SjCOOP Asia

【SjCOOP Asia プロジェクトについて】
 アジアの若手科学ジャーナリストを養成するプロジェクト「SjCOOP Asia」は、世界科学ジャーナリスト連盟(WFSJ)がJASTJとの緊密な協力関係のもとで始めたものです。笹川平和財団とカナダのIDRC(政府の国際援助団体)の資金援助を受け、2013年からの3年プロジェクトが実現しました。世界連盟が開設しているWEBページと併せてご覧ください。

【SjCOOPとは】
 SjCOOP (スクープ:Science journalism COOPeration)プロジェクトは、途上国の科学ジャーナリスト養成を、WEBを活用しつつ、「ジャーナリスト同士の助け合い」を基本思想に進める実践的なプログラムです。
 2006年にアフリカ・中東地域を対象に第1期が始まり、2010年から12年までの第2期も終了、2期を通じて相当数の科学ジャーナリストが育ったと高い評価を受けました。
 この実績を受けてアジア版が2013年から始まりました。

【東京会合2013、2014】
 SjCOOP Asiaは、地元の言葉で発信する科学ジャーナリストの育成が目標で、現地語を使うベテラン記者がメンター(指導者)となり、メンター1人あたり4人のメンティー(被育成者)の面倒を見ます。そして、メンターたちを先進国の科学ジャーナリストが支援するという構造です。
 ベトナム語、インドネシア語、英語の3つのチームが作られ、3年の計画期間中、2回の東京会合が開かれました。2013年11月18日ー23日の「メンター会議」(下写真1段目)、2014年9月8日ー12日の「全体会議」(同2段目)です。それぞれ1週間の日程で、六本木の政策研究大学院大学での座学と1泊2日の取材旅行が組み込まれました。1年目は女川、石巻、仙台の被災地をめぐり、2年目は福島県の南相馬市、福島市、三春町などを回りました。

 

【ハノイ会合2013】
 東京会合2013に先立ち、2013年9月25日から27日までベトナム・ハノイで最初の会合が開かれました。メンターたちが一堂に集い、プロジェクトの意義や進め方について共通理解を持てるようにプログラムが組まれました。

【第9回科学ジャーナリスト世界会議 2015】
 2015年6月8日から12日、ソウル市内の総合施設「COEX」で、「第9回科学ジャーナリスト世界会議」が開かれました。基調講演をした京都大学・山中伸弥教授をはじめ日本から約60人が参加しました。国際交流基金の助成を受け、一部のJASTJ会員に旅費・宿泊費を補助できたことが日本人参加者増に貢献しました。会員外のジャーナリスト、大学で国際広報に携わる人たちの参加も目立ちました。JASTJは夕食会を主催し、会議に参加した日本人同士が親交を深める機会を提供しました。また、SjCOOP Asiaの3年目の事業としてデータジャーナリズムの研修会も会議期間中に同じ会場内で開きました。
  

【ソウル会議後の日本取材旅行】
 JASTJはソウル会議の参加者の中から希望者を募り、会議終了後に30人のジャーナリストを招待する日本取材ツアーを実施しました(実際の参加者は27人)。福島第一原発の構内取材を中心とする福島コース(下左の写真)、福岡県内の水素エネルギー開発の現場と三池炭鉱を訪ね、日本のエネルギー政策の変遷を中心に取材する福岡コース(下右の写真)の二つを用意、どちらも2泊3日で充実したツアーとなりました。本事業の実施には、笹川平和財団、東芝国際交流財団、セコム科学技術振興財団、東京倶楽部の助成、日本医学ジャーナリスト協会、朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、構造計画研究所の協賛、日本航空株式会社、東日本旅客鉄道株式会社、福岡県の協力をいただきました。笹川平和財団のサイトで、福岡でのツアーの模様が紹介されています。
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【インドネシア会議報告(2015)】NEW
 インドネシアに(日本のJASTJに相当する)インドネシア科学ジャーナリスト会議(SISJ)が設立され、その第一回会合としてインドネシア科学ジャーナリスト会議(KJSI2015)が8月29、30日の2日間にわたりボゴールの森林研究センター(下写真)で開催されました。
 
 インドネシア全土から、若い科学ジャーナリスト約60名と研究者約30名が集まり、研修をとおして親交を深めました。
 プログラムは協会のキックオフ会議にふさわしく、インドネシア学術会議のSangkot Marzuki会長による基調講演など、インドネシア全体を科学的視点で俯瞰した講演が行われ、学術界から科学ジャーナリストに対する期待のメッセージが寄せられました。
 また、医学者、地質学者、森林や湿地の環境保全の専門家を迎え、インドネシアの公衆衛生政策や資源開発問題、森林火災問題など、それぞれの課題を紹介する講演が行われました。それらの講演をとおして、社会的かつ複雑なテーマを科学ジャーナリストがどのように扱うべきかという議論が活発に行われ、会場は熱気に包まれました。
 
 過去3年間のSjCOOP Asiaによる活動で機が熟し、SISJが誕生した経緯から、日本からJASTJの小出重幸会長、瀧澤美奈子理事とSjCOOP Asiaを支援する笹川平和財団の林茉里子氏が参加し、お互いの経験を共有しSISJの設立を祝福しました。(瀧澤美奈子)

【ベトナム会議報告(2015)】NEW
 ベトナムの科学ジャーナリスト協会創設に向けた国内会合が、「科学ジャーナリズム-スクープアジアからの学び」をテーマに9月25、26日、ハノイで開かれた。JASTJから引野肇、高橋真理子両副会長が参加、スポンサーとなった笹川平和財団からも小栁順一氏が参加した。南北に長いベトナムでは、全国組織を作るのはさまざまな困難があるという。だが、会合には全国各地から約50人が登録、約30人が実際に集まり、スクープアジアで学んだことを共有し、今後の方向性を議論した。
 
 開会式で挨拶した小栁氏は、2013年から始まったスクープアジアプロジェクトを丁寧に振り返り、これまでに達成した成果をたたえた。その後、スクープアジアの参加者たちが、学んできたことを発表した。ベトナム料理が盛りだくさんに出た昼食会のあと、午後一番のセッションが「論争を報道する-福島原発事故のケーススタディ」で、引野氏と高橋が30分ずつ講演した。ベトナムテレビ研修センターで働くトラン・タイ・ハーさんが通訳を務め、講演も質疑応答もスムーズに進んだ。「データジャーナリズム」「良い科学ジャーナリズム、悪い科学ジャーナリズム」「協会をつくる-ベトナムの場合」の3つのセッションが続いて一日目が終了。翌日は「協会をつくる-JASTJの経験」と「流行病の報道」の二つのセッションがあった。「JASTJの経験」では、まず高橋がJASTJの歴史を紹介、引野氏が予算とその使い道を詳しく説明した。これから協会を作ろうとしているベトナムの仲間たちに参考になっただろうと思う。
 なお、26日はたまたま高橋の誕生日で、花束贈呈を受けるサプライズがあった。若手女性記者が「フェースブックで今日が誕生日だとわかった」と種明かしをしてくれたが、ベトナムの友人たちのあたたかな心遣いに心底から感謝しながらの別れとなった。(高橋真理子)