月例会

2024年11月例会のご案内

国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)見学会

日時: 2024年11月18日(月) 午後2:30〜4:30(予定)
場所: 東京都小金井市貫井北町 4-2-1 国立研究開発法人情報通信研究機構

国立研究開発法人通信研究機構(NICT)は、情報通信分野を専門とする我が国唯一の公的研究機関として、情報通信技術の研究開発を基礎から応用まで行っています。見学会では最先端の研究内容について研究者からのプレゼンと研究者との質疑応答ができます。また、宇宙天気予報や日本標準時といった NICT の定常業務についてもご紹介いただく予定です。

内容(予定):
14:00-14:15 徳田英幸理事長よりご挨拶
14:15-16:30 研究所内の見学
  ・電磁波先端技術分野 宇宙天気予報、日本標準時ほか
  ・革新的ネットワーク分野 Beyond 5G ほか
  ・サイバーセキュリティ分野 サイバーセキュリティほか
  ・ユニバーサルコミュニケーション分野 AI 技術、自動翻訳など
  ・量子ICT分野 量子暗号通信ほか
16:30 終了予定(現地解散)


2024年10月例会のご案内

「他人事」でない認知症と私たちはどう向き合うか  ~研究最前線から早期診断・治療の可能性を探る~

講師: 岩坪威(いわつぼ・たけし)さん(東京大学大学院医学系研究科教授)
日時: 2024 年10 月9 日(水) 午後6:30〜8:30
場所: 日本プレスセンタービル 9 階 小会議室(東京都千代田区内幸町 2-2-1)    

認知症は高齢化社会の進行とともに確実に増加するとみられ、厚生労働省研究班によると、 認知症の人は2040年には584万人、60年には645万人になり、 高齢者の6人に1 人 を占めると予測されています。アルツハイマー病は認知症の6~7割を占めるとされ、重 症になる前の軽度認知症や軽度認知障害(MCI)段階での発見、 可能な限りの治療が重要 とされています。

そこで、 日本認知症学会の理事長も務めるなど、 アルツハイマー病研究の第一人者で、5月には、原因タンパク質を血液検査で測定することで発症を高い精度で予測できる手法を発表して国内外で注目された岩坪氏をお招きします。そして新しい診断・治療法や初期 認知症治療新薬への期待値をはじめとする今後の早期診断・治療の可能性などを伺います。

岩坪氏は昨年11月に日本記者クラブで講演し、講演内容はメディアから高い関心を集めました。進行する高齢化社会の中で「他人事」ではないこの疾患と私たちはどう向き合えばいいのかを講師とともに共に考えたいと思います。是非ご参加ください。

岩坪威(いわつぼ・たけし)さん略歴

1984年、 東京大学医学部卒業。86年東京大学医学部附属病院神経内科入局、同学部附属脳研究施設脳病理学部門助手、 薬学部機能病態学寄付講座客員助教授を経て98 年東京大学大学院薬学系研究科臨床薬学教室教授就任。2007年東京大学大学院医学系研究科神経病理学分野教授。国立精神・神経医療研究センター神経研究所長兼務。専門は神経病理学、研究テーマはアルツハイマー病。米国の医学賞や文部科学大臣表彰科学技術研究部門賞など受賞歴多数。

※会員の皆さまには開催の前日までにzoom のURL を送らせていただきます。事前のお申し込みは不要です。なおURL は会員以外には転送しないようお願いいたします。会場参加をご希望の方は当日、会場までおいでください。

※会員以外で参加希望の方は下記よりお申し込みください。申込締切 10月2日(水) 申し込みURL https://conference-park.jp/reg/17

※会員と塾開催期間中の塾生は無料です。学生は500円、その他の方には参加費1,000円をいただきます。

★例会報告の原稿執筆者を募集 原稿は1,300字前後で締め切りは11月20日。ご協力いただいた方には図書券3,000円 をお贈りいたします。原稿執筆に不慣れな方や塾生も歓迎いたしますので、執筆希望者は事務局までご連絡ください。

★月例会での取材活動について 月例会の内容を記事化する場合は、発言内容等に関し講師の方に改めて確認をとるようお願いします。質疑応答における質問者の方の発言についても同様です。


2024年9月例会のご案内

「生成AI 時代の教育論」生成AI 時代の教育論

講師: 坂村健(さかむら けん)さん (東京大学名誉教授)

日時: 2024 年9 月10 日(火) 午後6:30〜8:30

場所: 日本プレスセンタービル 9 階 大会議室(東京都千代田区内幸町 2-2-1)

日本社会の低迷の背後には、社会変革につながるIcT教育の遅れがあると言われてい ます。かつてTRONプロジェクトで世界に衝撃を与え、日本の科学技術をリードしてきた坂村健さんは、社会の変革には、大学での本格的なDXが必要と考え、7年前に東洋大学情報連携学部を新設。新築の構内に5000個のIoTディバイスを設置(未来社会の モデル)し、「モノ」「人」「AI」がオープンにつながるシステムを作り上げ、社会のDXを実現できる人材の育成を続けてきました。

今回の月例会では、著名なコンピュータ科学者の坂村健さんをお招きし、大学で実践しているMoocsなどの事例も交えつつ、日本の大学教育の現状と課題、そして未来型の人材教育のありかたについてお話しいただきます。ぜひともご参加ください。

坂村健(さかむらけん)さん略歴:

1951年東京生まれ。 東京大学名誉教授。工学博士。INIAD cHUB(東洋大学情報連携学学術実業連携機構) 機 構長。 IEEEライフ・フェロー、ゴールデンコアメンバー。2002年1月よりYRPユビキタス・ ネットワーキング研究所長。 オープンなコンピュータアーキテクチャTRONを構築。現在TRONはIoTのためのIEEE(米国電気電子学会)標準組込OS として世界中で多数使われており、2023年「TRONリアルタイムOSファミリー」 がIEEE Milestoneとして認定された。2015年ITU(国際電気通信連合)創設150周年を記念して、情報通信のイノベーション、促進、発展を通じて、世界中の人々の生活向上に多大な功績のあった世界の6 人の中の一人としてITU150Awardを受賞。2023年 IEEE Masaru Ibuka Consumer TechnologyAward 受賞。他に2006年日本学士院賞、2003年紫綬褒章。著書に『DXとは何か』、『IoTとは何か』(角川書店)、『イノベーションはいかに起こすか』(NHK 出版)など多数。


2024年8月月例会のご案内

「AI 時代に記者や編集者は生き残れるか? ~ネットメディアから見たジャーナリズムの未来~」

講師: 亀松太郎さん(あしたメディア研究会代表、JASTJ 会員)

日時: 2024 年 8 月 22 日(木) 午後 6:30〜8:30

場所: 日本プレスセンタービル 9 階 小会議室(東京都千代田区内幸町 2-2-1)    

生成AI でジャーナリズムの現場が大きく変わり始めています。 最近では、平均的ライター以上の能力の生成AIが出現し、それを使って膨大な仕事をこなす「スー パーライター」も登場しています。しかし一方で、生成AI使用を理由に、原稿料値下げが求められるなど、社会的問題の側面も出始めています。

今後、生成AIによって、記者や編集者の仕事はどのような影響を受けるのでしょうか? ジャーナリズムの未来はどうなるのでしょうか? メディアと生成AIの現状に詳しい亀松太郎さんに、実例を紹介していただきながら、AI時代のジャ ーナリズムの未来について考えます。

亀松太郎 (かめまつたろう)さん 略歴:

1970 年静岡県浜松市生まれ。東京大学法学部を卒業後、朝日新聞記者になるが、3年で退社。その後、ネットメディア「J-CAST ニュース」の記者・編集者、ニコニコニュース編集長、弁護士ド ットコムニュースの編集長とキャリアを重ね、朝日新聞運営「DANRO」の創刊編集長を務めた後、 同社からメディアを買い取って再び編集長となった。 2019 年4 月〜23 年3 月、関西大学の特任教授(ネットジャーナリズム論)。 現在はフリーランスの記者/編集者として活動しつつ、「あしたメディア研究会」を運営。同時 に、在住する東京都杉並区のニュースを取材して、Yahoo!ニュースなどで発信を続けている。最近の関心テーマは「ローカルメディアの再生とジャーナリズムへのAI 活用」。


2024年7月月例会のご案内

「大学のガバナンスと『学問・研究の自由』を考える」

講師: 隠岐さや香(おき さやか)さん (東京大学教授)

日時: 2024 年 7 月 4 日(木) 午後 6:30〜8:30

場所: 日本プレスセンタービル 9 階 大会議室(東京都千代田区内幸町 2-2-1)

日本の国立大学は 2004 年の法改正により、各大学が独立した法人格を持つ「国立大学法人」として再スタートしました。国が財政に責任を持つとともに、大学のガバナンスを確立し、自主・自立を尊重した運営を行うことが狙いでした。

しかし 2023 年 12 月には国立大学法人法が改正され、意思決定機関として「運営方針会議」の設置が突然決まるなど、大学教員や学生の中には、大学の自治への侵害として強く批判する声もあります。本年 5 月には東京大学の学費値上げをめぐる議論の口火が切られ、本年 6 月 7 日には国立大学協会が国立大学の状況と厳しい財政状況および決意を示す声明を公表するなど、異例の事態が相次いでいます。

大学で今何が起きているのでしょうか? ガバナンス強化と「学問の自由」の関係は?今回の月例会では、科学史がご専門の隠岐さや香先生をお招きして、日本の大学が直面している課題について、世界の学術界との関係を含めて迫りたいと思います。なお隠岐先生は、2023 年 12 月の国会でも参考人として意見陳述を行いました。

隠岐さや香(おき さやか)さん 略歴:

1998 年 東京大学教養学部教養学科第一科学史科学哲学分科卒業 2001 年 フランス社会科学高等研究院(EHESS)留学 2008 年 「十八世紀パリ王立科学アカデミーと「有用な科学」の追求」で博士(学術)学位を東京大学より授与 2010 年 広島大学大学院総合科学研究科 准教授 2016 年 名古屋大学大学院経済学研究科 教授 2022 年 東京大学大学院教育学研究科 教授 著書は『科学アカデミーと「有用な科学」――フォントネルの夢からコンドルセのユートピアへ-』(名古屋大学出版会)『文系と理系はなぜ分かれたのか』(星海社)。論文多数。


2024年6月月例会

公益財団法人実中研(実験動物中央研究所)見学会 実験動物開発から生命・生殖の謎解明へ

日時:2024 年 6 月 20 日(木曜日) 午後 1:00〜4:00

場所:実中研(川崎市川崎区殿町 3-25-12)  

実中研(2024 年 4 月に実験動物中央研究所から改称)は、がんモデルマウスや免疫不全マウスなど新たな実験動物の研究開発と大学や製薬企業への提供事業で世界に知られる研究機関です。世界保健機関(WHO)や米食品医薬品局(FDA)など公的機関とも連携し新しい医薬品の開発を促すことなどを通じ、がん治療の課題解決や難病の克服に力を注いできました。

実中研は 1952 年にわずか「6 匹のマウス」の飼育からスタート、民間の公益財団法人としてこれまで政府助成等に大きく依存してこなかったユニークな歴史があります。なかでもがんモデルマウスを使った発がん性検証は事実上の日本発の世界標準システムになっています。

近年は実験動物開発で培ってきた経験や技術を活かしてアルツハイマー病など脳神経疾患や希少難病、不妊治療技術の研究にも幅を広げ、生命誕生や生殖の謎に挑む研究も展開しています。一方で動物福祉の観点から実験動物の使用に厳しい目が向けられており、適切な実験計画の普及に対応を迫られている一面もあります。

見学会では、野村龍太理事長と末松誠研究所長及び、研究、トランスレーショナルリサーチ、基盤技術部門の 3 部門長のみなさまから実中研の事業方針や研究活動の概要について説明をいただいた後、施設見学。その後に質疑応答の時間を持ちます。見学施設は、マウスとマーモセットの飼育施設、バイオイメージングセンター(11・7 テスラ MRI)などを予定しています。


2024年4月月例会のご案内

「AI と『心の科学』」

講師:信原幸弘 (のぶはら ゆきひろ)さん (東京大学名誉教授)

日時:2024 年4月15日(月)18:30~20:30

場所:日本プレスセンタービル9 階 小会議室 (東京都千代田区内幸町2-2-1)

大規模言語モデルをベースとしたChatGPT の出現以来、自然言語だけでなく、画像、 映像、音楽、音声など、あらゆる分野で生成AI が使われるようになりました。生成AI の進歩は著しく、性能は日々劇的に向上しています。一方、AI が社会に与えるインパク トや規制についての議論は始まりましたが、私たちの心の問題にAI がどのような影響 を与えるのか、あるいは与えないのか、考えなければならない時代となりました。

今回は科学史・科学哲学がご専門で、一貫して「心の哲学」を追求してこられた信原 先生に、AI が私たちの心の問題にどのような影響を与えるのか、問題提起していただ きます。以前、ニューヨークタイムズ紙に「ChatGPT」を使っていたらAI が「愛を語り だした」という記事を読んで、ずっと気になっていました。講義を一方的に聞くのでは なく、ぜひ活発な議論を展開したいと思います。

信原幸弘 (のぶはら ゆきひろ)さん 略歴:

1977 年 東京大学教養学部教養学科(科学史・科学哲学) 1983 年 科学史・科学基礎論専攻博士課程修了 1995 年 東京大学大学院総合文化研究科助教授 2000 年 「心の現代哲学」で東京大学より学術博士 2007 年 同准教授 2008 年 広域科学専攻相関基礎科学系教授 『心の現代哲学』『考える脳・考えない脳-心と知識の哲学』『情動の哲学入門』『「覚える」と「わかる」』など著書多数。


2024 年3月月例会のご案内

「宇宙開発利用の新しい潮流とビジネスの将来」

講師:中須賀 真一 (なかすか しんいち)さん 東京大学大学院工学系研究科教授

日時:2024 年3 月11 日(月)18:30~20:30

場所:日本記者クラブ9階 会見場 (東京都千代田区内幸町2-2-1)

2024 年の宇宙開発はJAXA の小型月探査機「SLIM」の打ち上げで幕を開けました。2 月には次期大型ロケット「H3」が2 度目の打ち上げに挑戦します。一方民間の宇宙ビジ ネスも活発になっています。民間初の月面探査を計画する「ispace」、宇宙デブリ除去 技術の確立を目指す「アストロスケール」、小型衛星で精度の高い地球観測サービスを 提供するアクセルスペース、宇宙ロボットの「ギタイ」など、日本の宇宙ベンチャーの 中にもグローバル展開を目指す企業が出始めました。

中須賀先生は縦横高さ10 センチという超小型「キューブサット」開発の第一人者で、 研究室からは数多くの宇宙人材を輩出しており、「宇宙ベンチャーの父」と呼ばれてい ます。いまや巨大宇宙企業に成長した米国スペースX やブルーオリジンに伍して日本の 宇宙ビジネスをどう育てていくのか、中須賀先生にたっぷりと語っていただきます。

中須賀 真一さん略歴:

1983 年 東京大学工学部航空学科卒業 1988 年 日本IBM 東京基礎研究所研究員 1994 年 東京大学先端科学技術研究センター助教授 2005 年 東京大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻教授 『宇宙ステーション入門』など著書多数。JAXA や宇宙ベンチャーに門下生多数。内閣 府宇宙政策委員会委員。


2024 年2 月月例会②のご案内

「AI コーチイングでスポーツが上手くなる! 人の技能獲得を支援する情報工学最前線」

講師:小池英樹(こいけ・ひでき)さん 東京工業大学 情報理工学院 教授

日時:2024 年2 月21 日(水)18:30~20:30

場所:日本記者クラブ9階 会見場 (東京都千代田区内幸町2-2-1)    

AI が人間の知能を超え始めたといわれる現在、それに対応して、人間自身の能力獲 得を支援・増強する研究が進行している。

東京工業大学の小池英樹教授は、従来の大掛かりな三次元動作計測装置とは異なり、 より廉価で、手軽に、リアルタイムのフィードバックが可能な装置を開発し、スポーツ、 音楽、舞踊、医療、料理、手工芸など、様々な分野の技能習得を効率化するシステムの 構築を進めている。

これによって、専門家がより高いレベルの技能に達することはもちろん、一般の人に とって趣味を通じたウェルビーイングの追求ができるようになるという。 しかし、そのインパクトはそこにとどまらない。指導者から「型を学ぶ」という従来の 学習のあり方から、動きを引き出していく非模倣的な新しい学習スタイルの可能性が見 えるという。

今回の月例会では,小池教授が進めている、最新の深層学習技術とXR 技術を組み合 わせた、技能獲得支援システムを紹介し、生身の人間がAI・画像処理技術と結びつくと きに現れる、新しい学習のあり方、さらには現場の人間関係や社会制度をも変える可能 性について議論したい。

小池 英樹さん略歴:

1991 年 東京大学 工学系研究科 修了(工学博士)
1991 年 電気通信大学 電気通信学部 助手
1994 年 電気通信大学 大学院情報システム学研究科 助教授
1994 年 カリフォルニア大学バークレー校、客員研究員
2002 年 内閣官房、 内閣事務官
2003 年 シドニー大学、 School of Computer Science、 客員研究員
2006 年 電気通信大学、 大学院情報システム学研究科 教授
2014 年 東京工業大学, 情報理工学院 教授


2024 年2 月月例会①のご案内

「世界が注目する超高圧下での高純度単結晶合成、および量子材料機能の開拓 〜ダイヤモンド合成から2 次元原子層プラットフォームの展開へ〜」

講師:谷口 尚(たにぐち・たかし)さん 国立研究開発法人物質・材料研究機構 理事

日時:2024 年2 月16 日(金)19:00~21:00

場所:日本記者クラブ9階 会見場 (東京都千代田区内幸町2-2-1)    

日本の輸出総額の約4 分の1 にあたる素材関連の根幹技術を担うとされる物質・材料 研究機構(NIMS)。なかでも、量子コンピュータ時代に向けて「ノーベル賞級」と世界 から注目される、六方晶窒化ホウ素(h-BN)の高純度単結晶の合成を成功させた谷口尚理事に、研究についてやさしく紹介いただき、素材や材料の開発が、社会をどのように 変革していくのかを理解する一助としたいと思います。

