科学ジャーナリスト賞2009

【科学ジャーナリスト大賞】
 サイエンスライター・イラストレイター 北村雄一殿
『ダーウィン『種の起源』を読む』(化学同人)の著作に対して
【授賞理由】
 難解といわれる『種の起源』をその後の知見を加えて読み解き、進化論に現代的な視点を与えた。ダーウィンの生誕200年、『種の起源』150年の今年に相応しい労作である。

【科学ジャーナリスト賞】(順不同)
理化学研究所客員研究員 吉田重人殿 ・ 同チームリーダー 岡ノ谷一夫殿
「ハダカデバネズミ—-女王・兵隊・ふとん係」(岩波科学ライブラリー)の著作に対して
【授賞理由】
 奇妙な実験動物を入手し、飼育し、研究する苦闘の経過を詳しく追い、研究とは何かを鮮やかに描き出した。「研究費の社会還元」の優れた実践例の一つといえる。

信濃毎日新聞編集局文化部記者 磯部泰弘殿・同 吉尾杏子殿
信濃毎日新聞くらし面の連載記事「いのちを紡ぐ」に対して
【授賞理由】
 終末期医療のはらむさまざまな問題点と死別の悲しみをどう癒すかについて患者、家族、医師や医療従事者などそれぞれの立場から丹念に取材し、鋭いなかにも温かみのある視点で社会的な課題を浮き彫りにした。

NHK放送文化研究所主任研究員 七沢潔殿
雑誌『世界』に連載された「テレビと原子力 戦後二大システムの五〇年」の記事に対して
【授賞理由】
 テレビと原子力という二大システムが戦後の日本に導入されるまでの裏面史を追い、冷戦下の米国の戦略を検証。さらに、その後の両者の関係、とくにテレビの原子力報道の変化を分析し、事故・トラブル報道に矮小化されてきた現状を厳しく指摘した。

朝日新聞編集委員 出河雅彦殿
「ルポ 医療事故」(朝日新聞出版)の著作に対して
【授賞理由】
 昨今の大きな話題となった医療事故を、病院内での事故調査、刑事・民事裁判などの過程と周辺を詳細に検証して、その実態と問題点を浮かび上がらせた。医療事故について制度改革が必要なことを示唆する力作である。

<科学ジャーナリスト賞選考委員(50音順、敬称略)>
〔外部委員〕
北澤宏一(科学技術振興機構理事長)
黒川清(政策研究大学院大学教授) 
白川英樹(筑波大学名誉教授、ノーベル化学賞受賞者)
村上陽一郎(東大大学院総合文化研究科特任教授)
米沢富美子(慶応大学名誉教授)

〔JASTJ内部委員〕
飯島裕一、小出五郎、柴田鉄治、瀬川至朗、武部俊一