地震の想定震源域の海底に地震計を張り巡らせて、地震と津波の兆候をとらえる「DONET」の説明も受けた。「スロースリップ」と呼ばれ注目されているプレートのごくわずかな動きもわかり、開発に携わった横引貴史さんは「地球に聴診器を当てているようなもの」と話す。

 見学コーナーでは、探査船「ちきゅう」が2012年に採掘した、東日本大震災を引き起こした断層のレプリカも見ることができた。

 訪問の22日は、朝6時前に福島県沖で地震が発生し、東北・関東の太平洋側に津波警報と注意報が発令された。緊張に包まれた日だっただけに、JAMSTECの防災研究が頼もしく思えた。当日から23日にかけて福島沖で「新青丸」と「よこすか」が海底地形を緊急調査し、今後はかいめいも活躍が期待される。


最新船の「かいめい」は操縦もしやすい工夫がされているという。


地殻構造を調べるケーブルを巻いた「糸巻き」。


「かいめい」は全長約100メートル、定員65人。
(撮影:今野公美子)

変幻自在な調査船「かいめい」
高山由香(塾生)

 11月22日、横須賀の海洋研究開発機構(JAMSTEC)に停泊中の「かいめい」を見学した。穏やかな港に浮かぶ真新しい船体は豪華客船のような繊細さだ。春のような日差しに、早朝の地震を忘れるほどだった。

 最初に田代省三広報部長よりJAMSTECの成り立ちと、国内外での役割や活躍などを伺う。経済団体連合会が政府に働きかけたことで1971年10月に前身となる海洋科学技術センターが設立された。40代以降の方は、未来都市というと水中都市を思い浮かべるかもしれない。その原型となる「海中都市構想」は日本でもシートピア計画として研究されていた(図2)。「地震・津波観測監視システム(DONET)」については、横引貴史研究員から説明を受けた。海底にセンサーを設置し、継続的にデータを集め解析する。このシンプルな構想を実現するために数多くの特殊技術が開発され、分野を越えて活用されている。

  JAMSTECが誇る最新鋭の研究船「かいめい」は、実にシンプルな思想で作られていた。移動手段および研究拠点としての船体に、その時々の研究内容に合わせて研究機材がセットされたコンテナ(図3)を積み込む。それは、市販のスマートフォンに好きなアプリをインストールし、自分専用にカスタマイズすることと似ている。汎用性が高く、航海ごとの準備や機能の変更も計画的に行える。

 目的に合わせ柔軟に機能を変更できる「かいめい」の存在は、日本の深海探査に不可欠であり、強力な推進力である。


かいめいに乗船。


シートピア海中作業基地(ハビタット)。


資料分析・実験用コンテナラボ。
(撮影:高山由香)


見学会 東京湾の運河など(2016年11月19日(土))報告

水面から見る東京の風景
城處絢子(塾生)

 11月19日、土曜日の午後、イチョウや桜が綺麗に紅葉している東京海洋大学品川キャンパス構内に足を運び、取材ツアーに参加した。東京海洋大学佐々木剛准教授の講演とキャナリッジ(東京湾の水辺空間を活かしたまちづくりを目指す有志の会)山野道彦氏による解説を聞きながらの運河クルーズという構成だ。

 講演は、岩手県宮古市と東京湾の2つのプロジェクトで進められている川・海の環境浄化の取り組みを中心としたものだった。中学生を対象に海洋リテラシーの普及活動も行われていること、江戸時代のようにシバエビやうなぎなどが獲れる海を取り戻すことを目指していることなど、盛りだくさんながら非常にわかりやすい内容であった。

 運河クルーズは、天王洲からスタートし、芝浦~浜松町~麻布十番まで進み、折り返し、さらに目黒川の河口付近まで足を延ばした。佐々木准教授の説明も加わり、講演の理解も深めることができた。

 埋立地に建てられたマンションやオフィスビルを見上げる。普段見ている電車や車から見える東京の景色とは角度が違い、知らない東京の一面を覗き見ているようだった。

 一方、浜松町からの首都高速道路の下を流れるエリアでは、出船準備中の屋形船の群れ、雑居ビルの裏側、枝を伸ばし放題の木々、東京ではないどこかにいるような衝撃的な風景に出会った。だが、首都高速道路の切れ間からたまに見える東京タワーがまぎれもない東京であることを知らせてくれた。

