科学ジャーナリスト賞2013

【科学ジャーナリスト大賞】 1件

朝日新聞の連載「原発とメディア」(2011年10月から2012年12月まで計306回)の報道に対して
朝日新聞社「原発とメディア」取材班 代表 上丸洋一殿、隈元信一殿
【授賞理由】
 福島原発事故のような重大な事故を起こした責任の一端はメディアにもあるとの反省をこめて、原子力報道の歴史を発端から現在に至るまで詳細に点検し、自社の報道の過ちを含めて厳しく検証した報道は高く評価できる。どんな報道にも検証が必要なことは分かっていても、先輩や同僚記者の仕事を批判することは避けたくなるものだが、そこへあえて挑み、とくに事故が起こってからの報道についても「発表依存」に陥った過ちを自ら追及し反省している姿勢は大賞に値する。

【科学ジャーナリスト賞】(3件・順不同)
毎日新聞の「韓国人に未検証の幹細胞治療」を含む再生医療検証報道(2012年12月)に対して
毎日新聞社科学環境部再生医療取材班 代表 八田 浩輔 殿
【授賞理由】
 臓器移植や生殖医療などでは日本の規制が厳しいので外国へ出ていくケースが多かったのに、韓国から日本にやってくるという逆のケースもあることをスクープした。折から再生医療をめぐる法改正にも影響を与え、タイミングもよかった。たとえ他社の動きは鈍かろうとも、新聞の生き残る道はスクープにある。また、iPS細胞など再生医療がこれから注目を浴びる折でもあり、取材班の目配りのよさを高く評価したい。

NHKスペシャル「世界初撮影!深海の超巨大イカ」(2013年1月13日放映)の番組に対して
NHKエンタープライズ 自然科学番組 エグゼクティブ・プロデューサー  岩崎 弘倫 殿
【授賞理由】
 宇宙に比べると地味な海洋の、それも深海で、このようなドラマが展開されているとは驚きである。科学番組としても、あるいはエンターテイメント番組としても優れた作品であり、映像も鮮明で、高く評価したい。

NNNドキュメント ’13「活断層と原発、そして廃炉~アメリカ、ドイツ、日本の選択~」(2013年1月27日放映)の番組に対して
日本テレビ放送網株式会社 報道局ニュースセンター チーフディレクター 加藤 就一 殿
【授賞理由】
 福島原発の事故のあと、日本のあちこちの原発に活断層が走っている疑いが浮かび上がり、大きな問題になっている。この番組は、活断層が見つかって廃炉処分にしたアメリカのケースなどを淡々と追い、原発の安全性の確保がいかに難しいか、廃炉処分といってもいかにやっかいなものか、を静かに浮かび上がらせ、「地震国、日本」が抱える原発の重さを訴えた。「民放もNHKに負けてはいない」ことを示した優れた作品だといえよう。

<科学ジャーナリスト賞選考委員> 
〔外部委員(五十音順、敬称略)〕
相澤 益男(独立行政法人科学技術振興機構顧問)
浅島 誠(東大名誉教授、独立行政法人日本学術振興会理事)
白川 英樹(筑波大学名誉教授、ノーベル化学賞受賞者)
村上 陽一郎(東洋英和女学院大学 学長)
米沢 富美子(慶大名誉教授)
〔JASTJ内部委員〕
柴田 鉄治
武部 俊一
小出 五郎
瀬川 至朗
滝 順一