科学ジャーナリスト賞2012

【科学ジャーナリスト大賞】 (2点)

「ETV特集 原発事故への道程」(2011年9月18日、25日)の番組に対して
日本放送協会(NHK)文化福祉番組部チーフプロデューサー 増田秀樹 殿
【授賞理由】
 日本の原子力開発のそもそもから説き起こし、多くの証言や資料によって、安全対策に大きな手抜かりがあったことを検証した。たっぷり時間をとったNHKのETV特集ならではの労作。

「あなたの隣に 発達障害と向き合う」(2011年1月11日~6月27日)の報道に対して
下野新聞社発達障害取材班 代表 茂木信幸 殿
【授賞理由】
 教育界でいま大きな問題になっている発達障害の問題に真正面から立ち向かい、すべて実名、写真入で取り上げて、社会に強くアピールした。地方紙ならではの寄り添った取材が生み出した意欲作といえる。

【科学ジャーナリスト賞】 (2点・順不同)

「プロメテウスの罠・第3部 観測中止令」(2011年11月7日~11月23日)の報道に対して
朝日新聞社 記者 中山由美 殿
【授賞理由】
 新聞が「発表依存」に陥らず、自らの手で隠れた事実を掘り起こすことは何よりも大事なことだが、「プロメテウスの罠・第3部」は、地道な観測の分野で何が起こっていたのかをすべて実名で暴いた優れた科学報道の実証例だといえよう。

「日本の核開発:1939~1955-原爆から原子力へ」(績文堂)の著作に対して
東京工業大学名誉教授 山崎正勝 殿
【授賞理由】
 日本の原子力開発の歴史を、戦時下の軍事研究から説き起こし、占領下から戦後の原子力基本法の制定まで、詳細に追った。学術書のようにも読めるが、そもそもの「原点」の解明は必要なことであり、「NHKのETV特集と重ね合わせると、その意義はいっそう大きい」という指摘も選考委員からあった。

科学ジャーナリスト賞2012の選定にあたり、一次審査を通過した作品は、次の12点でした(五十音順・敬称略)。
1 あなたの隣に 発達障害と向き合う
 下野新聞社発達障害取材班 下野新聞社
2  アブラゼミのウロウロくん
  井出麟君とお母さん(洋子さん) 第10回全国こども科学映像祭
3 医学と仮説~原因と結果の科学を考える
  津田敏秀 岩波書店
4 原発攻防180日の真実
  西野哲史、堤慶太、本田史弘 TBS
5 原発震災
  石橋克彦 七つ森書館
6 ETV特集シリーズ「原発事故への道程」前後編
  増田秀樹、松丸慶太、森下光泰 NHK
7 古文書が語る巨大津波(2011年9月23日ほか)
  木戸崇之 朝日放送 
8 世界が見た福島原発災害 (1)(2)(3)
  大沼安史 緑風出版
9 超巨大地震に迫る 日本列島で何が起きているのか
  大木聖子、纐纈一起 NHK出版
  東京大学地震研究所アウトリーチ室ウエブページ
  大木聖子 東京大学地震研究所アウトリーチ室
10 日本の核開発:1939~1955
  山崎正勝 績文堂
11 プロメテウスの罠・第3部「観測中止令」
  中山由美 朝日新聞
12 ヤモリの指から不思議なテープ
  松田素子、江口絵理、西澤真樹子、石田秀輝 アリス館

<科学ジャーナリスト賞選考委員(五十音順)> 
〔外部委員〕
相澤 益男(総合科学技術会議議員) 
浅島 誠(東大名誉教授、独立行政法人日本学術振興会理事) 
白川 英樹(筑波大学名誉教授、ノーベル化学賞受賞者)
村上 陽一郎(東洋英和女学院大学 学長) 
米沢 富美子(慶大名誉教授)

〔JASTJ内部委員〕 
小出 五郎
柴田 鉄治
瀬川 至朗
滝 順一
武部 俊一