 日ごろ浜松町で勤務している私にとって、日常と非日常が隣り合わせとなる不思議なひと時となった。

  
田町駅近く。ビルの中でも木々の紅葉が美しい水辺の風景。


ビルと橋脚の間から見えた東京タワー。
(撮影:城處絢子)

水質再生から広がる地域交流
宮澤直美(塾生)

 東京の芝浦で江戸時代に獲れたというシバエビを復活させようとしている人たちがいる。中心となっているのは東京海洋大学の佐々木剛准教授。「地元の資源を活かした内発的発展」という考えを軸に、港南中学校の生徒達と共に東京湾での「鉄炭ヘドロ電池プロジェクト」を進めている。鉄炭だんごをヘドロに投入すると2価の鉄イオンが放出され汚染物質と結合し、水を浄化するというもの。この時、電子の流れが生じるので電池と呼んでいる。

 佐々木氏によれば、水質再生を通じて生まれる生態系や食についての共感(環境教育)が重要であり、これには地元の協力も欠かせない。今回、運河(Canal)を架け橋(Bridge)とした地域交流、「キャナリッジ(Canalidge)」を進めている東京モノレール浜松町駅駅長、山野道彦氏の巧みなガイドで、水質再生の現場となっている東京の水路を巡った。

 屋根も無く、椅子が並べられただけの船。潮の様子をみながら、人や車、列車が通る橋の下を進み、途中の公園では手を振りながら駆け下りてくる子供たちに出会った。そして面白いことに、船には大人も手を振りたくなるらしい。水路を通るだけでたくさんの出会いがあることに驚いた。

 家康は江戸の町をつくる際、水路を大いに活用するよう設計し、この運送網が300年にわたる時代を支えていた。陸運に役割を譲った今でも、ヘドロと排ガスの臭いが無ければ、地域の人々にとっては素晴らしい交流の場だ。

 江戸時代のシバエビを復活させるための水質再生が、江戸時代に生活の要であった水路を新たな形で復活させる活動にもつながっていた。


鉄炭だんご(手前)と、鉄炭ヘドロ電池(奥に5つ並んだカップ、導線でつなぐと電球が光った)。


こちらに向かって元気に手を振る子供たち。
(撮影:宮澤直美)


見学会 東京大学生産技術研究所 巻俊宏研究室(2016年11月16日(水))報告

海中海底の全ての情報を自動で収集
安藤聡子(塾生)

 第6回の塾は、11月16日に日本最大の大学附置研究所である東京大学生産技術研究所海中観測実装工学研究センター巻俊宏研究室で、自律型海中ロボット(AUV)の見学を行った。AUVは、海中海底の情報を収集することができるロボットで、資源探索、生物研究など様々な用途が考えられる。

 しかし海中では、GPSなどで位置を特定するための電磁波が使えないため、ロボットにとっては「暗闇を手探りで歩く」(巻准教授)ような難しさがあるそうだ。また一度潜水を始めてしまうと、高度はリアルタイムにロボットが収集して判断して決めるほか、自分が十分に情報を収集したかどうかもロボットが判断する。

 実際デモンストレーションでは、Tri-TON2というAUVが実験水槽で自分で判断して潜水する様子を見せていただいた。いつまでも潜水の様子を監視していては「子離れできない親のよう」(同)なので、より長く自立した運用ができるように研究をすすめているとのこと。AUVには、人が操縦しないのでより危険な海域の情報を収集することができる一方、複雑な操作ができないといった欠点がある。

 今のところ日本の海中ロボット研究は市場が小さく、国内メーカーが育たず、認知度が低いなどの厳しい環境にあるという。だが、日本の排他的経済水域は世界第8位と非常に広く、海底資源探索などの非常に注目されている分野とともに注目していきたい研究だ。

 
見学会のようす(撮影:都丸亜希子)

ロボットにしかできない海中探査
菊池結貴子(塾生)

 地球の海の98%は、水深200m以上の深海である。水深は最も深いところで11,100m。海底資源の発掘、生物や地震に関する調査など、深海を知ることはいまや人類にとって必須の課題であるが、人間が潜れるのはせいぜい30m程度。あらゆる深海はもちろん、海のほとんどの部分には、ロボットの力を借りないと手が届かない。

