科学ジャーナリスト賞2014

【科学ジャーナリスト大賞】(1件) 
「東電テレビ会議 49時間の記録」の制作に対して
OurPlanet-TV 代表 白石草殿 
【授賞理由】
 東京電力は、本店と福島第一原発などと結ぶテレビ会議の録画のうち、49時間分に限って公開したが、これをNPO法人の独立メディア「OurPlanet-TV」が発言者を特定したり難解な原発用語に脚注をつけたりして、3時間の衝撃的な映像ドキュメンタリーに仕上げた。東電の入れたボカシやP音などによって分かりにくい部分も少なくないが、それでも時折、無責任な言動が透けて見えるなど、現場の生々しい状況を見事に浮かび上がらせている。大手のメディアがやらなかった作業に取り組み、市民に直接、一次情報を提供するという新しい試みも高く評価した。

【科学ジャーナリスト賞】(3件・順不同) 
NHKスペシャル「“いのちの記録”を未来へ 震災ビッグデータ」の番組に対して
NHK報道局社会番組部 チーフ・プロデューサー 三村忠史殿
【授賞理由】
 携帯電話やカーナビの普及でこんなことまで分かるような時代になったのかと、あらためて感じさせた優れた番組だった。画像の処理もテレビならではの工夫が凝らされ、ビッグデータが将来、防災などに役立つ大きな可能性を持っていることを示唆した。ただ、ビッグデータは一歩誤ると、「監視社会」を生み出してしまう恐れのあることを、ひと言触れていたら、なおよかったろう。

「宇宙へ行きたくて液体燃料ロケットをDIYしてみた~実録なつのロケット団」(学研教育出版)の著作に対して
漫画家 あさりよしとお 殿
【授賞理由】
 宇宙へ行きたい漫画家、元IT会社社長、エンジニアたちが集まって、ワイワイガヤガヤ手製のロケットをつくりだし、打ち上げ実験にまで及んだ一部始終を、漫画や写真入りで描いた実に楽しい書物である。科学技術とは、「夢」を追って発展してきたことを考えると、夢を追うとはどういうことかを、分かりやすく示したものだともいえよう。多くの人たちに科学の楽しさが自然と伝わってくるところも素晴らしいと評価した。

「巨大地震の科学と防災」(朝日新聞出版)の著作に対して
著者・元 カリフォルニア工科大学地震研究所長 金森博雄(かなもり ひろお) 殿
構成・AERA 編集部編集委員 瀬川茂子(せがわ しげこ) 殿、 関西大学社会安全学部准教授 林能成(はやし よしなり) 殿 
【授賞理由】
 地震学の泰斗、金森博雄氏が自らの足跡を加味しながら、地震学の発展してきた経緯とその到達したところを分かりやすく描き出した。同時に、それを防災に生かすにはどうすべきかについても貴重な提言をしている。文章が苦手の科学者に科学ジャーナリストが手を貸して優れた啓発書に仕上げるという、これは一つの成功例であり、あとに続く作品が次々と出てくるようにとの期待も込めて、本書を高く評価した。

<科学ジャーナリスト賞選考委員>
〔外部委員(五十音順、敬称略)〕 相澤 益男(独立行政法人科学技術振興機構顧問) 浅島 誠(東大名誉教授、独立行政法人日本学術振興会理事) 白川 英樹(筑波大学名誉教授、ノーベル化学賞受賞者) 村上 陽一郎(東洋英和女学院大学 学長) 米沢 富美子(慶大名誉教授) 
〔JASTJ内部委員〕 柴田 鉄治 滝 順一 武部 俊一 室山 哲也 横山 裕道 (小出 五郎・1月逝去)

なお、一次選考通過作品は以下のとおりでした。

作品名代表者名出版社など種別
東電テレビ会議 49時間の記録 (2013/9/14)白石草Our Planet-TV映像
NHKスペシャル「汚染水~福島原発危機の真相」(2013/12/1)鈴木章雄、松岡大介NHK映像
NHKスペシャル「いのちの記録を未来へ~震災ビッグデータ」(2013/3/3)高山仁、三村忠史NHK映像
医学的根拠とは何か津田敏秀岩波書店書籍
宇宙へ行きたくて液体燃料ロケットをDIYしてみた―実録なつのロケット団あさりよしとお学研教育出版書籍
巨大地震の科学と防災金森博雄
構成:瀬川茂子、林能成
朝日新聞出版書籍
原発と活断層 想定外は許されない鈴木康弘岩波書店書籍
スズメ つかず・はなれず・二千年三上修岩波書店書籍
鳥類学者無謀にも恐竜を語る川上和人技術評論社書籍
日米同盟と原発―隠された核の戦後史中日新聞社会部東京新聞出版局書籍
メディアを読み解く力小島正美エネルギーフォーラム書籍