宝石で有名なダイヤモンドは、地下100 キロメートルの高圧環境で生成されたと推定 されます。しかし高純度のh-BN の単結晶を得るためには、高圧・高温環境を実験室に つくるだけでなく、独自の高反応性溶媒などの工夫を重ねることが必要でした。 谷口先生らの研究は世界から注目を集め、クラリベイト社の「引用栄誉賞」など多くの 賞を受賞しています。ミクロの研究が世界を変える、材料科学の妙味を感じるひととき です。

谷口 尚(たにぐち たかし)さん略歴:

1982 年東京農工大学工学部工業化学科卒業。1987 年東京工業大学大学院総合理工学研 究科修了。工学博士。1987 年東京工業大学工学部無機材料工学科助手。1989 年科学技 術庁無機材質研究研究員。2001 年独立行政法人物質・材料研究機構に改組、超高圧グループリーダー。2018 年国立研究開発法人物質・材料研究機構フェロー。2023 年同機構 理事。


2024年 1月月例会のご案内

核融合発電の時代はいつ到来するか?  〜阪大発スタートアップ創業者に聞く

講師:松尾 一輝(まつお かずき)さん(EX-Fusion 代表取締役)

日時:2024 年1月24 日(水) 19:00~21:00

場所:日本プレスセンタービル9 階会見場 (東京都千代田区内幸町2-2-1)

核融合への注目が高まっています。欧米で核融合スタートアップ企業が次々と誕生し 投資家から大きな資金を集めています。日本政府も核融合研究の加速に動いています。 気候変動抑制のためカーボンニュートラル実現が急務になっていることが背景にあり ます。ただフランスで建設が進む国際熱核融合実験炉(ITER)の建設が遅れる見込みで あるなど、核融合発電の商用化には大きな不確実性があります。

EX-Fusion(エクスフュージョン)は大阪大学発のスタートアップです。大出力レー ザーで核融合エネルギーを得る「レーザー核融合」の実用化を目指しています。松尾さ んの経営戦略は核融合発電を将来目標としながらも、その道のりでレーザー技術の応用 による事業展開を狙う点がユニークです。2023 年10 月にスペースデブリへの対処で豪 州企業と提携したのはその一例です。松尾さんは欧米の関連学会などに参加しており、 核融合をめぐる世界の最新動向についてもお話が聞けると思います。

松尾 一輝(まつお かずき)さん略歴:

2020 年大阪大学大学院理学研究科修了、物理学博士号取得。在学中に同大レーザー科 学研究所の藤岡慎介教授の指導の下、高速点火方式の核融合プラズマ加熱の研究に取り 組み、レーザー核融合の実現に貢献した。カリフォルニア大学サンディエゴ校の博士研 究員(ポスドク)を経て、帰国後2021 年にEX-Fusion を設立。


2024年新春月例会のご案内

「快挙!科博のクラウドファンディングと地球の宝を守る大切さ」

講師: 篠田 謙一先生 (しのだ けんいち)さん (国立科学博物館館長)

日時: 2024 年1 月15 日(月) 18:30~20:30

場所: 日本プレスセンタービル9階 小会議室 (東京都千代田区内幸町2-2-1)   

「地球の宝を守れ」をテーマに国立科学博物館がクラウドファンディングを行ったと ころ、わずか9 時間で目標の1 億円を達成、11 月5 日の締め切りまでに9 億円を超え る募金を集めることに成功しました。

クラウドファンディングを実施する決断を下したのは、コロナによる入館者の減少と ウクライナでの戦争の結果、燃料費などが高騰したためです。成功した要因のひとつは 返礼品が充実していたことです。

篠田館長にはクラウドファンディングに至るプロセス と成功要因、さらには科博の未来像について語っていただきます。 また篠田館長は遺伝子の分析を通じて人類の起源を探る分子人類学の第一人者です。 「地球の宝」である標本を守ることが人類の起源を解き明かすうえで、どのような重要 性を持っているのか、お話しいただきます。

篠田 謙一(しのだ けんいち)さん略歴

1979 年京都大学理学部卒業。医学博士。産業医科大学助手。 1996 年佐賀医科大学助教授。2003 年国立科学博物館人類第一研究室長。 2014 年人類研究部長。2016 年日本人類学会会長。2021 年国立科学博物館館長 「江戸の骨は語る 蘇った宣教師シドッチのDNA」(岩波書店)「人類の起源」(中公新 書)など著書多数。


2023年12月月例会のご案内

研究開発費配分の最適化を考える ~ノーベル賞の種の蒔き方~

講師:大庭 良介 (おおにわ りょうすけ) さん (筑波大学医学医療系准教授)

日時:2023年12月20日(水)18:00〜20:00

場所:日本プレスセンター9 階 会見場

世界の研究開発費の動向を見ると、米国、中国をはじめ、OECD 諸国が研究開発費を増 やしている中、日本はこの20年間、ほぼ横ばいの状況が続いています。とくに国立大 学の基盤的経費である「運営費交付金」が減り続け、科学研究費をはじめとする「競争 的資金」にシフトしています。このため特定の大学や領域に資金が集中しているほか、「競争的資金」獲得のための膨大な事務作業が研究者を悩ませています。

大庭先生は過去の論文データを網羅的に分析し、少額の研究費を多数の研究者に配分した方が、高額の資金を少数の研究者に配分するより、はるかに投資効率が高く、ノー ベル賞獲得に寄与していることをデータで示しました。

政府は「10 兆円ファンド」を創設して、少数の特定大学に資金を投ずる計画ですが、 研究資金が伸び悩む中、配分を最適化するにはどうしたらよいか、皆さんとともに考え ていきたいと思います。

大庭良介さん略歴

1977年 東京都出身
2000年 京都大学総合人間学部卒業
2006年 京都大学大学院生命科学研究科博士後期課程単位取得退学
2007年 学位取得(生命科学)
2014年 筑波大学医学医療系准教授
大庭先生は居合道六段、空手道四段、剣道二段の武道家でもあり、2021 年に「『型』の 再考 科学から総合学へ」という大変興味深い本を出版されています。


2023年11月月例会のご案内

~倫理的・法的・社会的課題(ELSI)を「見える化」する科学~ 「理系女性問題」「AI 倫理」「気候工学」

講師:横山 広美 (よこやま ひろみ)先生 東京大学教授(科学技術社会論) 東京大学国際高等研究所カブリ数物連携 宇宙研究機構(Kavli IPMU)副機構長 東京大学学際情報学府文化・人間情 報学コース大学院兼担 独立行政法人高等専門学校機構理事

日時:2023年10月22日(木)18:30〜20:30

場所:日本プレスセンター9 階 大会議

OECD 加盟国の中で、大学・大学院における理系分野の女性学生の割合は、日本が最下 位であり、周知のようにその低迷は長く続いている。米国、たとえばカリフォルニア工 科大学などでは、女性割合は5 割近いという。なぜ日本の理系に女性がそれほど少ない のか? ジェンダー研究者ではなく、大学院までは高エネルギー素粒子実験を専門にし てきた横山教授は、この問題について、科学社会学の方法論を用い、データをもとにし た統計分析のアプローチで研究を進めてこられた。その成果は2022 年度の科学技術白 書に取り上げられ、さらに一般書「なぜ理系に女性が少ないのか」(幻冬舎新書)とし て世に問われた。横山先生はその後、同様の手法を用いて研究領域をAI 倫理に、さら に最近は気候工学へと展開され多方面で活躍されている。

このように広範な倫理的・法的・社会的課題(ELSI)に応用される科学社会学の方法 論とはどのようなものか。「理系女性問題」「AI 倫理」「気候工学」についての研究成果 を紹介いただきながら、その方法論の可能性と限界について解説頂く。科学技術コミュ ニケーションの学徒として、またよりよい社会づくりにかかわる市民として示唆に富む 内容となることと期待する。

横山広美先生ご略歴:

  • 2004 年 東京理科大学理工学研究科物理学専攻で博士(理学)を取得
  • 2004 年 東京工業大学研究員に就任 2005 年 総合研究大学院大学葉山高等研究センター上級研究員に就任
  • 2007 年 東京大学大学院理学系研究科准教授に就任
  • 2017 年 東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構教授に就任

2023年10月月例会のご案内

深刻化する「プラごみ問題」の本質を探る
海・川・陸を汚染し、魚介類への蓄積も懸念される問題とは!?

講師:堀田 康彦さん 地球環境戦略研究機関(IGES)プログラムディレクター
   粟生木 千佳さん IGES 主任研究員/副ディレクター

日時:2023年10月11日(水)18:30〜20:30

場所:日本プレスセンター9 階

大量に使われ、そして使い捨てにされて環境中に流出するプラスチック。回収や再利用 は徹底されない一方、分解されにくいことから世界中の海や川、そして陸地をも汚染して います。プラごみは世界全体で年間800 万トン以上が海洋に流出し、2050 年には魚の総量 を超えるとも言われています。微小な「マイクロプラスチック」は魚介類の体内に入って 悪影響を与えると懸念されています。

世界で深刻化するプラスチック汚染を規制しようと国際条約づくりの作業も始まってい ます。しかし、私たちはレジ袋を減らすためにマイバッグを持参したりしていますがレジ 袋はプラごみのわずか数%。身近な生活で便利なプラ製品をたくさん使用しながら、この 「プラごみ問題」をどこまで知っているでしょうか。この問題を国際的な政策課題として 長く追求してきたお二人のお話を聞きながら、私たちも問題の本質をどう捉え、何ができ るかを考えたいと思います。是非ご参加ください。

堀田 康彦(ほった・やすひこ)さん略歴:
早稲田大学政経学部卒、英国サセックス大学 文化・開発研究所(国際関係論博士)修了。三菱総合研究所研究員などを経て2005 年9 月 からIGES。OECD 作業部会メンバー、アジア太平洋持続可能な消費と生産円卓会議副会長な どを歴任。専門分野は、持続可能な資源管理、海洋プラッチック問題など幅広い。

粟生木 千佳(あおき・ちか)さん略歴:
京都大学工学部卒、東京大学大学院工学系研究 科修了。野村総合研究所研究員などを経て2007 年6 月からIGES。中央環境審議会など政 府や自治体の審議委員を歴任。専門分野は資源効率性・環境経済政策。プラスチック汚染 に関する法的拘束力のある国際文書に関する議論もフォロー。


2023年 9月月例会②のご案内

生成AI の落とし穴  ~言語脳科学から考える人間の本質とは~

講師: 酒井 邦嘉さん(東京大学大学院総合文化研究科教授 言語脳科学)
日時: 2023年9月13日(水)18:30〜20:30
場所:対面とオンラインのハイブリッド開催

生成AI が、世界を揺るがしています。

経済、社会、政治、教育など、あらゆる分野に衝撃を与える可能性を秘めた生成AI と は一体何者なのか?私達は今後、どのように向きあえばいいか? 深い議論がないまま、 社会は変質を始めたようにすら見えます。

そこで、今回の月例会では、日本を代表する言語脳科学者の酒井邦嘉さんをお迎えし、 脳科学から見た生成AI の本質と、今後の社会の在り方について、忌憚のない視点から お話しいただきたいと思います。こぞってご参加ください!

(酒井先生からのメッセージ)
アメリカの言語学者のノーム・チョムスキーは、安易なAI の利用は「我々のサイエン スを退化させ、我々の倫理を貶める」と警鐘を鳴らしています(The New York Times, 2023 年3 月8 日)。生成AI を使って文書や作品を仕上げた場合、どこまでが摂取した 外部情報で、どこからが自分の創作かという線引きは、正当な引用と比べて曖昧になり やすく、本人が自覚しないまま創造的な能力の低下が生じます。記事や報告書であれ、 芸術作品であれ、自らの能力を詐称したり、原作者のアイデアを傷つけたりする形で利 用することは、倫理的に許されませんが、生成AI の悪用では当人の罪悪感という心理 的負担が軽くなるおそれがあるのです。教育現場でも生成AI の使用を一律禁止しにく いという現実の中で、AI の問題をどう位置付けていくべきか、皆さんとともに考えま す。

酒井 邦嘉(さかい くによし)さん略歴:
1987 年に東京大学理学部物理学科を卒業され、同大学院で博士号(理学博士)を取得さ れました。その後東京大学医学部助手、ハーバード大学リサーチフェロー、マサチュー セッツ工科大学客員研究員などを経て、現職に就かれました。 『言語の脳科学』(中公新書)や『チョムスキーと言語脳科学』(インターナショナル新 書)などの一般向けの書籍に加え、近著に『脳とAI-言語と思考へのアプローチ』(中 公選書)があり、言語の問題を始めとする人間の脳の特異性を最も熟知する専門家です。


2023年 9月月例会①のご案内

~ペロブスカイト太陽電池が拓く再生可能エネルギーの新しい世界~

講師: 宮坂 力 (みやさか つとむ)先生
日時: 2023年9月5日(火)18:30〜20:30
場所:日本プレスセンター9 階 記者会見場

おそらく極めて近い将来、太陽電池はすべてシリコン系からペロブスカイトに置き換 わるでしょう。ペロブスカイトは軽量で薄く、折り曲げることができることから、いま まで太陽電池を設置できなかったところにも、使われることが期待されています。

今回の月例会ではペロブスカイト太陽電池を発明された桐蔭横浜大学教授の宮坂力 先生をお招きいたします。宮坂先生は光電気化学がご専門で、とくに色素増感半導体の 研究に力を入れてこられました。

2009 年からペロブスカイトの研究開発に取り組まれ、2017 年に論文「効率的なエネ ルギー変換を達成するためのペロブスカイト材料の発見と応用」を発表すると大きな反 響を呼び、その年のクラリベイトの「引用栄誉賞」を受賞されました。宮坂先生は今年 1 月、「大発見の舞台裏で!ペロブスカイト太陽電池誕生秘話」を出版されました。

またバイオリン、とりわけストラディバリウスに造詣が深く、「ストラディバリの神 秘の音を化学する」などの記事を書かれています。

ぜひ多数の皆様のご参加を期待いたします。

宮坂力先生ご略歴:
1976 年 早稲田大学理工学部応用科学科卒業
1981 年 東京大学大学院工学研究科博士課程修了 工学博士
1981 年 富士フィルム株式会社
2001 年 桐蔭横浜大学大学院工学研究科教授
2005 年 東京大学大学院総合文化研究科客員教授
2017 年 東京大学先端科学技術研究センターフェロー
2020 年 早稲田大学先進理工学研究科・客員教授


2023年 8月月例会のご案内

首都直下地震にどう備えるか 関東大震災100 年の教訓から考える

講師: 武村 雅之さん(名古屋大学減災連携研究センター特任教授)
日時: 2023年8月21日(月)18:00〜20:00
場所::zoom によるオンライン開催です。

9 月1 日で関東大震災から100周年を迎えます。10万人を超える死者をだした未曾有災害でしたが、私たちは実は震災の実像をよく知りません。武村さんは震災の遺構を丹念し探し歩き、膨大な資料に基づいて、私たちが抱く関東大震災のイメージを覆す「本当の震災の姿」を講演や著書を通して提示していらっしゃいます。

東京で多数の方が亡くなり多くの家屋が失われた背景には、当時の都市計画の貧困さがあります。江戸から東京へ、文明開花・殖産興業の旗印の下で市街地が野放図に拡大したことが災害を大きくした要因だと考えられます。第二次世界大戦後、高度成長を経て膨張した今の東京は震災の教訓を生かしているでしょうか。30年以内に60〜70%の 確率とされる首都直下地震に備えるために何をすべきなのか。武村さんとともに議論したいと思います。

武村 雅之(たけむら・まさゆき)さん略歴:
京都市生まれ。東北大学大学院理学系研 究科博士課程修了後、鹿島建設を経て現職。専門は地震学、地震工学。内閣府中央防災 会議専門委員会委員、日本地震学会や日本建築学会等の要職を務める。主な著書に「関 東大震災を歩く」「地震と防災」「関東大震災がつくった東京」がある。


2023年 7月月例会のご案内

5 類移行後の新型コロナ流行の現状と課題  理論疫学者 西浦博はこうみる

講師: 西浦 博(にしうら ひろし)さん(京都大学大学院医学研究科教授)
日時: 2023年7月18日(火)午後6:30〜8:30
場所::zoom によるオンライン開催です。

新型コロナウイルス感染症は5 月に感染症法上の分類で季節性インフルエンザ同じ「5 類」に移行し新型コロナへの社会全体の警戒感は薄れています。西浦 さんは「新型コロナはまだ普通の感染症とは言えない」とし第9 波による死亡者 の増加を心配されています。どこが普通の感染症ではないと西浦さんはみている のでしょうか。

また移行に伴い感染者数の予測ができない事態にあります。西浦さんからは今 回の流行で亡くなったと考えられる「超過死亡者数」の増加、日本の人口に新型 コロナがもたらした影響について説明していただきます。今後の感染症対策にお いて理論疫学が背負う課題や日本における理論疫学者の育成についても語ってい ただく予定です。

西浦 博(にしうら・ひろし)さん略歴:
大阪府生まれ。阪神淡路大震災で人命救助に携わる医師を目にして医学を志す。宮崎医科大学(現宮崎大学)卒業後、 感染症対策の重要性に目覚め、ドイツやオランダの大学で学び2013 年に東京大学大学院医学研究科准教授。北海道大学教授を経て20 年8 月から現職。新型コ ロナ発生初期から厚生労働省のクラスター対策班でデータ分析に携わった。


2023年 6月月例会のご案内

宇宙開発2.0 時代 ~米中対立の宇宙での展開~

講師: 鈴木 一人さん(東京大学公共政策大学院教授 国際政治学)
日時: 2023年6月9日(金) 18:30-20:30
場所: 東京都千代田区内幸町日本プレスセンタービル9 階   

宇宙開発がし烈さを増している。

米国は、欧州や日本と「アルテミス計画」を進行中。月面周回ステーションを足場に、 月面の基地建設を行い、その後の火星進出を目指している。 一方中国は「嫦娥計画」によって、月の裏側への着陸を、世界で初めて成功させ、今後はロシアと協力して、35 年ごろまでに月面と月面周回軌道への基地建設を目指すという。さらに、地球を周回するISS の老朽化をよそに、独自の地球周回宇宙ステーショ ンを建設するなど、急速に世界の中での存在感を高めている。 一方、イーロンマスクなどによる民間の宇宙開発が活発化し、世界の宇宙開発は混とんとした大競争時代に突入している。

宇宙開発は、世界の経済、政治、安全保障と連動しながら動いている。 その背景の構図はどうなっているのか? 宇宙開発の裏側のエピソードも含め、国際政治の観点からお話を伺う。