 日本における海中ロボット開発の最先端をゆくのが、東京大学生産技術研究所の巻研究室だ。11月16日、准教授の巻俊宏氏に現在の研究を紹介してもらった。

 巻研究室では、自律型のロボットを開発している。無人のロボットで、潜降前にプログラムを与えておくことで、自力で活動して海面まで帰還する。指示を与えるための海中ケーブル類が要らず、身軽に動ける一方で、プログラムには工夫が求められる。地形や流れなど、海中の状況は潜降してはじめてわかるため、ロボットは臨機応変に行動しなければならないのだ。

 試験用のプールにおいて、研究員の佐藤芳紀氏にロボット「Tri-TON2」を動かしてもらった。Tri-TON2は海底地図の作成を目的に写真を撮影する。この日は撮影を行いながらプールの底を動き回り、しばらくすると動きを止めた。「撮り漏らした箇所がないかどうか」を検証しているのだ。漏れがあったと判断したらしく、追加で撮影を行い、それから浮上してきた。この機能に加え、現在、自動充電システムを開発中だという。実現されれば、海底の長期間にわたる緻密なモニタリングが可能になる。ロボットにしかできない海洋開発の仕事を大いに期待したい。


Tri-TON2。海面で目立つように黄色く着色されている。横幅は約1.5m。


Tri-TON2を見つめる巻氏と佐藤氏。愛着のこもった口調が印象的だった。
(撮影:菊池結貴子)


第5回(2016年11月2日(水)開催)「現場・人に学ぶ(1)北極海にどう向き合うか」報告

科学とビジネス、バランスが試される北極航路
今野公美子(塾生)

 11月2日の第5回塾は、東京大学大学院教授の山口一さんを講師に迎え、「北極海にどう向き合うか」という話をうかがった。科学技術ジャーナリスト会議の例会も兼ねていたため、いつもより出席者が多く、今日的なトピックを学ぶ場となった。

 前半の1時間は北極で今一番注目されている「北極航路」の講義、後半1時間は質疑応答の形で進んだ。

 北極航路とは、温暖化で北極海の海氷が減少したことで開かれる海運ルートのことだ。アジアからヨーロッパへの海運は、通常なら中東のスエズ運河を通るが、北極航路なら距離を3~4割短くでき、コストを削減できる。ロシアやカナダなど北極圏の国にとっても、ビジネスチャンスとなっている。

 山口さんの研究は、安全な運航に欠かせない「海氷状況」を予測すること。衛星からの観測データや温暖化予想などからシミュレーションしている。詳しい研究のために、日本は北極観測船を持つべきだとも主張する。

 講義では、山口さんが撮影した北極海の動画や、「海を汚さないで」と吹き出しがついたホッキョクグマの写真も映し出された。この吹き出し、聴く人を飽きさせない工夫であると同時に、ビジネスへの理解を持ちつつ地球環境に向き合う山口さんのスタンスを、端的に表す言葉なのだと思う。「航路が短くなると二酸化炭素排出量が減るので、北極航路は温暖化の緩和策であり、適応策。温暖化が進んだほうが得、ということではない」という言葉には説得力があった。

いつか、南極。今すぐ、北極。
大西尚樹(塾生)

「昭和基地はF1レースだ」。そう語ったのは2度南極で生活をしたことのあるミサワホーム社員だ。9月22日の「しらせ」見学時のこと。ミサワホームでは最先端の技術を昭和基地建設につぎ込み、新技術の開発や耐久性のテストを行い、国内での住宅やプレハブ・仮設住宅の建築に生かしている。自動車メーカーがF1レースに参戦することによって、その技術を研鑽していくことと同じであるという。今すぐには使えないが、将来に向けての実験場が南極なのだ。

 一方の北極。11月2日の塾は東京大学の山口一さんによる北極の現状に関する講義だった。2007年9月17日、地球温暖化の影響により北極海が初めて開いた。夏になると北極海の氷は緩むが、年々海水面が現れる面積が広がり、期間も長くなっている。これにより欧州への海路は従来のスエズ運河を通る南航路だけでなく、北極海を縦断する北極航路が利用可能になる。海運に係る時間と距離の短縮をもたらし、ひいては地球温暖化の原因である化石燃料の使用量を減らすことができる。半面で、生態系が脆弱な極域では、オイルの流出をもたらすような海氷による衝突事故は絶対に起こすことはできない。

 地球温暖化の緩和と適応に関する新たな国際的な枠組み「パリ協定」の実施に向けてCOP22が11月7日開幕した。温暖化の緩和と適応の両面という大きなメリットと環境破壊のリスク回避をもたらす北極の海氷予測は、今すぐにでも実用化したい技術である。

  
第5回塾のようす(撮影:都丸亜希子)


第4回(2016年10月19日(水)開催)「編集者からみた写真」報告

報道写真と映像の技術
宮澤直美(塾生)

 第4回のテーマは報道写真と映像であった。9月に作成した「しらせ訪問」の報告書に写真をそえる際、もっと良い写真を撮れなかったものかと後悔したのを思い出した。

 報道写真で一番大切なことは、一目で伝わること。そんな写真を撮るために何が必要なのか、東京新聞編集委員の引野肇氏から、技術的なポイントから貴重な体験談まで伺った。同じ研究者の写真でも、記事の主役が“研究者”か“研究”かで構図は異なってくる。ただ、現場で常に理想的な構図をとるのは難しい。被写体に「一歩近づく」という言葉に、この写真で伝えねばという記者の使命感を感じた。

 映像の場合、無駄なものは一切入れないという。「映像におけるScience Visualization」をテーマに講演いただいたのは林勝彦氏。小学生のころに観たNHKスペシャル「人体」は今でも私にとって忘れられない作品で、林氏はそのプロデューサーである。最先端の内容を分かりやすくするために、様々な映像技術を用いて可視化や簡略化を行う。ただし、内容は真実でなければならない。そのため、専門家ととことん内容をつめたという。“科学ライターは孤独”(第2回の塾より)だったが、“映像制作は白熱した共同作業”であった。

 今回、良い報道写真・映像のために必要なものとして強く印象に残ったのは、記者や制作者の強い意志や熱意だった。「しらせ訪問」時の私に足りなかったものは技術だけかと自問してみる。きっと今ならもっと良い写真が撮れる。

主張を伝えるのは「計算された」画面
高山由香(塾生)

 10月も半ばを過ぎ、人口密度の下がった教室。いつもと変わらぬ穏やかな笑顔で塾長は言った。「今日の講師は『鬼デスク』ですよ」

 4回目のテーマは「編集者から見た写真」。「カメラマンではないから、使う側・選ぶ側の立場で話します」と、東京新聞編集委員の引野肇氏。取材場面別の解説では、時に厳しい言葉も交えて「理想の一枚」と現場のリアルを語った。塾生は「記者の主張を一瞬で伝える力を持った写真」の大切さと得難さを追体験した。報道写真の第一歩は、画(え)を見た読者が何を感じるかを意識すること。漫然と撮った写真を報道写真とは呼ばないことを肝に銘じた。

 後半は元NHKプロデューサー林勝彦氏による講義「映像におけるScience Visualization」。放射能汚染を題材に、目に見えないもの表現方法を解説した。印象的な映像技法と科学的な正確さのバランスは、作り手と監修者の真剣勝負から生まれていた。「世界へ出して恥ずかしくない映像を作るために、世界最高峰の監修者を付けた」と語る林氏は、元テレビマンらしく「キッカリ15分間」で講義を終えた。

 質問タイムでは、視覚情報の加工における「やらせ」と「整理」の線引き、撮影時の心構えが話題になった。まずは、取材対象が受ける迷惑を自覚することが肝要。同時に、読者や視聴者の負荷を考慮することも欠かせない。良い画の後ろではフレームの外側へも行き届く冷静な想像力と、真実を追い伝える情熱がせめぎ合っているのだと知った。

 

 
第4回塾のようす(撮影:都丸亜希子)


第3回(2016年10月5日(水)開催)「質問とインタビューの仕方」報告

相手からのメッセージを引き出す
菊池結貴子(塾生)

「質問とインタビューの仕方」をテーマにした第3回では、NHK解説委員の室山哲也氏より指導を受けた。ノートに知識を残すよりも体感を得てほしいとのことで、メモは控えめに、対話と実習をメインにした実践的な回となった。