鈴木一人(すずきかずと)さん略歴:
立命館大学大学院国際関係研究科修士課程修了、英国サセックス大学大学院ヨーロ ッパ研究所博士課程修了(現代ヨーロッパ研究)。筑波大学大学院人文社会科学研 究科専任講師・准教授、北海道大学公共政策大学院准教授・教授などを経て2020 年 10 月から東京大学公共政策大学院教授。国連安保理イラン制裁専門家パネル委員 (2013―15 年)。2022 年7 月、国際文化会館の地経学研究所(IOG)設立に伴い所長 就任。


2023年 4月月例会のご案内

迫りくる核の破局リスク ~世界と日本はどう対処すべきか~

講師: 鈴木 達治郎(すずき たつじろう)さん
   (長崎大学核兵器廃絶研究センター長・教授)
日時: 2023年4月17日(月) 19:00-21:00
場所:オンライン開催です。

昨年2 月24 日、ロシアがウクライナに侵攻し、ザポロージェ原発に砲撃を加え、世界を震撼させました。運転中の商用原発に砲撃が加えられたのは原子力開 発史上初めてで、「原子力の平和利用」を根底から揺さぶりました。またプーチ ン大統領は核抑止部隊を「高度な警戒態勢」に置き、核戦争の危機到来を実感さ せました。NPT 体制の崩壊が現実味を帯びています。

一方日本でも欧州型の核シェアリングの議論が浮上しました。また岸田政権 による原発政策の転換により、革新炉の開発や再稼働の加速、それに運転期間の 延長などの動きが急速に進んでいます。

世界唯一の被爆国である日本は核不拡散や核戦争の防止にどの様な役割を果 たすことができるのか、またエネルギー高騰という現実の中で、原子力発電や核 燃料サイクルをどう位置付けていくべきか、皆さんとともに考えます。大変重た いテーマですが、奮ってご参加ください。

鈴木 達治郎(すずき たつじろう)さん略歴:
1975 年に東京大学工学部原子力工学科を卒業され、MIT で修士を終了、東京大 学で博士号(工学博士)を取得されました。その後ボストン・コンサルティング、 財団法人電力中央研究所を経て、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科教授 などを歴任し、2010 年1 月に内閣府原子力委員会委員長代理に就任されました。 2011 年3 月の東京電力福島第一原発事故後の原子力政策の立案にあたられたほ か、核兵器廃絶を目指す「バグウォッシュ会議」の評議員を務めておられます。 現在は長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)副センター長として、北東ア ジアの非核化、核不拡散問題などに取り組まれています。核と原子力の関係を最 も熟知する専門家です。


2023年 3月月例会のご案内

BMIが開く脳機能の診断 再建技術の現状と今後の展望

講師: 平田雅之(ひらた ・ まさゆき)さん
日時: 2023年3月10日(金) 18:30-20:30
場所:オンライン開催です。

BMI (Brain Machine Interface) は、人の脳とコンピュータを直接つなぐ夢の技術で ある。イーロン・ マスクらが設立したニューラリンクをはじめ、 この分野では莫大な資金と優れた研究者を集めたベンチャ ー企業や研究所がしのぎを削 っている。考えるだけで 人とコミュニケーションができ、機械を自在に操るというSF的な話がそう遠くない将来に現実となりつつある。

講師の平田雅之さんは、 工学部の修士課程を終えてエンジニアとして自動車会社 に勤めた後、医学部に入り なおして医学博士に なった、医工連携を一人で体現するような異色の経歴の持ち主だ 。2019 年に大阪大学の特任教授として脳機能診断再建学共同研究講座を立ち上げた。この産学共同チームは、脳の機能解明や機能検査に利用されている脳磁計の手間のかかる解析をAIで 自動化する手法を開発する一方で 、体内埋込型のBMIの開発 を進めている。

すでに筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の脳表面に 一時的に電極を留置して、文字出力装置につないで コミュニケーションを可能にする実証実験に成功した。

さらに患者が在宅で長期にわたり利用可能にするため、 超小型のワイヤレス脳波計を開発 し、その臨床応用に向けて必要な安全性と効果の確認を進めているが、 課題も多いという。 その平田さんに BMI 研究の世界の現状と可能性 ・ 課題を語っていただき、 今後の展望についてお話をうかがう。

平田雅之(ひらた•まさゆき)さん略歴:
1962年生ま れ。1987年東京大学大学院工学系研究科修了( 工学修士)。 自動車会社勤務を経て大阪大学医学部に入学。2001年同学大学院医学系研究科 修了 ( 医学博士)。2019年から「脳の機能を診断・再建する」ことを目的に脳機能診断再建学共同研究講座を主宰。


2023年 2月月例会のご案内

iPS細胞心筋シートがつなぐ命、開く世界 再生医療の今と今後の展望

講師: 澤芳樹(さわよしき)さん(大阪大学名誉教授、大阪警察病院病院長)
日時: 2023年2月17日(月) 18:30-20:30
場所: 日本記者クラブ記者会見場 東京都千代田区内幸町日本プレスセンタービル9階

再生医療は病気やけがで機能が損なわれた臓器や組織を細胞の利用によって機能回 復する新しい医療だ。岸田政権が進める新しい資本主義の「投資の4本柱」のひとつ、「科学技術・イノベーションヘの投資」でも再生医療は重要分野としてあげられている。 iPS 細胞の開発など日本の再生医療は世界に先駆ける科学的・医学的研究成果をあげ、 実用化に向け学会や産業界で先進的な取り組みが進む一方で、iPS細胞以外の広い再生 医療分野の全般の実用化では欧米に遅れをとっているとの指摘もある。また日本に限ら ず、再生医療の普及拡大では生命倫理に関わる慎重な判断も求められる。

講師の澤芳樹さんはiPS細胞を使った「心筋シート」を開発、虚血性心臓疾患の患者 さんに移植する手術を2020年に世界で初めて実施した。経過は良好と伝えられ、大阪 大学以外の大学でも移植手術が始められている。

澤さんには心筋シート移植の現状を話していただくとともに、日本再生医療学会理事 長を最近まで務められていた経験から再生医療全般について課題と今後の展望につい てお話をうかがいます。また大阪市は2025年の大阪・関西万博をひとつの契機に「未 来医療都市」を目指しているが、澤さんは産学官がともにヘルスケアの未来を議論する 「inochi未来プロジェクト」にも参画されている。

澤芳樹(さわ・よしき)さん略歴:
大阪市生まれ。心臓外科医を目指し、1980年大阪 大学医学部卒。1989年独マックスプランク研究所心臓生理学部門・心臓外科部門に留 学。2006 年に大阪大学大学院医学系研究科外科学講座心臓血管・呼吸器外科主任教授 に就任。大阪大学医学部附属病院国際医療センターセンター長などを経て、2015 年同 大医学部長。2021年から大阪警察病院病院長。2015~21年に日本再生医療学会理事長を務める。


2023年 2月月例会のご案内

どう伸ばす?子どもの才能~学校と正反対の遊び場~

講師: 中邑 賢龍 さん(東大先端研シニアリサーチフェロー)
日時: 2023年1月30日(月) 19:00-21:00
場所: 日本プレスセンター9F 会見場(オンライン同時開催)

東京大学の中邑賢龍教授(人間支援工学)は、現在の画一的な教育システムが ユニークな子どもを排除すると考え、「学校と正反対の環境」を提供すること で、すべての子供が「その子らしく」成長できる教育プログラムLEARN を開発 した。このシステムは、「目的なし」「教科書なし」「時間割なし」「協働なし」 というユニークな手法で、子供の能動性を引き出そうというもの。高機能自閉 症、重度重複障害児、知的障害児などの「異質」を尊重し、才能を引き出す実 践例をあげながら、今、求められている教育とは何かについて語っていただく。

中邑 賢龍(なかむら けんりゅう) さん
略歴 1956年、山口県生まれ。東京大学先端科学技術研究センター名誉教授・個別最適な学 び寄附研究部門シニアリサーチフェロー。広島大学大学院教育学研究科博士課程後期 単位取得退学後、香川大学教育学部助教授、カンザス大学・ウィスコンシン大学客員 研究員、ダンディ大学客員研究員などを経て現職。ICT を活用した社会問題解決型実 践研究を推進している。


2023年 新年月例会のご案内

宇宙都市をどうつくるか

講師: 大野琢也さん(鹿島建設/京都大学)
日時: 2023年1月12日(木) 18:30-20:00
場所: 日本プレスセンター9F 会見場(オンライン同時開催)

アルテミス計画など、人類は「宇宙開拓」時代に入り、いよいよ月や火星での居住施設 のありようが、本格的に検討される状況となった。

最近の研究で、人類の世代交代には、ある程度の重力が必要と分かり、今後は、人類 の世代交代を可能にする、1G の内部環境をどうつくるかが課題となっている。 鹿島建設+京都大学は、このほど、世界初の、1G 月面居住施設と宇宙都市を発表し、 内外から注目を浴びている。

そこには宇宙時代の医学、環境学、心理学、都市工学の粋が結集している。 宇宙で暮らす人類の都市は、どのような形になるのか?
社会や文化、経済の形はどうなっていくのか?
そして人間の体や心への影響は?
最新研究を紹介しつつ、宇宙時代の人類社会についてお話を伺う。

大野琢也(おおの たくや)氏 略歴
1968年生まれ。鹿島建設株式会社 関西支店建築設計部 副部長。同 技術研究所 上席研究員。京都大学大学院総合生存学館ソーシャルイノベーションセンター有人 宇宙学研究センター SIC 特任准教授。日本建築学会宇宙居住特別委員会委員。


2022年 12月月例会のご案内

火力発電にどう向き合うか?

講師: 橘川 武郎さん(国際大学副学長)
日時: 2022年12月6日(火) 19:00〜21:00
場所: 日本プレスセンター9F 会見場(オンライン同時開催)

日本のエネルギー計画に暗雲が立ち込めている。 エネルギー政策の不備とロシアのウクライナ侵攻などが相成って、この冬も電 力不足が懸念されているからである。今後は、国内の火力発電をどうするかと いう議論が、活発化していくことが予想される。

国際世論は、温暖化防止には、特に先進国において、CO2排出が多い石炭火力 発電の停止が必須としている。しかし、日本政府は、温暖化防止と経済活動の 両立には、石炭火力は欠かせないという立場をとっている。 その対策として、石炭火力の高度システム化と、アンモニア混焼による脱炭素 化を挙げているが、国際世論の反発は依然として大きい。

今後、日本は、火力発電にどう向き合っていけばいいのか? この問題に詳しい橘川武郎さんをお迎えし、日本の火力発電をめぐる現状と今 後のエネルギー政策の在り方について伺う。

橘川 武郎(きっかわ たけお) さん 略歴 :
1951年生まれ。和歌山県出身。1975年東京大学経済学部卒業。1983年東京大学大学院経済 学研究科博士課程単位取得退学。同年青山学院大学経営学部専任講師。1987年同大学助教 授、その間ハーバード大学ビジネススクール 客員研究員等を務める。1993年東京大学社 会科学研究所助教授。1996年同大学教授。経済学博士(東京大学)。2007年一橋大学大学 院商学研究科教授。2015年東京理科大学大学院イノベーション研究科教授。2020年より現 職。東京大学・一橋大学名誉教授。総合資源エネルギー調査会委員。前経営史学会会長 (在任期間2013~16年)。


2022年 11月月例会のご案内

世界大学ランキングのこれまで・ここから

講師: 調 麻佐志(しらべ まさし)さん  (東京工業大学 リベラルアーツ研究教育院教授)
日時: 2022年11月29日(火) 18:30〜20:30
場所: オンラインで実施

2003 年、上海交通大学が世界大学ランキングを公表しはじめて以来、英国の出版社のランキング(THE)および英国の大学評価機関(QS)の 3 つの世界大学ランキングは、世界中の大学関係者を一喜一憂させ、各国の科学技術政策や大学運営に影響を与えてきました。しかし 2022 年、不参加を決断するトップ大学が現れはじめました。

大学ランキングとは何だったのでしょうか? 今後、どこへ向かうのでしょうか? 2022 年 11 月の月例会では、科学と研究に関する計量の研究に長年従事してきた調麻佐志さんとともに、世界大学ランキングのこれまでを振り返り、今後を考えます。

調 麻佐志(しらべ まさし)教授略歴:
東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授
東京大学理学部数学科卒業、同大学大学院総合文化研究科修了、学術博士。信州大学人文学部・東京農工大大学教育センター等を経て現職。2019 年より科学技術社会論学会会長。科学技術社会論学会・会長。専門は科学計量学および科学技術社会論。『研究評価・科学論のための科学計量学入門』2004(共著)、『科学技術をよく考える』 名古屋大学出版会、2013(共編著)、「新型コロナウイルス感染症対策における科学と政治(1)〜(7)」 岩波『科学』2020-2022(共著)


2022年 9月月例会のご案内

「量子の時代」を歩く

講師: 眞子 隆志さん(国立研究開発法人科学技術振興機構 CRDS フェロー)
日時: 2022年9月5日(月) 18:30〜20:30
場所: オンラインで実施します(Zoom)

20世紀初頭に産声をあげた量子論は、従来の物理学では理解できなかったいくつも の現象を統一的に説明してくれただけでなく、応用に向けた指針を数多く与えてくれ ました。その意味で20世紀の文明は量子論によって開かれてきたといっても過言では ありません。

ところが近年になって量子コンピュータ、量子通信、量子センサ、量子マテリアルと いった「量子XX」の名前を頻繁に耳にするようになり、「『量子の時代』はどこに向か うのか」という話題を随所で目にするようになりました。

今回はJST-CRDS フェローの眞子隆志さんをお招きして、「量子の時代の今」を語っ ていただきます。とくに欧米に後れを取っていると言われる量子コンピュータや量子 通信での日本の勝ち筋や、日本が得意とする量子センシングや量子マテリアル分野で 起きているトピックスにについてお話しいただきます。

眞子 隆志(まなこ たかし)さん略歴:
国立研究開発法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター フェロー
(ナノテクノロジー・材料ユニット ユニットリーダー)
担当領域:材料科学、物性物理、半導体デバイス、エネルギーデバイス、量子技術
1961年生まれ.1987年東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。日本電気で酸化物超伝 導体・磁性体、携帯燃料電池、半導体実装、ナノカーボン、次世代エネルギーデバイスな どの研究開発に従事。2019年より現職、ナノテクノロジー・材料分野の研究開発戦略立案 を担当。博士(工学)、技術士(応用理学)。


2022年 7月月例会のご案内

「協調型自動運転技術」の最新動向とモビリティ社会の未来

講師: 高田 広章さん(名古屋大学 未来社会創造機構 モビリティ社会研究所 所長・教授)
日時: 2022年7月28日(木) 19:00〜21:00
場所: オンラインで実施します(Zoom)

百年に一度ともいわれる大きなイノベーションの渦中にあるモビリティ技術。その第一 線で活躍されている名古屋大学 未来社会創造機構 モビリティ社会研究所 所長の高 田広章教授をお招きし、自動運転技術などの最前線で何が課題になっているのか伺 います。

「協調型自動運転技術」とは自動運転をベースに、通信で得た情報をもとに、より高度 な自動運転を実現する技術で、高田教授はこの分野での第一人者です。自動車の制 御に使われるリアルタイムOS 技術や、他のクルマや交通情報と連動したダイナミック マップ技術の研究開発などに取り組んでおられるほか、モビリティ社会研究所所長とし て、企業や行政の動き、海外の動向、それに社会に与えるインパクトなど、幅広く研究 されております。定例会では多角的かつ多様な視点から会員との活発なディスカッショ ンが期待されます。

高田 広章(たかだ・ひろあき)教授 略歴:
1986年、東京大学理学部 情報科学科卒。 同大学助手、豊橋技術科学大学講師・助教授を経て2003月から名古屋大学に教授と して勤務。2014年から現職。自動車の制御に使われる組込み型のコンピュータシステ ムの設計・開発技術に関して幅広く研究。近年は、自動運転に欠かせない協調型シス テムの開発に取り組んでいる。


2022年 6月月例会のご案内

「私たち生きものの中の私」という原点 ―コロナ禍、異常気象、戦争の中でー

講師: 中村桂子さん(JT 生命誌研究館名誉館長)
日時: 2022 年 6月 23 日(木) 午後 6:30〜8:30
場所: オンラインで実施します(Zoom)

「人間は地球に暮らす多様な生きものの一つであり、自然の一部である」。 恐らくほとんどの日本人がこのように認識しているでしょう。ところで、科学 がこれを明確な事実として認識したのは、20世紀の半ばに、DNA が遺伝子の本 体であることを明らかにして以降です。従って、19世紀に生まれ、現代社会を 動かしている科学技術は、この事実を知らない状態で発展してきました。それ は、機械論的世界観の下で、進歩、拡大を求めるものです。

生活者としての人々は、最初に述べた生命論的世界観を持っているのに、な ぜこのようなことが起きているのか。そこには「科学的」という言葉の魔術が あるようです。

コロナ禍、異常気象、戦争の中で、私たちはどのような生き方を選ぶのか。 人類が次の世代、更には次の次の世代へと続き、誰もが幸せに暮らす社会づく りを考える時ではないでしょうか。科学に関わる者にこそ、それを真剣に考え る役割があると思います。(中村先生からのメッセージです)

中村桂子(なかむらけいこ)さん 略歴
1 9 3 6年生まれ、東京都出身。5 9年東京大学理学部化学科卒、6 4年同大学大学 院生物化学修了。国立予防衛生研究所研究員、三菱化成生命科学研究所人間 自然研究部長などを経て、8 9 年早稲田大学人間科学部教授。9 5 年東京大学先 端科学技術研究センター客員教授、9 6年大阪大学連携大学院教授。 1 9 9 3年、自身が構想した生命誌研究館を創設し副館長、2 0 0 2年J T 生命誌研究 館館長、2 0年同館名誉館長。著書は1 9 7 5年の「生命科学」(講談社刊)から 2 0 1 7年の「いのち愛づる生命誌( バイオヒストリー) 」3 8億年から学ぶ新し い知の探求」(藤原書店)まで多数。


2022年 4月月例会のご案内

ニワトリが世界の食料生産を救うか?!SDGs につなげる養鶏技術の今

講師: 鏡味 裕(かがみ・ひろし)さん
   (信州大学農学部・動物発生遺伝学研究室教授)
日時: 2022 年 4月 19 日(火) 午後 7:00〜9:00
場所: オンラインで実施します(Zoom)