 取材の練習として、カウンセリングに挑戦した。塾生同士で会話をするのだが、相手が何を伝えたいかを、話の中から引き出すことが求められた。これが私にはとても新鮮な体験で、日ごろ「自分の気になる点を尋ねる」形でばかり会話していることを実感した。「相手の話したいことを掘り下げる」となると、見える世界が違う。話を受け止め、感情の乗っていそうな点について質問するうちに、自分では考えもしない方向へ話が深まっていく感覚を覚えた。

 インタビュワーが事前に考えていた質問だけを聞いていけば、取材が形だけのものになってしまう。一方、発せられるメッセージをそのまま伝えれば、インタビュワーの存在に意味がなくなってしまう。こうした問題について、室山氏は「インタビューは『予定していたことを上回る内容を作っていく共同作業』である」と語った。取材を受ける側から「聞いてくれてありがとう」という言葉が出るほど、それまで自覚がなかった思いまでも口をついて出るような聞き方が理想とのこと。実際にその域に達することはなかなか出来ないかもしれないが、日常生活でもこれを意識してみると、たくさんの発見がありそうだ。

伝えるための「聞く力」
石川航平(塾生)

 2016年10月5日、内幸町の日本プレスセンタービルで、3回目の科学ジャーナリスト塾が開催された。今回のテーマは「聞く力」。NHK解説委員でテレビプロデューサーの室山哲也さんが講師を務めた。

 前半は、室山さんから参加者に向けて、対話形式での質問が投げかけられた。それぞれ異なるテーマを持っている参加者であった。例えば、サンゴに関心がある参加者であれば、どのような点を観察するのか、どういうきっかけで関心を持ったのか、という質問であった。

 各自に共通して「聞く力」が文章を書く上で重要な「取材する力」に直結するという。続いて「今、話している相手をカウンセリングする」というお題が出され、約5分間、グループに分かれ、相手に質問をする時間が設けられた。初対面にもかかわらず、塾生同士は終始、打ち解けた雰囲気であった。

 最後は「模擬記者会見」と題し、塾生2人に対して他の塾生を質問する力を試した。演習では、普段、つながりはない塾生に対して、アドリブで質問を行った。こうすることで、物事に対して角度を変えて質問することで企画力が養われるらしい。多岐に渡った質疑で、塾生は多くの視点を手に入れることができたように感じた。

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第3回塾のようす(撮影:都丸亜希子)   塾生のお土産シークワーサーが
                    会見の話題に


見学会 南極観測船「しらせ」(2016年9月22日(木)開催)報告

しらせ訪問から学んだこと
七海裕貴(塾生)

 2016年9月22日、千葉県船橋港にて柴田鉄治さん案内で南極探査船「しらせ」の見学会に参加した。あいにくの雨だったが、思ったよりも親子連れが多く会場を賑やかにしていた。また古めかしい迷路のような船内には、写真・ポスター・南極の石など様々な展示物があり、小さな博物館のようになっていた。船体や防寒着の色などオレンジが目立つ。それは「単純に見やすいから」とのことだった。当時の乗員の生活を少しでも感じたいと思っていたところ、寝室の限られた個人スペースに張られたシールや、散髪部屋の入り口にある手作りのユーモアがあるチラシにそれらを感じた。

 見学会終盤、ミサワホーム井熊英治さんから南極クラスを受けた。話に引き込まれるようなプレゼンや南極の氷に触る機会があり南極を身近に感じることができた。南極クラスは年間300回ほど全国の学校で開催しているとのことだ。この授業を受けて「南極に行ってみたい」と思った子供たちの幾人かが、将来南極に挑戦していくのだろうと思い、感慨深く感じた。質疑応答で、南極に基地を作ることで得られる技術は「シンプルに簡単に高性能なものが作れること」との話があり、ものづくりの人間側として共感できた。

 しらせへの訪問や柴田さんの体験談を聞くまで、南極へ特に関心がなかった。なんとなく南極には何もないと思っていたからだ。しかし南極には、独自の生態系、地球と宇宙の歴史、地球環境、そして南極を平和的利用のみに限定する南極条約など貴重なものがあった。今回の学びを個人的に広めていきたいと思う。