世界的な食料不足、気候変動・環境汚染、人口増加、感染症伝搬、紛争・武力侵攻など、人類 の生存を脅かす重い問題が絶えません。4 月月例会ではこれらの中から、持続可能な社会の構築 に欠かせない安定した食料生産・供給の問題について考えます。

今回講師にお招きする鏡味裕さんは動物幹細胞工学が専門で、幹細胞を操作して世界で初め て4 種類のニワトリの細胞が混ざったキメラを誕生させることに成功しました。この4 種類の細胞を 持つキメラを母親として交配したところ、その子供として3 種類のひよこが産まれました。この技術を 応用することにより、例えば、鳥インフルエンザが蔓延した時に食用の鶏・鶏卵不足による価格高 騰を抑えられることが期待されています。また、養鶏における育種改良の向上も見込めるそうです。

講演では、食料生産に関する新たな技術や食料生産産業の構造転換の必要性などについて お話しいただき、食料生産に関する様々な課題についても展望してもらいます。参加の皆さんとの 質疑も通じてSDGs(国連・持続可能な開発目標)の「目標2・飢餓をゼロに」の実現可能性などに ついても考えたいと思います。

鏡味 裕(かがみ・ひろし)さん略歴:
名古屋市内で、外科医の父、薬剤師の母の次男として生まれ、 酪農家を目指す。帯広畜産大学畜産学部卒業後、名古屋大学大学院農学研究科で畜産学を修 め、博士課程修了後にカナダ・ゲルフ大学で博士研究員として動物幹細胞を研究する。現在、信 州大学農学部 教授。ニワトリ幹細胞工学に関する研究教育に従事。日本農学進歩賞をはじめ、 学術賞受賞多数。国際学会等も多数主催。


2022年 2月月例会のご案内

次世代通信ネットワーク『5G』で変わる産業と社会

講師: 藤本幸一郎(ふじもと・こういちろう)さん
   (NEC デジタルネットワーク事業部 上席事業主幹、(兼)ネットワークサービス企画本部 (兼)新事業推進本部)
日時: 2022 年 2月 15 日(火) 午後 6:30〜8:30
場所: オンラインで実施します(Zoom)

次世代モバイル通信ネットワーク5G は2019 年に米国と韓国で商用サービスが始 まりました。日本でも2020 年春からNTT ドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルがサ ービスを開始しましたが、普及は遅々として進んでいません。一方で企業や社会活動 の現場にDX 革新をもたらすために新たに制度化されたローカル5G の普及に期待が 集まっています。

今回はNEC の5G エバンジェリスト、藤本幸一郎さんをお招きして、5G テクノロジー の特徴、Beyond5G や6G の展望、世界の普及状況、ユースケースなどについてお話 をうかがいます。とくに「超高速大容量」「超低遅延」「超多数接続」といった特徴を生か して、産業や社会がどう変わるのか、実例をもとに紹介していただきます。

藤本幸一郎さん略歴:
1993 年NEC 入社。黎明期のインターネット関連事業領域の開 拓として、研究開発や標準化推進、新事業開拓に従事。2002 年から2008 年はNEC アメリカ社に駐在しシリコンバレーでの技術開発、ベンチャー企業との連携に従事。帰 任後は経営企画部/事業開発においてスマートグリッド、MVNO、SDN、NFV 等の推 進に取り組む。2017 年からは現職で5Gを推進。通信関連の団体委員や技術フォーラ ムのプログラム委員等を歴任、技術セミナー等で講演。社外活動としてブロードバンド アソシエーション「ローカル5G 普及研究会」技術WG 主査。


2022年 1月月例会のご案内

あなたは宇宙飛行士になれるか? 月惑星探査時代に求められる「人間力」とは

講師: 川崎一義(かわさき・かずよし)さん
   (宇宙航空研究開発機構(JAXA)有人宇宙技術部門事業推進部部長)
日時: 2022 年 1月 25 日(火) 午後 6:30〜8:30
場所: オンラインで実施します(Zoom)

JAXA は2021年12月20日から13年ぶりに宇宙飛行士の公募を開始した。話題 を呼んだのは応募条件の緩和だ。これまで条件とされてきた大学卒の学歴や自 然科学系の専門的な実務経験が不要になった。

こうした状況を改善するために、ICT を活用した情報支援など、技術、法制度か ら費用負担など様々な面で、国境を越えた取り組みが重ねられてきました。

国際宇宙ステーションでの活動から有人月探査へ、日本人宇宙飛行士の活躍 の場が広がりつつある。また民間企業の宇宙ビジネス参入に伴い、宇宙飛行士 に求められる能力や資質も変わってくる。そうした情勢の変化に合わせて、 JAXA は宇宙飛行士選抜に関し国民から意見を求めた上で応募条件を見直した。 募集要項の見直しや新宇宙飛行士の選抜に関わる川崎さんに、13年ぶりの募 集の背景や新時代の宇宙飛行士に求められる人物像、月惑星探査時代に向けた 世界の有人宇宙活動の動きなどについて話していただきます。

川崎一義(かわさき・かずよし)さん 略歴:
九州大学大学院工学科修士課程 修了。1987年宇宙開発事業団(当時)に入社。国際宇宙ステーションの開発、 宇宙環境利用、月惑星探査計画などを担当。2015年に宇宙探査イノベーション ハブを立ち上げ、これまで宇宙に関係がなかった業界と連携した研究開発事業 を推進してきた。17年に同副ハブ長。20年から現職。


2021年 12月月例会のご案内

避難情報から『誰一人取り残さない』ことは可能か~情報アクセ シビリティの挑戦

講師: 河村宏さん  (日本DAISY コンソーシアム運営委員長)
日時: 2021 年 12月 10 日(金) 午後 7:00〜9:00
場所: オンラインで実施します

自然災害が襲う時、災害情報から取り残される人がいます。音声や文字やビジ ュアルで提供される情報が届かない原因は、障害があったり、日本語を十分に習 得していないことなどです。こうした問題は平時でも当事者に様々な支障やリス クを及ぼします。「情報アクセシビリティ」は、2014 年に日本が締結した国連 障害者権利条約で実現すべきとされている内容の1 つであり、障害者基本法で基 本施策と位置付けられていますが、少なくとも国内での理解はまだ十分とは言え ない状況です。

こうした状況を改善するために、ICT を活用した情報支援など、技術、法制度か ら費用負担など様々な面で、国境を越えた取り組みが重ねられてきました。

例会では情報アクセシビリティの向上のために国内外で幅広く活動を積み重ねて きた河村宏氏さん(DAISY コンソーシアム理事)を講師に迎え、支援技術研究 とその活用の現場、国際ルール策定などについてお話いただきます。実施日まで 残り少ないご案内となり申し訳ありませんでしたが是非参加していただき、この 分野での科学技術貢献の可能性や日本の諸制度の課題などを考える機会になれば 幸甚です。

河村宏(かわむら・ひろし)さん 略歴:
1947 年東京都生まれ。1970 年から1997 年まで東京大学総合図書館に勤務。 東大初の全盲学生・石川准氏(現・静岡県立大学教授)の図書館利用支援を 契機に、情報アクセシビリティへの取り組みを開始。1995 年、デジタル資料 の国際規格「DAISY(Digital Accessible Information System)」(アクセシブ ルな情報システム)の開発を提唱して日本を代表する立場でDAISY コンソー シアムの設立に参加し、システムの国際標準化を推進。国際図書館連盟議 長・国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所障害福祉研究部長・ DAISY コンソーシアム会長などを歴任。技術研究開発・利用促進・国際協 力・制度化など多様な側面から、日本と世界のあらゆる人々が読書を可能に する活動に尽力。


2021年 11月月例会のご案内

偽情報・誤情報が拡散する時代のファクトチェックの可能性

講師: 瀬川至朗さん  (早稲田大学政治経済学術院教授、特定非営利活動)
日時: 2021 年 11 月 30 日(火) 午後 7:00〜9:00
場所: オンラインで実施します

私たちは日々膨大な数の情報に接し、私たちの行動は入ってくる情報に 大きな影響を受けます。インターネットの時代になって久しいですが、ス マホなどの情報端末が発達して多くの情報がSNS を通じて入るようになり ました。便利になった一方で、正しくない、誤った情報が拡散しやすく、 意図をもって偽情報や「フェイクニュース」を流すケースも増えています。

正しい情報と偽情報を見分けることは容易ではありません。それだけに情 報の信憑性を判断する力、情報リテラシーが求められています。比較的最 近の例では新型コロナウイルス感染症のワクチンに関して正しくない情報 が流布し社会問題にもなっています。

11 月例会では、新聞社出身で大学ではジャーナリズム論などを長く担当 し、自ら日本でファクトチェックを実践する活動を主導する瀬川さんを講 師に迎えます。偽情報・誤情報対策はジャーナリズムに何らかの形で関わ る者として重要な課題です。是非ご参加ください。

瀬川至朗(せがわ・しろう)さん 略歴:

1977 年東京大学教養学部教養学科科学史・科学哲学分科卒。毎日新聞社入 社、大阪社会部、科学環境部、ワシントン支局、科学環境部長、編集局次 長など務めた後、2008 年早稲田大学教授に。ジャーナリズム大学院プログ ラム・マネージャー。FIJ、特定非営利活動法人報道実務家フォーラム各理 事長。主な著書に『科学報道の真相』、(ちくま新書)、編著書に『ジャーナ リズムは歴史の第一稿である。』(成文堂)、『ニュースは「真実」なのか』 (早稲田大学出版部)など。JASTJ 会員。


2021年 10月月例会のご案内

食品添加物は、「悪」か?  —「無添加」表示をめぐる消費者行政の混乱を考える—

講師: 唐木英明さん  (食の安全・安心財団理事長、東京大学名誉教授)
日時: 2021 年 10 月 15 日(金) 午後 6:30〜8:30
場所: オンラインで実施します

1960 年代、発がん性甘味料などの危険性が指摘され、「食品添加物」の信 頼は大きく損なわれました。食品安全委員会の安全性評価などにより、現 在のリスクは低減されていますが、消費者庁の意識調査では半数の人が今 も「無添加」表示を商品選択の参考にしています。

消費者庁は今年3 月、「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン検 討会」を立ち上げました。これまでに消費者や事業者らへのヒアリングを 終え、無添加表示に関するガイドライン策定に向けた議論が始まりつつあ ります。「消費者の誤認を招く無添加表示はやめるべきだ」という消費者団 体の意見に対し、業種によっては商品の販売戦略に合わないとして、無添 加表示を残すべきだとの主張も根強く、議論が沸騰しています。

食品のリスクと消費者へのコミュニケーション問題に長年取り組んでこ られた唐木英明さんに、表示問題の現状をお話しいただき、食品と添加物、 リスクの問題を身近に考えたいと思います。この問題をフォローしている JASTJ 会員らも多く、色々な視点からの討論が期待できそうです。是非ご 参加ください。

唐木英明(からき・ひであき)さん 略歴:

東京大学名誉教授、公益財団法人「食の安全・安心財団」理事長 1964 年 東京大学農学部獣医学科卒。 農学博士、獣医師。テキサス大学ダラス医学 研究所研究員などを経て、東京大学農学部教授、東京大学アイソトープ総 合センターセンター長などを務めた。2008〜11 年日本学術会議副会長。11 〜13 年倉敷芸術科学大学学長。著書に「不安の構造―リスクを管理する方 法」、「牛肉安全宣言―BSE 問題は終わった」など。JASTJ 会員。


2021年 9月月例会のご案内

はやぶさ2と日本の宇宙開発

講師: 津田雄一(つだ・ゆういち)さん  (JAXA 宇宙科学研究所教授:はやぶさ 2 プロジェクトマネージャー)
日時: 2021 年 9 月 9 日(木) 午後 7:00〜9:00
場所: オンラインで実施します。

去年の12月6日、はやぶさ 2 は、小惑星リュウグウへの6年の探査を終え、 カプセルを無事地球に帰還させました。採集したサンプル量は、5.4グラム もの多さで、世界の科学者を興奮させるとともに、今後の太陽系の進化や生命 の起源研究に、大きな影響を与えると期待されています。また、はやぶさ 2 に は、「イオンエンジン」や、「小天体を移動探査できる複数のロボット」など、 世界をリードする日本の技術が搭載され、日本の宇宙開発の方向性にも、影響 を与えると注目されています。今回の月例会は、はやぶさ 2 プロマネの津田雄一さんをお招きし、成功へのプ ロセス、苦労話、チームの作り方など、普段聞けないエピソードともに、日本 の宇宙開発の未来についてもお話しいただきます。

津田雄一(つだ・ゆういち)さん 略歴:

東京大学大学院修了・博士(工学)。2003年 JAXA 宇宙科学研究所助教。 2020年教授。専門分野は宇宙航行力学、宇宙機システム、太陽系探査。世 界初の「キューブサット」型超小型衛星や「M-V ロケット」の開発に従事。ソ ーラーセール宇宙船「イカロス」のサブチームリーダーの後、はやぶさ2を成 功に導いた。近著に「はやぶさ 2 最強ミッションの真実」(NHK 出版)、「はや ぶさ 2 の宇宙大航海記」(宝島社)などがある。


2021年 7月月例会のご案内

2050 年カーボンニュートラルへの道を探る〜 電力供給 100%自然エネルギーの可能性と課題

講師: 大野輝之(おおの・てるゆき)公益財団法人自然エネルギー財団常務理事
日時: 2021 年 7 月 20 日(火) 午後 6:30〜8:30
場所: オンラインで実施します。

菅義偉首相は 2020 年 10 月に 2050 年に温暖化ガス排出を事実上ゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言、今年 4 月にはパリ協定の下で約束する 2030年度までの温暖化ガス排出削減目標を 46%削減(13 年度比)に引き上げました。

これを受けて政府は30年度の電源構成など削減の具体策づくりを進めています。電源構成に関し焦点は太陽光や風力発電など再生可能エネルギー(自然エネルギー)をどこまで拡大するかです。民間のシンクタンク、自然エネルギー財団は 50 年に 100%自然エネルギーで供給可能だとするシナリオを提案しています。自然エネルギー普及拡大の必要性、可能性と課題について、大野さんに話してもらいます。

大野輝之(おおの・てるゆき)さん 略歴:

東京大学経済学部卒。1979 年東京都庁入庁。国に先駆けてディーゼル車の排ガス規制強化や温暖化ガス排出量取引制度の導入を手がけた。2013 年に都環境局長を辞して自然エネルギー財団に入り 13 年 11 月から現職。気候変動対策に積極的な企業や団体が組織する気候変動イニシアティブ(JCI)の主要メンバーとして政府に対策の充実などを働きかけている。著書に「自治体のエネルギー戦略」「都市開発を考える」などがある。


2021年 6月月例会のご案内

世界一の変動帯日本列島に暮らすということ

講師: 巽好幸(たつみ・よしゆき)ジオリブ研究所所長(神戸大学海洋底探査センター客員教授)
日時: 2021 年6月 25 日(金曜日) 午後 7:00〜9:00
場所: オンラインで実施します

報道関係者を含む40人余の犠牲者を出した長崎県・雲仙普賢岳の火砕流から6月で30年。その後も火山災害は続いています。しかし、火山に関する報道は、災害はもっぱら富士山噴火が、恩恵については温泉が、それぞれ中心になっています。プレート境界にある日本列島は「世界一の変動帯」です。この国は火山列島、地震列島なのです。火山災害のリスクをどう考えるか。温泉以外にもある火山の恩恵とはー。それらは日本で暮らすとは、という問いかけでもあります。そして分かりやすい地球科学の話でもあります。ユーモアのセンスにあふれる巽さんに講師を務めてもらいます。是非ご参加ください。

略歴

1954 年大阪生まれ。京都大学総合人間学部教授、同大学院理学研究科教授、東京大学海洋研究所教授、海洋研究開発機構プログラムディレクター、神戸大学海洋底探査センター教授などを経て 2021 年 4 月から現職。地球の進化や超巨大噴火のメカニズムを「マグマ学」の視点で考えている。一般向け著書に『火山大国日本 必ず起きる富士山噴火と超巨大噴火』(さくら舎)、『地球の中心で何が起きているのか』(幻冬舎新書)、『和食はなぜ美味しい –日本列島の贈り物』(岩波書店)など。


2021年 4月月例会のご案内

『福島』の困難な状況が続く中、これから科学者、科学ジャーナリズムが何をすべきかを考える」

講師: 早野龍五氏(東京大学名誉教授)
日時: 2021 年4月 13 日(火曜日)午後 7:00〜9:00
場所:オンラインで実施します。

東日本大震災、東京電力福島第1原発事故から10年を経過しましたが、いまだに3万人近くが福島県外での生活を余儀なくされています。帰宅困難地域も残り、事故炉では困難な状況が続いています。「あれから10年」は通過点に過ぎず、これから「何ができるか」「何をすべきか」が問われています。4月の例会は、「3.11」の後、福島の悲惨な現地に入り、研究者の立場から若い人らへの偏見や風評被害を防ぐための情報発信を続けた物理学者、原子物理学者の早野龍五氏を迎えます。

早野氏らが2016年と2017年に専門誌に発表した論文を巡っては、さまざまな問題が提起され、撤回されるという結果になりました。例会では、この論文をめぐる質疑応答もします。10年にわたる早野氏の活動を振り返り、この間に科学者、科学ジャーナリスト、私たちが何をしたか。そしてこれから科学は、私たちは何をすべきか。この国の未来を見据え、多様な視点から建設的に考える機会としたいと思います。是非ご参加ください。

早野龍五氏:

1952年生まれ(岐阜県出身)、東京大学理学部理学科卒。1982年、高エネルギー物理学研究所助教授、東京大学理学部の助教授などを経て97年東京大学大学院理学系研究科教授。その後、CERN研究所客員教授など歴任。2017年から東京大学名誉教授。2008年仁科記念賞など受賞歴、著書多数。近著は「『科学的』は武器になる」(新潮社刊)。


2021年 3月月例会のご案内

「東日本大震災での津波被害-実態と今後の対応」

講師: 今村文彦氏(東北大学災害科学国際研究所所長・教授)
日時: 2021 年 3 月 25 日(木曜日) 午後 7:00〜9:00
場所: オンラインで実施します

2 万人余の死者・行方者を出した東北地方太平洋沖地震による東日本大震災から 3 月 11 日で10 年を迎えます。3 月例会は「3・11」の後にはなりますが、東北大学の津波工学、地震学の教員として大震災の前から、そしてその後も津波防災、地震防災の大切さを説いてきた今村文彦氏を迎えます。同氏は津波防災の分野で日本を代表する研究者です。月例会では、10 年前に何が起きたか、被災地の壮絶な被害を、データに基に振り返りながら「大震災の教訓」を再確認。そして大震災後の防災・減災のための取り組みを紹介していただき、大震災の経験と教訓を伝承するために何が必要かなどを伺い、ともに考える貴重な機会にしたいと思います。是非ご参加ください。

今村文彦氏:

1984 年東北大学工学部土木工学科卒。同大学助教授、京都大学防災研究所客員助教授などを経て 2000 年東北大学大学院工学研究科教授、08 年日本自然際学会会長。東日本大震災の教訓を生かすために文・理・工・医学系の各分野の研究者を集めて 12 年に設立された東北大学災害科学国際研究所の開設、運営に尽力し 14 年 4 月から 2 代目所長に就任。17 年 11 月に仙台市で開催された世界防災フォーラムの会長を務めるなど、地震、津波、台風など広く自然災害に対する防災意識を高めるための活動を主導している。 著書多数。


2021年 2月月例会のご案内

「どう実現?カーボンニュートラル」

講師: 高村ゆかり(東京大学未来ビジョン研究センター教授)
日時: 2021 年 2 月 24 日(水曜日) 午後 7:00〜9:00
場所: オンラインで実施します。

温暖化による気候変動が深刻化する中、菅首相は、日本の温室効果ガス排出「2050 年に実質ゼロ」目標シナリオを打ち出しています。これは、従来の政府方針を一歩進めたもので、世界の120 以上の国、地域が表明している数値目標を、日本も共有することになります。経済産業省を中心に「新エネルギー基本計画」の議論も始まっています。

しかし、従来の 2030 年の電源構成(原発 20-22%、再エネ 22-24%、石炭 26%、天然ガス 27%)をどのように変更し、脱炭素を実現していけばいいのか?多くの課題が横たわっています。世界の現状とともに、日本をとりまく課題について、この問題に詳しい高村教授にお話を伺います。

高村ゆかり:
国際環境条約に関わる法的問題、気候変動とエネルギーに関する法政策などを研究対象とする。
日本学術会議 会員、再生可能エネルギー固定価格買取制度調達価格等算定委員会委員・委員長代理、中央環境審議会委員、 科学技術・学術審議会環境エネルギー科学技術委員会主査、社会資本整備審議会環境部会委員などを務める。2018 年度環境保全功労者環境大臣賞 受賞。(主な著書) ・『気候変動政策のダイナミズム』(新澤秀則との共編著)(岩波書店、2015 年) ・『国際環境条約・資料集』(松井芳郎ほかとの共編)(東信堂、2014 年) ・『気候変動と国際協調―京都議定書と多国間協調の行方』(亀山康子との共編著)(慈学社、2011 年) ・『地球温暖化交渉の行方―京都議定書第1約束期間後の国際制度設計を展望して』(亀山康子との共編著)(大学図書、2005 年)など論文、編著書多数。


2021年 1月月例会のご案内

生命科学者がみた新型コロナ・パンデミック  

講師: 大隅典子(東北大学大学院医学系研究科教授、東北大学副学長)
日時: 2021 年 1 月 12 日(火曜日) 午後 7:00〜9:00
場所: オンラインで実施します。 

大隅典子さんは、哺乳類の脳がどのようにして生まれてきたのかという大きな謎の解明に挑む研究に取り組む一方、精妙な脳の働きのほんのわずかなトラブルがもたらす神経発達障害の発症メカニズムを明らかにする研究も展開されている日本を代表する神経生物学者です。

最先端の科学者というだけでなく、ご自身のブログ「大隅典子の仙台通信」および note 記事や週刊ダイヤモンド連載の「大人のための最先端理科」などを通じ、科学や大学のありようや女性科学者の問題などについて幅広い読者層に語りかけている「科学コミュニケーター」でもあります。また 2020 年度から JASTJ の科学ジャーナリスト賞の選考委員にも就任していただきました。

新型コロナの感染拡大で私たちは生命と経済、医療、科学と政治、プライバシーと格差・偏見など今まで見過ごしがちだった社会の様々な課題に直面させられました。大隅さんが一人の生命科学者としてパンデミックをどう捉え、何を考えてこられたかについてお聞きしたいと思います。

大隅典子(おおすみ・のりこ)さん 略歴:

東京医科歯科大学大学院修了。国立精神・神経センターを経て、1998 年に東北大学大学院医学系研究科で女性として初めて教授に就任。同大総長特別補佐(男女共同参画担当)やディスティングイッシュトプロフェッサーを務め、2018年から副学長、附属図書館長。専門は神経発生学。一般向けの著書に「脳からみた自閉症 『障害』と『個性』のあいだ」や「脳の誕生 発生・発達・進化の謎を解く」などがある。


2020年 12月Webミニ例会のご案内

結び目理論って何?

講師: 小鳥居祐香さん 理研数理創造プログラム(iTEMS)客員研究員(広島大学准教授)

日時: 2020 年 12 月 22 日(火)19:00-21:00
場所: ZOOM 開催

体験実習「<絡まる>って、なに?」です。タイトルは、「ご祝儀の水引(結び切り)は<絡まっている>ことを、数学で説明してみましょう」お手元に、3 本のひも、あるいは、お絵かきパッドか、A4 メモ用紙と鉛筆をご用意いただき、小鳥居さんの案内に従って、結び目(交差点)の数と、重なり具合を考えて行きましょう。


2020年 11月月例会のご案内

COVID-19 との付き合い方を考える —最新免疫学からわかった病原体の正体—

講師: 宮坂昌之さん(大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授・名誉教授)
日時: 2020 年 11 月 30 日(月曜日) 午後 6:30〜8:30
場所: ZOOM とプレスセンタービル9F 会見場(千代田区内幸町 2-2-1)

「新型コロナウイルス(COVID-19)」をめぐる月例の勉強会、今回は感染拡大が始まった2020 年初頭から、新たなコロナウイルスの本質と、身体の免疫システムの関わりなどを科学的に、しかもわかりやすく説明してこられた宮坂教授が講師です。マスコミの取材や、Facebookなどの SNS、レクチャーやパネル討論などで展開された多くのメッセージは、誰にでもわかりやすい表現で、パンデミックに翻弄される人々の不安を解きほぐす上で、大きな貢献をしています。今月、「新型コロナ 7 つの謎 最新免疫学からわかった病原体の正体 」(ブルーバックス)を上梓されたこともあり、この新著を手がかりに、COVID-19 のリスク、ワクチンの見通し、抗体医薬の可能性、感染拡大・収束の見通しなど、大局的な視点のお話しと、質疑・討論というセッションを予定しています。

宮坂昌之(みやさか・まさゆき)さん 略歴:
1947 年長野県上田市生まれ。73 年京都大学医学部卒業。81 年オーストラリア国立大学ジョン・カーティン医学研究所博士課程修了。PhD(免疫学)。スイス・バーゼル免疫学研究所メンバー、(財)東京都臨床医学総合研究所・免疫研究部門部長、大阪大学大学院医学研究科教授、などを経て、大阪大学名誉教授。フィンランド学士院の教授 FiDiPro (Finland Distinguished Professor)。著書に、『免疫力を強くする 最新科学が語るワクチンと免疫のしくみ』など。剣道 7 段。


2020年 10月月例会のご案内

温暖化懐疑論にどう向き合うか?

講師: 江守正多さん(国立環境研究所地球環境研究センター副センター長)
日時: 2020 年10 月16 日(金曜日) 午後7:00〜9:00
場所: ZOOM 開催

地球温暖化に対する懐疑論や否定論が、再び活発化してきています。温暖化懐疑論は2007-2009 年頃、社会的関心を集めたことがありましたが、その後は散発的になりました。ところが最近イギリスのGWPF や日本のIEEI(国際環境経済研究所)が系統的な温暖化懐疑論を主張し始め、次第に社会的な注目を集めだしています。温暖化懐疑論がなぜ復活するのでしょうか?その論点を整理し、最近の科学的知見を紹介しながら、地球温暖化への正しい向き合い方についてお話を伺います。

江守正多さん(えもり・せいた)さん 略歴:
1970 年神奈川県生まれ。1997 年に東京大学大学院 総合文化研究科 博士課程にて博士号(学術)を取得後、国立環境研究所に入所。2018 年より地球環境研究センター副センター長。社会対話・協働推進オフィス(Twitter @taiwa_kankyo)代表。専門は地球温暖化の将来予測とリスク論。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第5 次および第6 次評価報告書 主執筆者。著書に「異常気象と人類の選択」「地球温暖化の予測は『正しい』か?」、 共著書に「地球温暖化はどれくらい『怖い』か?」「温暖化論のホンネ」等。


2020年 9月月例会のご案内

コロナショックで加速する製造業の新たな産業革命 —私たちの未来社会Society5.0への胎動—

講師: 安井公治さん(三菱電機株式会社 主席技監/FAシステム事業本部 産業メカトロニクス事業部)
日時: 2020年9月11日(金曜日) 午後7:00〜9:00
場所: ZOOMと日比谷図書文化館スタジオプラス(東京都千代田区日比谷公園1-4

仮想空間と現実空間を連携し、すべての人や物、情報をつなぐ社会「Society5.0」は製造業から実現していくとみられています。設計から製造まで、極力フィジカルな人手を介さずに、デジタル空間や遠隔操作で完結するものづくりは、コロナで封鎖された武漢でも生産を中止する必要がありませんでした。今後、CPS、3Dプリンタ、IoT、AI、5G、量子計算、量子通信などの新技術を融合させて加速的に進展し、人々の働き方にも影響を及ぼします。

世界の専門家会議に多数参加する安井さんは、戦略的に新産業革命が起こせると見ています。日本のものづくりが強みを発揮するには何が必要なのか。スマート製造は日本経済再生の立役者となりうるのか。さらにはスマート化がもたらす新たな社会構造の展望も含め、文科省のCOIや内閣府のSIPでの取り組み状況とともに今後の展望についてお話を伺います。

安井公治(やすい・こうじ)さん 略歴:

1982年東京大学工学部物理工学科卒業。工学博士。三菱電機株式会社製品開発研究員、スタンフォード大学客員研究員などを経て、現在、同社産業用加工機のグローバル展開を担当。文科省COI「コヒーレントフォトン技術によるイノベーション拠点」プロジェクト・サブリーダー。内閣府SIP「光・量子を活用したSociety5.0実現化技術」サブプログラム・ディレクター。


2020年 7月月例会のご案内

医療現場の実態と「第2波」に備えた今後の課題 ―新型コロナウイルス感染症の臨床医として―

新型コロナウイルス感染症の世界での感染者は1千2百万人を超えるなど、収束の兆しはありません。日本でも東京都で連日3桁の感染者が報告され、今後「第2波」が強く懸念されています。今こそ第2波への備えが求められています。

感染制御学の専門家である國島広之さんは、医療現場の最前線で新型コロナウイルス感染症の診療にあたってきました。多くの患者と向き合ってきた1 人の医師としてもチームとしても、日々刻々と感染状況が変化し、現場がひっ迫する中で、厳しい対応を迫られてきました。國島さんから臨場感・緊張感あふれるお話、そして次の流行を見据えたお話をお聞きし、医療現場の今後の課題を整理します。

今回は非常事態宣言後初の月例会です。國島さんが参加者との自由な意見交換を希望されていることもあり、対面での例会としオンライン併用としました。

講師: 國島広之氏(聖マリアンナ医科大学感染症学講座教授)
日時: 2020 年7月27 日(月曜日) 午後7:00〜9:00
場所: 日比谷図書文化館スタジオプラス(東京都千代田区日比谷公園1-4)

國島広之氏のプロフィール:
平成7年、聖マリアンナ医科大学医学部卒。同大学大学院微生物専攻学位取得後同大学附属病院第一内科助手の後、東北大学医学部附属病院(現東北大学病院)検査部講師、同病院総合感染症科医局長などを経て、平成25年聖マリアンナ医科大学内科学総合診療内科准教授・医局長など。同28年9月から同大学感染症学講座教授。


2020年 3月月例会のご案内

深刻化を増す海洋の異変 ―観測データが示す気候変動―

講師: 石井雅男氏(気象研究所 気候・環境研究部長)
日時: 2020年3月19日(木) 午後7時〜9時
場所: 日本プレスセンター 8階会議室(東京都千代田区内幸町2-2-1)

新型コロナウイルスの感染が社会問題になっていますが、今年の東京オリンピック・パラリンピックを前に、やはり気になるのは温暖化対策。そこで3月の月例会は、最近の異常気象に関係する海洋気候に焦点を当て、長年海洋観測を続けている気象研究所の専門家、石井雅男氏をお招きし、話を聞きます。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によると、いま世界の海で雪氷融解、高水温化、水位上昇、酸性化などが進行しており、生物、人間の環境に多大な影響を与えつつあります。日本でも記憶に新しいのは、昨年の猛暑や台風19号などの襲来。これらの気象の激甚化は日本列島周辺の海洋の高水温化に起因され、今年も同じ状況が予想されます。

IPCCは昨年9月に「海洋と雪氷圏」特別報告書をまとめたばかりです。気候変動枠組み条約に基づくパリ協定は今年から本格始動し、実施段階に入りました。石井氏にはIPCCの特別報告書の内容を、気象研が長年観測してきたデータとともに日本周辺で起きている現象を中心に解説いただき、今後の温暖化対策を考える機会にいたします。

石井 雅男(いしい・まさお)さん 略歴:

1989年3月名古屋大学大学院理学研究科博士課程(化学専攻)修了、同年4月気象研究所地球化学研究部。海洋・地球化学研究部の室長などを経て現職。長年にわたり海洋の物質循環の観測・研究に従事し、世界気象機関やユネスコ政府間海洋学委員会などが後援する全球海洋観測システムの生物地球化学パネル共同議長。IPCC 第1作業部会 第6次評価報告書の作成に第5章のリードオーサーとして関わる。専門は大気・海洋の炭素循環。


2020年 2月月例会のご案内

福島原発事故から9年 〜被害者はいま 武藤類子さんが語る〜

講師:武藤類子(むとうるいこ) 原発事故被害者団体連絡会共同代表、福島原発告訴団団長
日時:2020年2月21日(金) 18:30〜20:30
場所:日本プレスセンタービル8階 特別会議室(東京都千代田区内幸町2-2-1)

福島原発事故から9年。『原子力緊急事態宣言』は、今も発令中です。事故の責任の所在はあいまいなまま、誰一人裁かれる事なく、再稼働が進められています。現在 20mSv/年以下(平時の20倍)で帰還政策が取られていますが、帰還率は、平均15%程。今なお 7市町村に取り残された区域があり、5万人程が故郷に戻っていません。福島県民は今、原発事故をどのように捉え、どう過ごしているのでしょうか?

三春町の教育長を務めた父親の元で育った武藤さんは、知的障害児の特別支援学校教員などを経て、福島の田舎で有機ベースの喫茶店を経営。3/11に事故に遭遇、廃業しました。そして11年秋、 明治公園で開催された5万人集会で、被害者代表スピーチを行い、多くの人に共感と感動を与えました。その後、被害者団体連絡会共同代表などに押され、今日に至っています。

2月の月例会では、武藤類子さんをお招きし、原発事故以降、被害者たちに起きたこと、現在の暮らしぶり、そして思いについて、お話ししていただきます。


2020年 1月月例会のご案内

討論会「再び問う、安全保障技術研究推進制度」―国立天文台報道を新たな契機に―

話題提供者: 三輪喜人(東京新聞科学部記者)
モデレーター: 滝順一(JASTJ副会長)
日時: 2020年1月9日(木) 午後6:30〜8:30
場所:日本プレスセンタービル8階 特別会議室(東京都千代田区内幸町2-2-1)

東京新聞は9月10日付朝刊で「国立天文台、軍事研究容認も」と報じました。2年前に防衛装備庁の安全保障技術研究推進制度には応募しないと決めていましたが、方針を一転させる動きです。背景には政府によるトップダウン的な研究費配分によって基礎科学の研究費が不足している事情があると推測されます。

軍事技術研究への科学者の協力の是非や、政府の科学技術研究予算の配分政策などについて、会員間で意見交換し、これらの問題にどう向き合っていくべきか、改めて議論する機会にしたいと思います。

国立天文台の水面下の動きをスクープした東京新聞の三輪喜人記者に報道の経緯など話題提供をしていただきます。国立天文台の縣秀彦さん(JASTJ理事)と、科学技術政策に詳しい毎日新聞記者の須田桃子さんにもコメンテーターとして議論に加わっていただきます。

(防衛装備庁の制度に関しては2017年7月例会でも甲南大学教授の井野瀬久美恵さんを講師に招き議論しました)


2019年 11月月例会のご案内

「イノベーションを生み出す大学教育とは?」

講師:大久保達也教授(東京大学・工学系研究科長・工学部長)
日時:2019年11月20日(水曜日)午後6:30〜8:30
場所:日本プレスセンタービル8階 特別会議室(東京都千代田区内幸町2-2-1)

イノベーションは、国家の競争力を支える最重要ファクターです。しかし日本は、イノベーションを生み出す力が急速に衰え、科学技術立国としての立場が危うくなっています。大学も例外ではなく、学部生、大学院生の就職活動の早期化、長期化で、勉学や研究に割く時間が減り、創造的研究成果が出ないなど、教育現場は停滞と混乱の中にあります。背景には、高度経済成長期の人材獲得に採用された新卒一括採用がいまだに残り、イノベーション創出が求められる現代社会に適応しきれない大学教育の現実があります。

大久保教授は、その状況を打開するため、世界の多様な人々と共に生き、働く力をつける教育を模索し、起業家など創造的な人材を育てるユニークな教育を実践する、工学教育のリーダーの一人です。イノベーションを生み出す教育とはどのようなものでしょうか?どのような課題をどう克服すればいいのでしょうか? 海外の例も紐解きながら、日本の教育システムの問題点を整理し、東京大学工学部の今後の戦略(特に世界に向けた戦略)にも触れつつ、大学教育の未来について伺います。

(大久保達也教授プロフィール)
ゼオライト合成・製造法の開発とエネルギー・環境分野への応用研究で世界的に著名。
また「プラチナ社会」構築を目指し、分野横断型研究、地方創成活動でも知られています。