 
隊員たちが互いに髪を刈る理髪店。
部屋にはトラ刈になった隊員の写真(撮影:七海裕貴)

南極では息が白くない?! -昭和基地での秘話を聞く-
藤田豊(塾生)

 9月22日に、科学ジャーナリスト塾の番外編として、塾アドバイザー柴田鉄治氏の案内で、南極観測船「しらせ」(初代)の見学会が催され、塾生の多くが参集した。南極での越冬を4回も体験をされたミサワホームの井熊英治氏の「南極クラス」に参加し、南極の話を伺った。 我々の集合時間が遅かったため、井熊氏の「南極クラス」は既に終了していたのだが、柴田氏と井熊氏が同時期に「しらせ」に乗船していたというご縁があり、井熊氏が我々塾生のために特別に時間外クラスを開いてくださった。

 話の中で「南極では、吐いた息が白くならない」という事実を初めて知り、不思議だった。「南極の空気は綺麗なので、呼気中の水蒸気が液化・凝固するのに必要な微細なゴミ粒子が存在せず、水蒸気が気体状態で拡散する」との解説に、なるほどそうなのかと合点した。

 また、プレハブ住宅は南極基地の建物開発から生まれた、という話は聞いたことがあったが、ミサワホーム社員である井熊氏の話からその経緯を知る事ができた。昭和基地ではそれぞれの分野の専門家は1~2名しかおらず、何をするにも観測系・設営系を問わず隊員が助け合う以外にない。そのため、ミサワホームでは昭和基地の建物を設計するに当たり、誰でも簡単に素早く組み立てられることを基本にしたのだという。その構造が後のプレハブ住宅に繋がったという説明を聞き、プレハブ住宅誕生秘話を知った。

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「南極クラス」内の展示品(撮影:藤田豊)


第2回(2016年9月21日(水)開催)「海を書く―それぞれの視点」報告

読み手の理解を考え、伝えること
城處絢子(塾生)

 9月21日、ほぼ定刻に科学ジャーナリスト塾第2日目の講義が始まった。佐藤塾長による塾生から寄せられた「海への関心」のまとめを皮切りに、3名のアドバイザー(保坂直紀さん、瀧澤美奈子さん、山本威一郎さん)による塾生への講話、そして翌日(9月22日)に南極観測船「しらせ」見学会を控えた柴田鉄治さんによる貴重な写真を見ながらの南極報道に関する講話、という構成だった。

 アドバイザーの講話は、ご自身の経歴や海に関する視点、執筆経験や苦労話など、短い時間ながら盛りだくさんで、三者三様の個性が際立っており、あっという間に終了時間となっていた。その中でも、「科学を伝える際には、情報の正確さだけでなく、情報の伝え方も重要。基礎知識のない読み手が理解できるように想像し、文章を考える必要がある」という話が特に印象的だった。

 これまで科学情報を発信することばかり考えていたが、受け取る読み手が理解できなくては、情報の意味がないことを改めて認識した。また、塾生同士の意見交換では、様々な視点での質問が飛び出した。塾生の受け取り方もそれぞれであることが垣間見え、非常に有意義な時間であることを体感できた。

 4名の話は一日では語りつくせない様々な経験が詰まっており、強い意志と情熱、そして、人の繋がりを大切にし、わずかなチャンスでも逃さない行動力を持っていることが共通していると感じた。自分自身も意識していきたい。

科学の流儀を離れて科学を伝える
大西尚樹(塾生)

 今回は“私はこうして「海」を伝えている”という内容で4名のJASTJ会員からのプレゼンテーションがメインであった。

 保坂直紀氏から「専門家ではない武器を生かす」をキーワードに、科学ライティングの基礎となるようなプレゼンがあった。専門家は文章を書く際に正確であることと主観を盛り込まないことを気にする傾向があるが、科学ライティングにおいては数式のような科学の流儀を使わずにそのエッセンスをいかに盛り込んでいくべきかが伝えられた。

 自分自身が研究者である私は、日頃から一般向けに話したり文章を書いたりする際に気をつけていることを再確認した一方で、「科学の流儀を離れる覚悟」について学んだ。20分という時間はあまりに短く、保坂氏の話を2時間フルで聞いてみたいと感じた。