2019年 10月月例会のご案内

「年縞科学の新展開 ー福井年縞博物館の年縞サンプルがやってくるー」

講師:山根一眞(サイエンスライター、福井県年縞博物館特別館長)
日時:2019年10月08日(火)午後07:00〜09:00
場所:日本プレスセンタービル8階 特別会議室(東京都千代田区内幸町2-2-1)

福井県若狭市・水月湖の底に幾星霜、静かに積もり続けた湖底の泥。その地層に刻印された「時」を告げるシマシマを、「年縞」と呼びます。これを垂直に45m掘り進んで、円筒の容器に採取したサンプルが、年縞サンプルです。驚くことに7万年分あることがわかり、一躍、世界の注目をあびました。こんな長期間の年縞が、これほど明瞭に示されたことがなかったからです。

まず、放射性炭素の時代測定の新たな標準「INTCAL」として認定されただけでなく、泥に含まれる生物の死骸、排出物、花粉、火山灰、黄砂や金属を調べることで、地球環境、生態系、そして地球という衛星が浴びた宇宙線や、自転、軌道変化など、自然科学の様々な領域の研究を支える、貴重な資料となりました。さらに気象と人間のかかわりなど、人類の歴史も読み解くことができます。

このため昨年9月、年縞サンプルを保管、展示し、また、「年縞学」の研究や学会開催の拠点として「福井県年縞博物館」がオープンしました。すでに国際シンポジウムも開催され、各国の研究者との共同研究も進んでいます。今回は、特別館長として、年縞の意義や研究成果を社会に伝えるコミュニケーション活動に取り組んでいる、山根一眞さんに講師としてお話しいただき。また、年縞サンプルもお持ちいただき、本物の「年縞」にも、触れていただきたいと思います。


2019年 9月月例会のご案内

「最新報告:中国の科学技術」

講師:倉澤治雄さん(ジャーナリスト/JASTJ会員)

日時:2019年9月11日(水) 午後6:30〜8:30
場所:日本プレスセンタービル8階 特別会議室(東京都千代田区内幸町2-2-1) 

中国の科学技術が爆発的に発展している。WIPOの国際特許出願数では、米国の標的になっているファーウェイが引き続きトップをしめ、AI関連の論文の4割、ナノテク関連の3割が中国発であり、重要分野30項目のうち、すでに中国がナンバーワンであるという調査もある。また、原子力発電、宇宙開発、電気自動車、ICTでも中国は抜きんでた出た存在となっており、今後の世界の政治、経済、科学技術の状況に重要な影響を与える存在といえる。

今回の月例会は、中国の科学技術状況を追跡し、現状にも詳しい、JASTJ会員の倉澤治雄さんに登壇いただき、日米経済対立に揺れる、中国科学技術の現状と未来について、最新の状況を踏まえ、報告いただく。

倉澤治雄さん略歴:

1952年千葉県生まれ。1977年東京大学教養学部基礎科学科卒業。1979年フランス国立ボルドー大学大学院博士号取得(物理化学専攻)。同年オルレアン大学研究員。1980年日本テレビ入社。社会部、経済部、外報部、北京支局長、経済部長、政治部長、メディア戦略局次長、報道局解説主幹などを担当。立教大学、上智大学、獨協大学などで非常勤講師。2012年、研究開発法人科学技術振興機構中国総合研究交流センター副センター長。2017年、フリーランスの科学ジャーナリストとして独立。


2019年 7月月例会のご案内

「ウェブジャーナリズムの可能性 〜激変を遂げるメディア業界〜」

講師:朝日新聞のウェブメディア「DANRO」元編集長 亀松太郎さん

日時:2019年7月10日(水) 午後6:30〜8:30
場所:日本プレスセンタービル8階 特別会議室(東京都千代田区内幸町2-2-1)

ウェブジャーナリズムが急速に成長している。1996年に生まれたYahoo!ニュースを皮切りに、SmartNews、LINEニュース、BuzzFeed、AbemaTVなど新しいネットメディアが次々と生まれ、メディア界全体に地殻変動をおこしている。一方で、新聞や出版などの紙媒体は購読者を減らし、いくつかの雑誌が廃刊に追い込まれるなど、オールドメディアは苦戦を強いられている。ウェブメディアは、今や旧来のテレビに匹敵するマスメディアとなり、社会に影響を与える存在になったと言える。

7月の月例会では、ウェブジャーナリズムの現状に詳しい亀松太郎さんにお越しいただき、ウェブジャーナリズムの可能性と課題、そしてメディア全体の未来についてお話を伺いたい。

亀松太郎さん略歴:

静岡県生まれ。大学卒業後、朝日新聞記者になるが、3年で退社。その後、法律事務所リサーチャーやJ-CASTニュース記者などを経て、ニコニコ動画を運営するドワンゴに転職。ニコニコニュース編集長としてニュースサイトの運営や報道・言論番組の制作を統括した。その後、弁護士ドットコムニュースの編集長として、時事的な話題を法律的な切り口で紹介する新しいタイプのニュースコンテンツを制作した。続いて、Yahoo!ニュース特集の編集などに関わった後、「ひとりを楽しむ」をコンセプトにした朝日新聞のウェブメディア「DANRO」の創刊編集長を務めた。現在は関西大学総合情報学部の特任教授を務めながら、オンラインコミュニティ「あしたメディア研究会」を運営。複数のネットメディアの顧問を務める。


2019年 6月月例会のご案内

SDGsは人類の未来を切りひらくか?

講師:慶應大教授 蟹江憲史さん
日時:2019年6月21日(金) 午後6:30〜8:30
場所:日本プレスセンタービル8階 特別会議室 (東京都千代田区内幸町2-2-1)

2011年に国連が提唱したSDGs(持続可能な開発目標)が、世界各国から注目されている。人口爆発、気候変動、エネルギー問題、格差社会やテロの増加などで引き起こされている世界的危機は、「持続可能な国際社会」の実現なしには乗り越えられない。SDGsとは何か?どのようにすれば「持続可能な社会」は実現するのか?SDGsに深くかかわってきた蟹江憲史さんに、人類社会の未来を切り開くSDGsを取り巻く現状と、今後の課題について伺う。

慶應大教授 蟹江憲史さん 略歴:
慶應義塾大学SFC研究所xSDGラボ代表、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)シニアリサーチフェロー、東京大学国際高等研究所サステイナビリティ連携研究機構客員教授。北九州市立大学講師、助教授、東京工業大学大学院准教授を経て2015年より現職。日本政府SDGs推進本部円卓会議委員、内閣府自治体SDGs推進評価・調査検討会委員など各種委員を兼務。主な近著に「持続可能な開発目標とは何か:2030年へ向けた変革のアジェンダ」(ミネルヴァ書房, 2017, 編著), Governing through Goals: Sustainable Development Goals as Governance Innovation (MIT Press, 2017, 共編著), 「未来を変える目標 SDGsアイデアブック」(Think the Earth, 2018, 監修)などがある。博士(政策・メディア)。


2019年 4月月例会のご案内

人間拡張工学がもたらすもの

講師:稲見昌彦(いなみ・まさひこ)さん(東京大学先端科学技術研究センター身体情報学分野教授)
日時:2019年4月17日(水)午後6:30〜8:30
場所:日本プレスセンタービル8階 特別会議室(東京都千代田区内幸町2-2-1)

テクノロジーの進歩で、人間の身体能力(見る、聞く、動く、触る‥)を補完したり、拡大する「人間拡張工学」が注目されている。手足を失った人がロボット義手で、新しい手足(脳からの信号で操作)を操ったり、健全な身体の人間が、身体能力をアップグレードして、今まで不可能だったスピードで移動、跳躍したり、物質の向こう側を見る視覚能力まで手にいれることができるようになった。「人間拡張学」とは何か?人間や社会に何をもたらすのか?「超人スポーツ競技」の提唱者でもある稲見教授にお話を伺う。

稲見昌彦さん
 1994年、東京工業大学生命理工学部生物工学科卒。1996年、同大学大学院生命理工学研究科修士課程修了。1999年、東京大学大学院工学研究科先端学際工学専攻博士課程修了。東京大学リサーチアソシエイト、同大学助手、JSTさきがけ研究者、電気通信大学知能機械工学科講師、同大学助教授、同大学教授、マサチューセッツ工科大学コンピューター科学・人工知能研究所客員科学者、JST ERATO五十嵐デザインインタフェースプロジェクトグループリーダー、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、東京大学大学院情報理工学系研究科教授を経て2016年4月より現職。自在化技術、Augmented Human、エンタテインメント工学に興味を持つ。現在までに光学迷彩、触覚拡張装置、動体視力増強装置など、人の感覚・知覚に関わるデバイスを各種開発。米TIME誌Coolest Invention of the Year、文部科学大臣表彰若手科学者賞、情報処理学会長尾真記念特別賞などを受賞。超人スポーツを提唱。超人スポーツ協会発起人・共同代表。VRコンソーシアム理事。著書に『スーパーヒューマン誕生! 人間はSFを超える』(NHK出版新書)がある。


2019年 3月月例会のご案内

JASTJ25周年「未来をどう切り開くか」討論会(3回シリーズ)
第3回「ICTは社会をどこまで変えるのか」

時代の節目となる2019年にあたり、JASTJは科学や技術にまつわる社会問題と報道を振り返り、今後の科学ジャーナリズムの在り方を考える3本シリーズを企画しました。第1回「地球温暖化とエネルギー」、第2回「バイオテクノロジーと生命倫理」に続き、第3回では「ICTは社会をどこまで変えるか」を取り上げます。

インターネットの商用利用が始まって広く利用できるようになったのは1995年、JASTJ発足1年後のこと。それからわずか四半世紀、インターネットに代表される情報通信技術(ICT)は社会や産業、経済、国際政治、ジャーナリズムのあり方まで大きく変えてきました。AIはそうした変化をさらに加速するとみられています。ICTの急速な進展はこれから社会をどこまで変えるのか。半世紀にわたってICTの発展と社会・経済のあり方に取り組んできた西村吉雄さんにご講演いただき、そのあと自由闊達な議論をします。こぞってご参加ください。

講師:西村吉雄(にしむらよしお)さん(JASTJ会員、元 日経エレクトロニクス編集長)
日時:2019年3月27日(水) 午後6:30〜8:30
場所:日本プレスセンタービル8階 特別会議室(東京都千代田区内幸町2-2-1)

西村吉雄さん略歴
技術ジャーナリスト。1942年生まれ。1971年に東京工業大学大学院博士課程修了、工学博士。東京工業大学大学院に在学中の1967~1968年に仏モンペリエ大学に留学、マイクロ波半導体デバイスや半導体レーザーの研究に従事。1971年に日経マグロウヒル社(現在の日経BP社)入社。1979~1990年『日経エレクトロニクス』編集長。その後、同社で発行人、調査・開発局長、編集委員などを務めたほか、東京大学大学院工学系研究科教授、大阪大学フロンティア研究機構特任教授、東京工業大学監事、早稲田大学政治学研究科客員教授などを歴任。著書は『硅石器時代の技術と文明』(日本経済新聞社)、『半導体産業のゆくえ』(丸善)、『情報産業論』(放送大学教育振興会)、『産学連携』(日経BP社)、『電子立国は、なぜ凋落したか』(日経BP社)など。


2019年 2月月例会のご案内

JASTJ25周年「未来をどう切り開くか」討論会(3回シリーズ)
第2回「生命の〝編集〟はどこまで許されるか」

時代の節目となる2019年にあたり、JASTJは科学や技術にまつわる問題と報道を振り返り、今後の科学ジャーナリズムの在り方を考える3本シリーズを企画しました。第2回は「バイオテクノロジーと生命倫理」を取り上げます。

昨年11月、中国の科学者がゲノム編集技術を用いて遺伝情報を改変した双子の出産を報告し世界を驚かせました。ヒトの遺伝情報の改変はどこまで許されるのでしょうか。決してしてはいけないことなのでしょうか。動物に対してはどうでしょう。急テンポで進化するバイオ技術は私たちの未来をどう変えて行くのでしょうか。

講師は、生命倫理の問題に長く取り組んできた青野由利さんです。お話ののち、会員間で自由闊達な議論を行います。こぞってご参加ください。

講師:青野由利(あおの ゆり)さん(JASTJ会員、毎日新聞論説室専門編集委員)
日時:2019年2月13日(水) 午後6:30〜8:30
場所:日本プレスセンタービル8階 特別会議室(東京都千代田区内幸町2-2-1)

青野由利さん略歴
毎日新聞社論説室専門編集委員。東京大学薬学部卒業、同大大学院総合文化研究科修士課程修了、医学、生命科学、天文学、火山、原子力などの科学分野を担当。1988-89年フルブライト客員研究員(MITナイト・サイエンス・ジャーナリズム・フェロー)、99-2000年ロイター・フェロー(オックスフォード大学)。著書に『ニュートリノって何?』『宇宙はこう考えられている』『生命科学の冒険』(以上ちくまプリマー新書)、2010年科学ジャーナリスト賞を受賞した『インフルエンザは征圧できるのか』(新潮社)、『ノーベル賞科学者のアタマの中──物質・生命・意識研究まで』(築地書館)、『遺伝子問題とはなにか──ヒトゲノム計画から人間を問い直す』(新曜社)など。


2019年 1月月例会のご案内

JASTJ 25周年「未来をどう切り開くか」討論会(3回シリーズ)
第1回「脱原発で脱炭素できるのか」

講師:横山裕道(よこやまひろみち)さん(JASTJ会員・元淑徳大学教授)
日時: 2019年1月24日(木)午後6:30〜8:30
場所:日本プレスセンタービル8階 特別会議室(東京都千代田区内幸町2-2-1)

時代の節目となる2019年にあたり、JASTJでは、科学や技術にまつわる社会問題を総括し、今後の科学ジャーナリズムの在り方を考える3本シリーズを企画します。第1回は、脱炭素社会の構築が世界の緊急課題となっていることから「地球温暖化とエネルギー」がテーマです。地球温暖化対策と脱原発は両立することが可能なのか? 講師は、この問題に長く取り組んできた横山裕道さん。お話ののち、会員間で自由闊達な議論を行います。こぞってご参加ください。

横山裕道(よこやまひろみち)さん
1944年仙台市生まれ。東京大学理学部卒。同理学系大学院修士課程修了後の1969年毎日新聞社入社。東京・社会部を経て1984年科学部。同副部長、論説委員、科学環境部長兼論説委員などを歴任。2003年から淑徳大学国際コミュニケーション学部教授。2017年から2018年3月まで同大人文学部教授。現在、科学・環境ジャーナリスト、環境省「国内における毒ガス弾等に関する総合調査検討会」検討員、埼玉県和光市環境審議会会長。これまでに中央環境審議会特別委員・臨時委員、埼玉県環境審議会会長などを務めた。
著書『原発と地球温暖化 「原子力は不可欠」の幻想』(紫峰出版、2018年10月)、『気候の暴走 地球温暖化が招く過酷な未来』(花伝社、2016年)など。


2018年 11月月例会のご案内

大人の発達障害の現状と課題

講師:加藤進昌(かとう・のぶまさ)さん(昭和大学発達障害医療研究所長)
日時: 2018 年11月29日(木)午後6:30〜8:30
場所:日本プレスセンタービル8階 特別会議室(東京都千代田区内幸町2-2-1)

 大人の発達障害がクローズアップされています。発達障害には自閉症スペクトラム、注意欠陥多動性障害(AD/HD)、学習障害(LD)などがあり、対人関係やコミュニケーションが苦手なため、日常生活で困難をきたしてしまいます。とくに、大人の発達障害は、子供時代に見過ごされたまま成長し、職場などでトラブルを起こし、初めて気づくケースが多く、医学的、福祉的サポートを受けないまま放置されている現状もあり、大きな社会問題になっています。大人の発達障害の研究、診療に、長年取り組み、日本をリードし続けてきた加藤進昌さんに、注目されているオキシトシン(治療薬)の話題も盛り込みつつ、大人の発達障害の現状と課題をお話しいただきます。

加藤進昌(かとう・のぶまさ)さん
 1947年、愛知県生まれ。東京大学医学部卒業。帝京大学精神科、国立精神衛生研究所、カナダ・マニトバ大学生理学教室留学、国立精神・神経センター神経研究所室長、滋賀医科大学教授などを経て、東京大学大学院医学系研究科精神医学分野教授、東京大学医学部附属病院長、昭和大学医学部精神医学教室教授、昭和大学附属烏山病院院長を歴任。専門は精神医学、発達障害。
 2008年、昭和大学附属烏山病院に大人の発達障害専門外来を開設し、併せてアスペルガー症候群を対象としたデイケアを開始。2013年からは神経研究所附属晴和病院でもリワークプログラムと組み合わせた発達障害デイケアを開設した。2014年烏山病院内に開設された昭和大学発達障害医療研究所で、脳科学研究戦略推進プログラムおよび文部科学省共同利用・共同研究拠点として、発達障害の科学的理解と治療研究に取り組んでいる。


2018年 10月月例会のご案内

顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases=NTD)―フィラリアの根絶を目指して―

講師:一盛和世さん(長崎大学客員教授、元WHOフィラリア症対策統括官)
日時: 2018 年10 月10 日(水曜日)午後6:30〜8:30
場所:日本プレスセンタービル8階 特別会議室(東京都千代田区内幸町2-2-1)

リンパ系フィラリア症は、熱帯・亜熱帯地域に広がる寄生虫病である。日本でも平安時代から蔓延し、西郷隆盛もかかったと言われる。集団検診と駆虫薬の普及で日本では1970年代になくなり、人々の記憶からも消えていった。だが、熱帯ではいまも猛威を振るう。「象皮症」という異名からもわかるように外見が大きく変わり、患者はしばしば差別の対象となる。命は奪わないものの人生の質を低下させる病気だ。これの根絶が目前に迫っている。日本のやり方を世界に広めてきたからだ。その最前線で奮闘してきた一盛和世さんに、フィラリア制圧をめぐる国際・国内状況を語ってもらう。

〈参考〉WEBRONZA記事「西郷隆盛がかかった寄生虫病フィラリアは根絶目前」
(http://webronza.asahi.com/science/articles/2018022100001.html)

一盛和世(いちもり・かずよ)さん
 玉川大学で昆虫を学び、東京大学医科学研究所で蚊の研究から熱帯病研究へ。ロンドン大学衛生熱帯医学校で博士号取得した後、日本の国際協力機構(JICA)の専門家としてガテマラ、ケニア、タンザニアで熱帯病対策に取り組む。1992年に世界保健機関(WHO)にフィラリア症の専門家として就職。サモアに約3年、バヌアツ6年、フィジー6年と太平洋地域をめぐり、2006年からはWHO本部でフィラリア症対策統括官を2013年の定年まで務めた。2014年から長崎大に移り、熱帯病研究と対策のライフワークを続ける。


2018年 9月月例会のご案内

災害時、初動対応はどうするか~警戒・避難対策、救助活動~
 ―広島で連続した豪雨災害から考える―

講師:室田哲男氏(危機管理行政専門家、元広島市副市長)
日時:2018年9月21日(金曜日) 午後6:30〜8:30
場所: 東京理科大学 数学体験館「数学授業アーカイブス 兼 サロン」
   (東京都新宿区神楽坂1−3 東京理科大学 近代科学資料館 地下1階)

 西日本豪雨では、改めて豪雨による土石流や洪水の被害への対策のあり方が問われました。国、自治体がリスクをいかに予測、警戒し、住民に適切な避難の指示を出せるか。また救助はどのように行われるか。特に108人の死者を出した広島県では、4年前にも広島市で土砂災害(死者77人)があり、同市ではその教訓を基に避難勧告の発令基準などを見直していました。今回、その成果がどうあったか。

 当時、広島市の副市長として、その警戒・避難対策の改善に当たった室田氏をお招きし、近年、広島で発生した災害とその対応を振り返りながら、今後の防災の在り方を考える機会とします。私たち警戒・避難の情報を発信する役割を担うメディアとしても、講師との意見交換の時間を十分に取る勉強会を兼ねた月例会にしたいと考えます。

室田哲男(むろた・てつお)さん
 昭和59年、東工大大学院修了後、自治省入省。総務省地域政策課長、消防庁国民保護・防災部長などを歴任。東日本大震災をはじめとする大災害の応急対策に従事。平成26年広島豪雨災害では消防庁災害対策本部の参謀班長として、被害情報の収集、緊急消防援助隊のオペレーションなどを担った。その後、広島市副市長として警戒・避難システムの見直しを総括。オバマ米大統領来訪時の危機対応も携わった。現在、明治大学大学院ガバナンス研究科兼任講師。著書に「自治体の災害初動対応―近年の災害対応の教訓を活かす」など。


2018年 7月月例会のご案内

日本に調査報道NPO は根付くのか ―ワセダクロニクルの挑戦―

講師: 渡辺 周さん(ワセダクロニクル編集長)
日時: 2018 年7 月27 日(金曜日)午後6:30〜8:30
場所: 東京理科大学 数学体験館「数学授業アーカイブス 兼 サロン」
(東京都新宿区神楽坂1−3 東京理科大学 近代科学資料館 地下1階)

日本で初めての、大学を拠点にした調査報道NPO法人「ワセダクロニクル」は、既存のメディアが取り上げない、あるいは取り上げることができない重要問題を、足で稼いだ調査報道を通じて世に問う新しいネットメディアです。
2017 年2 月の発足以来すでに、製薬企業のカネで薬の良さを強調する記事が配信されていた実態を描いたシリーズ「買われた記事」や、旧優生保護法による人権侵害の実態を告発したシリーズ「強制不妊」等で成果をあげていますが、読者からの寄付金のみで運営する報道機関というビジネスモデルが、寄付文化が希薄とされる日本で根付くのか、その点についても大きな注目を集めています。スタートから激動の1年半について、編集長自身に語ってもらいます。

ゲスト:渡辺 周(わたなべ・まこと)さん
略 歴: 1974 年神奈川県生まれ。大阪府立生野高校、早稲田大学政治経済学部を卒業後、日本テレビに入社。2000 年から朝日新聞記者。特別報道部などで調査報道を担当。高野山真言宗の資金運用や製薬会社の医師への資金提供の実態などを報じたほか、原発事故後の長期連載「プロメテウスの罠」取材チームの主要メンバーとして、高レベル核廃棄物のテーマにした「地底をねらえ」などを執筆。2016 年3 月に退社後、ワセダクロニクル編集長。


2018年 6月月例会のご案内

==福島原発事故再検証委員会 活動報告==

日 時: 2018年6月27日(水)18:30〜20:30
場 所: プレスセンタービル8階 特別会議室
(東京都千代田区内幸町2-2-1)
講演者: 再検証委員会※(代表 林勝彦)

※JASTJ・福島原発事故再検証委員会
(柴田鉄治、林勝彦、高木靱生、大江秀房、荒川文生、中道徹、倉又茂、伊藤隆太郎、西野博喜)

2011年3月11日に起きた福島第一原発の過酷事故から7年。いまなお多くの人々が故郷に帰れず事故の傷跡が大きく残る中で、原発再稼働が着々と進んでいる。しかし過酷事故に至った原因の解明や責任の所在、新規制基準で安全は本当に担保されたのか、過酷事故時の避難計画は十分かなど、今なお多くの議論が残されている。

そこで昨年4月、「日本はこのままで大丈夫か」という問題意識を持つ会員が集まって「福島原発事故再検証委員会」を立ち上げた。JASTJ会員有志は3.11直後に政府、国会、民間、東京電力の各事故調報告書を比較検証したが、その第二弾として各事故調の元委員長らが3.11後の政府の対応や日本の現状をどうみているか、インタビューをして再検証を試みた。政府、国会、民間の3事故調からは快諾を得られたが、東京電力には断られた。ようやくHP上に公開する各事故調のインタビュー映像(各20分程度に編集)と原稿がまとまったので、その作品を紹介する。あわせて参加した会員の感想などを報告する。


2018年 4月月例会のご案内

「仮想通貨がもたらすもの」~技術的・経済的到達点と課題~

日時:2018年4月12日(木)午後 6:30〜8:30
場所:日本プレスセンタービル8階 特別会議室
 (東京都千代田区内幸町2-2-1)

仮想通貨の代表格となったビットコインは、「公開鍵暗号方式による電子署名通信」「P2P型ネットワーク」「ブロックチェーンによる取引履歴の共有」「ハッシュ関数を利用した報酬制度(マイニング=採掘)」といったさまざまな技術が組み合わさり、なりすましによる詐欺や外部からの攻撃に対して極めて強固なシステムに進化した。その結果、信用が高まるにともない利用者が増加。流通総額は一時時価30兆円を突破し、決済手段としての役割も拡大している。

こうした仮想通貨の関連技術を金融全般に応用する動きは「FinTech」と呼ばれ、国内外の銀行や証券会社、中央銀行が研究や応用に取り組んでいる。さらには登記簿や個人の医療記録、音楽や映像ソフトの流通など、金融以外のさまざまな分野でも応用が期待されている。

一方で仮想通貨は、本年1月のコインチェックNEM流出事件、2014年のマウントゴックス破綻事件、最近の激しい価格の乱高下など、リスクもはらんでいる。

貨幣の発明は人類史上の大発明だったとも言われるが、インターネット空間で流通する仮想通貨の登場はどのような意味を持つものなのか。仮想通貨とは一体何か?今までの通貨とどこが違うのか?

そのメリットと課題を整理し、今後の可能性について、第一線の研究者に解説をしていただく。

岩村 充(いわむら・みつる)さん
早稲田大学大学院経営管理研究科教授
略歴
 1974 年東京大学経済学部卒業。日本銀行に入行し、主として金融制度全般の企画調整を担当。ニューヨーク駐在員、日本公社債研究所開発室長、金融研究所研究第2課長などを経て、98年から早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授。2016年から現職。国際会計基準委員会委員や政府の各種委員会の座長や委員を務めてきた。博士(早稲田大学)。 著書「中央銀行が終わる日: ビットコインと通貨の未来」(新潮選書)。


2018年 3月月例会のご案内

”原発裁判”を語る

日時:2018年3月22日(木)午後 6:30〜8:30
講師:河合弘之(弁護士、さくら共同法律事務所所長)
場所:東京理科大学 数学体験館「数学授業アーカイブス 兼 サロン」
 (東京都新宿区神楽坂1−3 東京理科大学 近代科学資料館 地下1階)

福島第一原発過酷事故は、21世紀の科学事故として歴史に残る事象でした。それから7年、サイト内の環境は整備され、政府による避難指示は、一部を残し次々に解除されました。しかし、今も故郷に帰れない人はおよそ少なくとも5万人。帰還率は例外的に田村町の80%と高率の地区もありますが、高い所でも20~30%程で、飯舘村は10%弱、浪江町は3%%程と低い数字にとどまっています。そのような状況の中、飯舘村の半数の住民や、浪江町が住民の代理として損害賠償を求めたり、20ミリシーベルト撤回訴訟などで係争中の事案が30件、また、全国の原発について差し止め裁判も30件程あり、原発裁判が進行中です。3月の例会では、あまり知られていない原発裁判の現状について河合弁護士に全体の動向を俯瞰して、主な裁判で今何が争点になっているのか客観的に語ってもらいます。

河合弘之(かわい・ひろゆき)さん 略歴
 1944年旧満州生まれ。1968年東京大学法学に卒業。1970年弁護士登録。さくら共同法律事務所所長。
 企業弁護士として、敏腕を振るう一方で、中国残留孤児の国籍取得、フィリピン残留日本人戸籍取得にも尽力。浜岡原発、大間原発の差止め訴訟の代表を務める。3・11以降、脱原発弁護団全国連絡会の共同代表として、各地の原発差止訴訟をリードしている。また、映画監督として「日本と原発」「日本と原発 4年後」「日本と再生」発表し、全国で上映会が開催されている。


2018年 2月月例会のご案内

獣医学問題の本質

日時:2018年2月27日(火)午後 6:30〜8:30
講師:林良博(国立科学博物館長、獣医師)
場所:日本プレスセンター8階 会議室 (東京都千代田区内幸町2-2-1)

「総理のご意向」問題から発展した加計学園問題は、日本の獣医学をめぐる論争に火をつけ、結果として、その現状と課題を浮き彫りにしました。行政の経過を明示することは政府の責任ですが、一方で、獣医師は本当に不足しているのか、そもそも「動物のお医者さん」以外の獣医学専門家は、いったいどこに、どのくらいいるのか、そうした現場を避けようとする獣医師が多いのはなぜか……そんな基本的な問いに応える報道に、なかなか行き当たりません。ワイ ドショー化した日本の新聞・テレビ報道が伝えてくれない“獣医学専門家”問題の本質を語ってほしいとのお願いに、林良博・国立科学博物館長が応じてくださいました。

 林さんご自身が獣医学専攻であり、その広い視点から、自然科学教育問題以外にも、人類史の科学的検証、国際捕鯨委員会(IWC)をめぐる対立、野生生物管理問題、ペットとの付き合い方まで、多様な領域で、思慮に富んだ方向性と価値観を示されています。

経歴:1946年広島県生まれ。東京大学農学部卒、解剖学者。ハーバード大学客員研究員、コーネル大学客員助教授などを経て、東京大学教授、同総合研究博物館長、同副学長などを歴任、2013年から国立科学博物館長。国際捕鯨委員会(IWC)技術委員会委員、世界保健機構(WHO)アドバイザー、世界獣医解剖学会副会長。著書に『ふるさと資源の再発見』『ヒトと動物』『検証アニマルセラピー』など。


2018年 1月新年会と世界会議報告会のお知らせ

日時:2018年1月15日(月)18:30-21:00
場所:日本プレスセンタービル8階 特別会議室 (東京都千代田区内幸町2-2-1)

JASTJでは、来年2018年の最初の行事として1月15日(月)に、会員が一年の活動の予定や抱負を語り合う「新年会」を開きます。2017年10月にサンフランシスコで開催された科学ジャーナリスト世界会議の報告会も兼ね、世界会議の参加者がそれぞれの視点で集めた情報や感じたことをお伝えし、懇親しながら会員間の交流を深めたいと思います。新会員の皆様もぜひ気軽にお越しください。当日はささやかなお土産のプレゼントなど、楽しい企画も用意しています。どうぞふるってご参加ください。


2017年 12月見学会と交流会のお知らせ

国立天文台「ふたご座流星群」観測と交流会のお知らせ

日時:12月14日(木)15:00-21:00
場所:国立天文台(三鷹市大沢2-21-1)

JASTJでは、来る12月14日(木)に、国立天文台(三鷹)で「ふたご座流星群の観測会」+「天文科学講演会」+「交流会」を開催することになりました。ふたご座流星群は流星数が多く、じぶんぎ座流星群(1月)、ペルセウス座流星群(8月)とともに「3大流星群」のひとつで、今年は12月14日に活動が極大となります。国立天文台を訪問し、最近の宇宙研究の最前線のお話を伺うとともに、流星群を楽しみ、大いに交流を深めたいと思います。こぞってご参加ください。


2017年 11月月例会のご案内

宇宙に挑む民間ロケットベンチャー ~商業打ち上げ時代の到来はいつか?~

日時:2017年11月 8日(水) 午後6時30分~8時30分
講師:稲川貴大さん(インターステラテクノロジズ社長)
場所:日本プレスセンター8階 会議室 (東京都千代田区内幸町2-2-1)

国家事業から民間ビジネスへ−−−。宇宙開発のあり方が世界で変わりつつある。火星への有人飛行を目標に掲げる米国のスペースXや米グーグルが主宰する月探査レースなど、海外で熱を帯びる民間企業による宇宙への挑戦の中で、日本国内で初めて、民間企業の力だけで商業宇宙ロケットの開発を目指すのが、インターステラテクノロジズ(北海道大樹町)だ。堀江貴文氏が出資し、無類のロケット好きな技術者たちが集結した社員10数人のベンチャー企業である。

今年7月に小型ロケット「MOMO」を高度100キロ超の宇宙空間に目がけて打ち上げた。エンジンは順調に機能したものの通信機器のトラブルから飛行途中でロケットを落下させざるをえなかった。この経験を踏まえ、次回の打ち上げの成功を期すインターステラテクノロジズの稲川貴大さんに民間ロケット開発の背景やロケット打ち上げビジネスの将来展望についてお話をうかがう。

稲川貴大さん経歴:1987年生まれ。東京工業大学大学院修了(機械物理工学)。 大手製造業の内定を辞退して2013年にインターステラテクノロジズ社に入社。2014年から現職。30歳。


2017年 10月月例会のご案内

学術クラウドファンディング・アカデミストの活動

日時:2017年10月 4日(水) 午後6時30分~8時30分
講師:柴藤亮介(しばとう・りょうすけ)さん
場所:日本プレスセンター8階 会議室

社会の多様な世代に、ネットを通して広範に、財政援助を含む活動支援を求める“クラウド ファンディング”はここ数年、世界的な広がりを見せ、また成果も伝えられています。

10 月の月例会では、日本で初めて、研究費獲得に特化したクラウドファンディング・プラッ トフォーム「アカデミスト」を立ち上げた柴藤亮介さんをお招きし、成果と課題、これからの 展開について、お話ししていただきます。

当日は、国立天文台・普及室長の縣秀彦さんにも登場いただき、また、高エネルギー加速器 研究機構(KEK)での最近の成功例などもご紹介できる予定です。それぞれのクラウドファン ディングの現状を俯瞰しながら、このあらたな社会支援プラットフォームをめぐる討論を進め たいと思います。

柴藤亮介(しばとう・りょうすけ)さん経歴:エデュケーショナル・デザイン株式会社の代 表取締役。
2014年4月に研究費獲得のためのクラウドファンディングのサイト「academist」 を設立。 首都大学東京大学院 理工学研究科物理学専攻博士後期課程単位取得退学。 専門は原子核理論、量子多体物理。


2017年 9月月例会のご案内

原発の活断層評価のどこが問題か ―原子力規制委員会の地震想定を問い直す―

日時:2017年9月20日(水) 午後6時30分~8時30分
講師:島崎邦彦さん(東京大学名誉教授)
場所:東京理科大学 数学体験館「数学授業アーカイブス 兼 サロン」
(東京都新宿区神楽坂1-3 東京理科大学 近代科学資料館 地下1階)

原子力規制委員会の委員長代理を務めた島崎邦彦さんは、規制委員会の地震想定を「過小評価」と指摘、原子力発電所の安全審査が「再稼動ありき」に陥っているとみる。委員長代理を退いてから規制委にこの問題を提起したが、規制委は姿勢を変えなかった。島崎さんは再稼動の差し止めを求める訴訟でも証言し地震想定を見直す必要があると主張している。

原発の地震想定はどのように決められるのか?なぜ想定をめぐって見方が分かれるのか?専門的で一般の人にとって理解しにくい問題だが、国民にとって極めて大事な論争について、地震研究の第一人者で、実際に安全審査に携わった島崎さんに解説していただく。

著島崎邦彦さん書:著書・共著に「あした起きてもおかしくない大地震」(集英社)、「活断層とは何か」(東京大学出版会)、「地震防災の事典」(朝倉書店)、「新編 日本の活断層」(東京大学出版会)ほか


2017年 7月月例会のご案内

軍事的安全保障研究に関する学術会議声明―議論されたこと、されなかったこと

日時:2017年7月13日(木) 午後6時30分~8時30分
講師:甲南大学 教授 井野瀬久美恵さん
場所:東京理科大学 数学体験館「数学授業アーカイブス 兼 サロン」
(東京都新宿区神楽坂1-3 東京理科大学 近代科学資料館 地下1階)

日本学術会議は4月、ほぼ1年間の議論を経て、軍事的安全保障研究に関する声明を発表しました。学術会議は1950年と67年にも声明を出し「戦争を目的とする研究は行わない」としていました。今回の声明は過去2回の声明を継承したうえで、大学等に「軍事的安全保障研究とみなされる可能性のある研究」について、その適切性を技術や倫理面から審査する制度を設けるよう促しています。

防衛装備庁が新設した安全保障研究への助成制度は学問の自由や大学の自律性を確保する上で問題をはらんでいます。他方、大学で取り組まれている基礎研究が日本の安全保障に役立つとの指摘もあります。

日本学術会議副会長を務める井野瀬久美恵さんから学術会議の議論についてお話を伺います。井野瀬さんは歴史学者(西洋史)であり、歴史研究者の目から、学術会議で何が話し合われ何が話し合われなかったのかを分析し、検討プロセスで観られたことを率直にお話しいただきます。井野瀬さんが考えるこれからの学術会議のあり方や「科学と社会の新しい関係」についても話題が広がることが期待されます。