 瀧澤美奈子氏は、自身が一般企業に勤務していた頃に「地味でつまらない世界」である深海の話を本にしようとしたきっかけや、その後、ジャーナリストの視点で文章を書くようにシフトしていった経験を話された。自ら出版社に企画書を売り込んでいった話などは、科学ライターの卵である塾生に刺激的だったようだ。

 山本威一郎氏はNEC在任中の電子海図開発の話、柴田鉄治氏は南極観測船に乗って南極に行かれた経験を話されたが、“私はこうして「海」を伝えている”というテーマからは外れており、経験そのものよりも、それをどのように伝えているのか(書いているのか)を聞きたかった。

[塾長からの補足]
 柴田氏の南極に関する著書としては『南極ってどんなところ?』(朝日新聞社発行)、『国境なき大陸 南極 きみに伝えたい地球を救うヒント』(冨山房インターナショナル発行)がある。山本氏は、船舶事故と海上システムについて『科学を伝える 失敗に学ぶ科学ジャーナリズム』(JASTJ発行)に掲載した「巨大化する情報システムの落とし穴?」のなかで書き伝えている。

 

 

 
第2回の塾のようす(撮影:都丸亜希子)


第1回(2016年9月7日(水)開催)「ガイダンス」報告

第15期科学ジャーナリスト塾が開講
参加者が想いや目標を語り合う
七海裕貴(塾生)

 2016年9月7日午後7時、千代田区内幸町のプレスセンタービルで第15期科学ジャーナリスト塾が開講した。スタッフと塾生合せて27名が集まり、約2時間にわたりガイダンスと自己紹介が行われた。

 冒頭に佐藤年緒塾長から塾の趣旨について説明があった。今期は初めての試みとして「海」というテーマを設けたという。それは「海であれば誰もが自分の視点・意見を持って集まることができるから」とのことだった。

 塾の理念の説明の後、海というテーマへの関心で集まったスタッフ陣・塾生たちが自己紹介。塾生は「伝えることを学びたい」「視野を広げたい」など、それぞれの参加への想いや目標を語った。

 それらを受け佐藤塾長は「伝えたいという情熱をどういうふうに外に出させていけるか、どういうふうにまとめる手伝いができるか我々も考えていきたい」とコメントし、塾生への温かみを感じて印象的であった。

 これから約半年間、年齢層も専門分野も異なる塾生たちと講師陣がどのような相互作用を生み出していくのか、今後が非常に興味深い。

多様な立場、価値観の共有に期待
塾のガイダンスで始まる
安藤聡子(塾生)

 第15期科学ジャーナリスト塾が始まった。開催は2月15日までで、「海」をテーマに開催される。今期の塾生は16人。本職のジャーナリストやライターのほか、学生、公務員、会社員など立場はさまざまで、年齢も20代から60代まで幅広く、多様な価値観をもって課題の共有が期待できそうだ。

 冒頭、佐藤年緒塾長が、この塾について「2002年の開講以降、次世代の科学ジャーナリストや科学コミュニケーターだけでなく民間企業人も含めて、広く科学と社会との間を埋める人材育成を行ってきた」と紹介した。第15期では、初めての試みとして「海」の題材に関係した現場取材も含めての運営を予定していると説明した。

 引き続き、アドバイザー、運営者、サポーターといった方々より略歴とどのように塾にかかわるか、また今回のテーマである海への関心を紹介したのち、欠席者を除く12人による自己紹介に進んだ。

 参加者は大別して、現職のジャーナリスト、業務や研究テーマがすでに「海」と関係があって伝えたい内容が明確な人、私のように書くトレーニングを受けたことがない人の3つのグループあった。講師陣からは、どの立場であれ、できるだけ「書く」機会を提供するので活用するようにという助言があった。

 個人的には、伝える価値があると自分が信じている事実を、文字を媒介として伝える際に、自分の意図と先入観による言葉の選び方や構成とをどのようにバランスを取って伝えるかが課題だと思っている。

 
第1回の塾のようす(撮影:都丸亜希子)

第1回に集合した塾生、塾長、アドバイザー、サポーターのみなさん(撮影:都丸亜希子)


第15期科学ジャーナリスト塾

 日本科学技術ジャーナリスト会議(JASTJ、小出重幸会長)は2016年度に第15期科学ジャーナリスト塾を9月から半年間、開講します。今期は座学と実習の組み合わせで学ぶほか、見学や研究者を取材する機会を盛り込んで、塾生に原稿執筆などに挑戦してもらいます。JASTJ会員が応援します。多くの塾生の参加をお待ちしています。

■塾の内容

 科学ジャーナリスト塾では、塾生が講師の話を聞くだけでなく、その話題について論議したり、書いたり、書いた原稿へのコメントを受けたりすることができます。今期は初めての試みとして「海」の題材に関係した施設を見たり、人に会ったりして、伝えることに挑戦します。JASTJ会員であるアドバイザーの指導やサポーターの応援を受けて記事をつくります。 科学ジャーナリズムの分野は森羅万象、幅広いテーマに及びます。今期、身近な題材として海に目を向けるのは、なお謎が多い未知の世界であり、また解決すべき課題も多くあるからです。海の生き物の生態をはじめ、地震・火山の活動、さらに枯渇する水産資源や海洋の汚染、海浜の消滅、温暖化と気象、海底資源、領海問題など、さまざま話題があります。その一端を知り、伝え方を学びます。成果はJASTJのHPで発信する予定です(昨年の塾の活動内容は以下のホームページで見ることができます https://jastj.jp/arc1805/tcsj14th)。

■期間

 9月7日(水)にスタート。原則第1、第3水曜日の午後7時~9時、2月の修了時まで計10回(11月は3か所ほど取材先を用意します。取材先は追ってお知らせします)。

■場所

 日本プレスセンタービル8階特別会議室(千代田区内幸町2-2-1)。実習内容によっては場所を変える場合があります。最寄駅は 地下鉄「霞ヶ関駅」下車2-5分、都営地下鉄「内幸町」下車2分。

■スケジュール(予定)

① 9月7日 ガイダンス
② 9月21日 海を書く―それぞれの視点
③ 10月5日 質問とインタビューの仕方
④ 10月19日 編集者からみた写真
⑤ 11月2日 現場・人に学ぶ(1)
⑥ 11月19日(土)ほか 現場・人に学ぶ(2)~(3)
⑦ 12月7日 ライティングの指導(1)
⑧ 1月18日 原稿の発表―ライティングの指導(2)
⑨ 2月1日 原稿の修正―ライティングの指導(3)
⑩ 2月15日 完成記事の発表、修了

■海に関する話題の提供者

柴田鉄治(元朝日新聞科学部長・社会部長)、保坂直紀(サイエンスライター、元読売新聞記者、東京大学海洋アライアンンス)、瀧澤美奈子(サイエンスライター)

■アドバイザー

武部俊一(元朝日新聞論説委員)、高橋真理子(朝日新聞)、小出重幸(元読売新聞科学部長)、引野肇(東京新聞)、室山哲也(NHK解説委員)、林勝彦(元NHKプロデューサー)、漆原次郎(サイエンスライター、JASTJ Web編集長)、山本威一郎(サイエンスライター、元NEC海洋技術部長)、佐々義子(くらしとバイオプラザ21、JASTJ理事)、佐藤年緒(元時事通信編集委員)

■塾受講料

 通期1万6000円。

■塾への申し込み方法

 希望者は、氏名、所属(または職業)、住所、連絡方法、メール、電話番号のほか、参加の動機(400字程度)を書いて塾事務局宛て(juku-15-office@jastj.jp)にお申込みください。8月31日まで(募集を延期しました)。塾生の人数が定員(約20人)で締め切ります。 手続きについては受付後に連絡しますが、入塾決定後、開講までに「海についての関心」(400字以内)の文を提出いただきます。受講料は8月末までにお支払いいただきます。

■事務局、サポーター

佐藤年緒(塾長、元時事通信編集委員)、西野博喜(副塾長、JASTJ理事)、柏野裕美(会員、元塾生)、都丸亜希子(会員、元塾生)、早野富美(会員、元塾生)、藤田貢崇(JASTJ事務局長)、中野薫(JASTJ事務局塾担当)

〔事務局〕日本科学技術ジャーナリスト会議
〒162-8601 東京都新宿区神楽坂1-3 東京理科大学1号館13階
電話 070-1448-8800 メール hello@jastj.jp ホームページ https://jastj.jp/arc1805/tcsj