井野瀬久美恵さん著書:『植民地経験のゆくえ—アリス・グリーンのサロンと世紀転換期の大英帝国』(第19回女性史・青山なを賞受賞)人文書院 2004年 ほか。


2017年 6月月例会のご案内

原発コストと事故処理負担金を語る

日時:2017年6月9日(金) 午後6時30分~8時30分
講師:龍谷大学 政策学部 教授 大島堅一さん
場所:東京理科大学 数学体験館「数学授業アーカイブス 兼 サロン」
(東京都新宿区神楽坂1-3 東京理科大学 近代科学資料館 地下1階)

6月の月例会では原発コスト問題に20年ほど一貫して取組んで来られた大島堅一さんを迎えてお話を伺います。

原発にかかるコスト問題は、今後のエネルギー計画を考えるうえで、大変重要な論点です。

じつは、福島原発事故以前、原発コストは5.3円/kWhと計算され、他の電源に比べ最も安いため、原発推進の大きな根拠となっていました。しかし3・11以後、事故にかかわる経費を含めると、実に2倍以上の11〜12円/kWhになるということがわかり、また、福島廃炉の必要経費を電気料金に上乗せすることも論点として議論されています。今後、私たちは、原発を推進するべきなのでしょうか?あるいは、電力自由化を通じ電力の自由な選択に大きく舵を切るべきなのでしょうか? 日本のエネルギー政策の方向性が強く問われているのです。

今回の月例会では、私たちの未来を左右する原発の問題を、コスト面から捉え、大島教授とともに考えてみたいと思います。

大島堅一さん著書:『原発のコスト─エネルギー転換への視点』岩波書店 2011年 ほか


2017年 4月月例会のご案内

超小型衛星が切り開く世界

日時:2017年4月11日(火)午後6時30分~8時30分
講師:中須賀真一さん(東京大学 大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻 教授)
場所:東京理科大学 数学体験館「数学授業アーカイブス 兼 サロン」
 (東京都新宿区神楽坂1-3 東京理科大学 近代科学資料館 地下1階)

超小型衛星に注目が集まっています。超小型衛星は従来の大型衛星に比べ、民生品を使い、格段に安価、短期間で製作できるばかりでなく、宇宙開発の状況を大きく変化させる可能性があります。超小型衛星は、企業や組織や途上国が単一目的のために打ち上げるいわゆる「マイ衛星」で、農作物の生育調査や、資源探査、環境観測など、幅広い宇宙利用が可能。国際的にも熾烈な競争が始まっています。超小型衛星は、いままで「宇宙村」といわれてきた宇宙開発の敷居を下げ、宇宙産業のすそ野を広げ、産業界にもダイナミックな影響を与える一方で、宇宙ゴミへの対応など、解決すべき課題も多くあります。日本の超小型衛星開発を、リードし続けている中須賀さんに、超小型衛星開発の可能性と今後の課題をうかがいます。

中須賀真一(なかすか・しんいち)さん略歴:
1961年、大阪府生まれ。83年に東京大学工学部航空学科卒業。88年に同大学院博士課程修了。その後、コンピュータメーカーに就職し、人工知能や自動化工場に関する研究を行う。90年に東京大学に戻り、航空学科講師、同大学先端科学技術研究センター助教授、アメリカでの客員研究員を経て、2004年に東京大学航空宇宙工学専攻教授に就任。専門分野は宇宙工学と知能工学。

著書:『宇宙ステーション入門』(東京大学出版会)2002/2008、『国家としての宇宙戦略論』(誠文堂新光社)2006、『図説 50年後の日本―たとえば「空中を飛ぶクルマ」が実現!』(三笠書房)2006。


2017年 3月月例会のご案内

自動運転がもたらすもの

日時:2017年3月23日(木) 午後6時30分~8時30分
講師:国際モータージャーナリスト 清水和夫さん
場所:東京理科大学 数学体験館「数学授業アーカイブス 兼 サロン」
(東京都新宿区神楽坂1-3 東京理科大学 近代科学資料館 地下1階)

自動運転をめぐる動きが急速に進展しています。アメリカではグーグルなどIT企業が、一気に完全自動運転を実現する戦略を打ち出し、日本のトヨタなど自動車メーカーは、従来の運転支援技術を進化させながら実現する方針です。しかし、完全自動運転の実現には、事故の軽減や環境問題への貢献など、社会的意義は大きいものの、課題も山積しており、そうたやすい道のりではありません。課題の一つに、自動運転のシステムと人間との関係があります。ドライバーが運転する自動車と自動運転車が混在したとき、道路上の交通の制御はうまくいくのか? 事故責任はどうなるのか? レベル3の自動運転での権限委譲(運転のバトンタッチ)はどうなるのか? などなど多くの課題が横たわっています。

そこで今回の月例会では、国際的視点で自動運転の現状を取材されている清水和夫さんに、自動運転開発の最先端の状況と今後の課題についてうかがいます。

清水和夫(しみず・かずお)さん 略歴:
国際モータージャーナリスト。プロのレースドライバーとして、国内外の耐久レースで活躍する一方、自動車ジャーナリストとして、自動車の運動理論、安全、環境、ITS、産業論に精通し、幅広い活動を展開中。政府の委員も多くつとめている。

著書:『クルマ安全学のすすめ』(日本放送出版協会)、『ITSの思想』(日本放送出版協会)『ディーゼルこそが、地球を救う』(ダイヤモンド社)、『燃料電池とは何か』(日本放送出版協会)他多数。


2017年 2月月例会のご案内

オプジーボの光と影〜高額医薬品をどこまで社会は許容できるか

日時:2017年2月6日(月) 午後7時~9時
講師:川口恭氏(ロハス・メディカル編集発行人)
場所:日本プレスセンタービル 8階特別会議室
 (東京都千代田区内幸町2−2−1)

これまでの抗がん剤とは異なる仕組みで抗がん効果を発揮する「免疫チェックポイント阻害剤」が社会的に大きな関心を呼んでいる。2015年に肺がんへの使用が承認された「オプジーボ」はその効果の大きさもさることながら、年間3000万円を超えるとされる高額の薬代が巨大な医療費負担をもたらし国民皆保険制度を揺るがしかねないと指摘された。政府は昨年11月に急きょオプジーボの薬価を半分の引き下げる異例の決定をした。

オプジーボがあぶり出したのは、新薬の高額化が社会の許容限界を超えつつあるという研究開発の問題にとどまらない。日本の薬価決定ルールの不備、薬をより効果的に使用するために欠かせない発売後の臨床試験の遅れなど、医療・医学界が抱える構造的問題を浮かび上がらせた。今後、増えていく高額な新薬を国民皆保険制度とどう調和させ多くの国民が恩恵を受けられるようにしていくか。医療行政が問われている。

自身が発行する医療月刊誌で「オプジーボの光と影」と題する連載して問題を指摘し続けてきた川口恭さんに話を聞く。

川口恭(かわぐち・やすし)さん 略歴:
京都大学理学部卒業後に朝日新聞入社。東京や福岡などで記者として勤務し、2001年に若者向け週刊新聞「seven」創刊、02年には土曜版「be」の創刊に参加。04年に退社し、翌年に医療月刊誌「ロハス・メディカル」を創刊。ロハス(LOHAS)は、Lifestyles Of Health And Sustainability(健康で持続可能な生活スタイル)の頭文字に由来する。一般社団法人保険者サポーター機構理事、横浜市立大学医学部非常勤講師を務める。


2016年 12月月例会のご案内

日本版NIHは実現するのか-日本医療研究開発機構(AMED)設立1年半-

日時:2016年12月15日(木)午後7時~9時
講師:末松 誠 さん (国立研究開発法人日本医療研究開発機構 理事長)
場所:東京理科大学 数学体験館「数学授業アーカイブス 兼 サロン」
 (東京都新宿区神楽坂1-3 東京理科大学 近代科学資料館 地下1階)

医療を総括的な視点でとらえ、育成する「NIH的な組織」が、ついに日本に誕生しました。

日本には、これまでは、基礎研究と人材育成を担う文部科学省、産業育成を担う経済産業省、安心安全な医療と規制を担う厚生労働省の3省が縦割りで独自に医療研究開発を実施しきたため、これを一元化していく仕組みが整っていませんでした。AMEDは、この縦割りの体制を打破し、研究の進捗に悪影響を及ぼしてきた研究費の使用ルールにもメスを入れ、基礎から臨床にいたる研究が円滑に進むようにと、2015年4月に設立されました。

AMEDは、「少疾患・未診断疾患イニシアチブ(IRUD)」やAYA世代(思春期および若年成人)のがんの本態解明と治療法の開発、アフリカにおける顧みられない熱帯病(NTDs)対策のための国際共同研究などが進められています。

AMED初代理事長に就任した末松誠氏に、AMEDの現状、今後の展望と課題について語って頂きます。


2016年 11月月例会のご案内

北極海にどう向き合うか

日時:2016年11月2日(水) 午後7時00分~9時00分
講師:東京大学大学院教授 山口一さん
場所:日本プレスセンタービル 8階特別会議室 (東京都千代田区内幸町2-2-1)

地球温暖化の進行で、北極海の氷が縮小を続けています。周辺の生態系の変化や周辺住民への影響だけでなく、地球全体の気候を不安定にさせる深刻な事態です。さらに最近、新たに姿を現した北極航路を巡る、各国の駆け引きが活発化する状況も生まれてきました。北極海には世界の3分の1もの化石燃料があるため、今後の世界のエネルギー問題、地球環境問題を大きく左右するだろうともいわれています。

北極海で何が起きているのか? どう向き合えばいいのか?

北極研究の第一人者に、最新情報と今後の課題を伺います。

山口一氏の経歴
1978年 3月 東京大学工学部船舶工学科卒業
1983年 3月 東京大学大学院工学系研究科船舶工学博士課程修了(工学博士)
1983年 4月 東京大学工学部講師
1985年10月 東京大学工学部助教授
2000年 2月 東京大学大学院工学系研究科教授を経て2008年4月より現職


2016年 10月月例会のご案内

自然エネルギーの国際動向最前線

日時:2016年10月20日(木) 午後6時30分~8時30分
講師:大野輝之 公益財団法人自然エネルギー財団常務理事
場所:東京理科大学 数学体験館「数学授業アーカイブス 兼 サロン」
(東京都新宿区神楽坂1−3 東京理科大学 近代科学資料館 地下1階) 

日本は自然エネルギー後進国と言われています。中国、アメリカ、ヨーロッパの先進国に、現在、大きく水を開けられている為です。

日本のエネルギー電源構成の国家目標は、14年後の2030年時点で、原子力発電をベースロード電源に据えて20~22% 、自然エネルギーは22~24%にするとしています。しかしこの数字は、世界の現状から見ると、時代遅れとの批判も多くあります。

2014年、世界の再生可能エネルギーの発電量に占める割合はすでに、22.8%に上昇。2015年、ドイツの再生可能エネルギーが全発電量に占める割合は、32.5%に達し、特に、風力発電量は5割り増しの成長をとげています。スウェーデンでは最終エネルギー消費に占める自然エネルギーの割合が、2020年目標値の49%をすでに超え、53.5%に達しています。他に、デンマーク、ポルトガル、クロアチアでも50%を超え、原発ゼロの国、IAEA本部があるオーストリアでは、実に66%と最高記録を作っています。人口135万人の大都市、ミュンヘンでも、2025年迄に100%自然エネルギーで賄う計画を立てています。

しかし一方、「ドイツはずるい。電力不足時には、原発大国のフランスから電力を買っている」との批判もあります。この批判をどのように受け止めればいいのでしょうか?

10月の月例会では、公益財団・自然エネルギー財団の常務理事、大野輝之氏をお招きし、国際的視点から日本と世界の再生可能エネルギーの最先端情報を伺いたいと思います。

大野輝之氏の経歴
1953年 神奈川県生まれ
1978年 東京大学経済学部卒業
1979年 東京都庁入庁後、都市計画局などを経て
1999年〜環境局局長 「ディーゼル車NO作戦」「キャップ&トレード制度」導入などを牽引 2013年 都庁を退庁し、現在に至る
・著書『自治体のエネルギー戦略〜アメリカと東京』(岩波新書/従来2013年)


2016年 9月月例会のご案内

石綿健康被害救済法から10年 〜最悪の産業災害の今を問う

日時:2016年9月27日(火)19:00~21:00
講師:加藤正文・神戸新聞東京本社編集部長兼論説委員
場所:日本プレスセンタービル 8階特別会議室
(東京都千代田区内幸町2-2-1)

2005年に兵庫県尼崎市のクボタ旧神崎工場の内外で深刻な石綿(アスベスト)健康被害が発覚し日本国中を震撼させた。世に言う「クボタショック」である。政府は06年に石綿使用を禁止、健康被害救済法を施行した。それから10年。どこで吸ったか分からないまま病気になり、同救済法で認定された人は累計1万1千人。一方、労働災害を認定される人は毎年1千人を超え、この10年で累計1万1千人。労災と公害でこの10年で2万2千人を上回る犠牲者が出ている。発症まで時間がかかり、いつどこで石綿を吸ったかわからないまま病気になる人が多い。21年前の阪神・淡路大震災、5年前の東日本大震災後の復旧作業でも対策が後手に回った恐れが指摘される。

「奇跡の鉱物」としてもてはやされた石綿。実は早い時期にその有害性がわかっていながら、国は適切な規制を怠った。社会の至る所に埋め込まれた石綿が「時限爆弾」のように私たち自身を苦しめる。その惨禍はまだ始まったばかりとも言える。

【講師略歴】
加藤正文さん:兵庫県西宮市出身。大阪市立大学卒業後に神戸新聞入社。経済部や阪神総局などに勤務し、アスベスト健康被害に関し、2005年の「クボタショック」以来、積極的に報道を続ける。2015年に『死の棘・アスベスト 作家はなぜ死んだのか』(中央公論新社)で科学ジャーナリスト賞受賞。岩波書店『世界』2016年6月号にアスベスト健康被害の現状を紹介する「石綿汚染列島」を寄稿、神戸新聞のコラム「論ひょうご」などで執筆活動を展開する。


2016年 8月月例会のご案内

お化け屋敷プロデューサーが見た人間の心

日時:2016年9月1日(木) 18:30分~21:00
    18:30 見学者集合:お化け屋敷見学(各自支払1030円:所要時間10分)
    18:50 全員集合(お化け屋敷出口)→移動         
    19:00 会議室で月例会(1時間の講演+1時間のQA)
講師:お化け屋敷プロデューサー五味弘文さん
場所:東京ドームシティアトラクションゲートの上のフロア(2F)のお化け屋敷(入口出口併設)。(白山通り沿い壱岐坂交差点そば)
   お化け屋敷見学の後、すぐそばの会議室で月例会開催。
定員:20名。会議室が小さいため、参加者の数を先着20名程度とさせていただきます。

お化け屋敷は、かつて「こんにゃく」「お墓」「線香」といった定番が並ぶ単純な見世物小屋でした。しかし、現代のお化け屋敷は、近代的装置や演出を駆使した「体験エンターティンメント」に大きく進化してきました。  五味弘文さんは、日本でただ一人のお化け屋敷プロデューサー。お化け屋敷に「ストーリー性」を導入し、新しい恐怖体験を創り上げ注目されている人物です。「ヒトはなぜ怖がるのか?」「恐怖がなぜエンターティンメントになるのか?」「人間の心の仕組みとは?」・・・お化け屋敷はまさに人間の心に向き合う実験場でもあります。五味さんが25年の経験を通じて体感してきた「お化け屋敷つくりの秘訣」「人間の心の不思議」について伺いたいと思います。

五味弘文さん紹介
略歴:
長野県茅野市生まれ。立教大学法学部在学中より演劇活動を始め、卒業後に劇団を結成。主宰・作・演出を務める。下北沢ザ・スズナリ、渋谷ジァン・ジァンなどでの公演を経て、1992年解散。同年、『麿赤児のパノラマ怪奇館』で初めてお化け屋敷のプロデュースを手がけ、大ヒットさせる。1996年の『パノラマ怪奇館’96~赤ん坊地獄』ではストーリー性を導入したお化け屋敷を制作する。
 東京ドームシティアトラクションズ(旧称後楽園ゆうえんち)を拠点として長年活動してきたが、2011年に広島で開催された紙屋町お化け屋敷「恐怖のおるすばん」を皮切りに、お化け屋敷プロデュースの全国展開を始める。近年では大学などでの講義活動も行う。

おもな著作:
•『人はなぜ恐怖するのか?(ナレッジエンタ読本19) 』(2009年6月、メディアファクトリー)
•『お化け屋敷に なぜ人は並ぶのかー「恐怖」で集客するビジネスの企画発想(角川Oneテーマ21) 』(2012年6月、角川書店)
•『日経ビジネスアソシエ13年7月号』(2013年6月、日経BP社)
•『ホラー小説「憑き歯〜密七号の家〜」』(2013年7月、幻冬舎文庫)


2016年 7月月例会のご案内

水素水問題を考える-科学とメディア、そしてビジネス

日時: 2016年7月19日(火) 午後6:30〜8:30
講師: 唐木英明氏(公益財団法人 食の安全・安心財団理事長)
場所: 日本プレスセンタービル 8階 特別会議室(千代田区内幸町2-2-1)

「水素水」が話題になっています。水素が活性酸素を消去することから、水素水には疾病治療効果が期待されるとして、水素水の利用を奨励しているクリニックなどもあります。患者を使った小規模な治療実験が行われ、効果ありとする結果も得られており、健康食品としての水素水の売り上げも伸びているといいます。一方、国立健康・栄養研究所は、「健康食品」の素材情報データベースに「水素水」を新たに付け加え、人への有効性について「信頼できるデータがない」と記述しています。水素水問題について議論しようとしても、健康な人を対象とした試験が行われていないのが現状です。

水素水に限らず、ダイオキシン・環境ホルモン問題、あるいはゲノム編集技術など、多くの人が不安に思ったり誤解をしかねない問題は他にもあります。水素水問題をひとつの切り口として、科学とメディア、そしてビジネスのあり方についてともに考える機会にしたいと思います。


2016年 6月月例会のご案内

土砂災害の防災対策と住民避難

日時:2016年6月21日(火)18時30分〜20時30分
講師:池谷浩氏(一般財団法人砂防・地すべり技術センター研究顧問)
場所:JASTJ事務局(新宿区神楽坂1-3 東京理科大学内 1号館 13階 )

近年、防災面で重視されてきたのが土砂災害です。発生の予測が難しいとされている土石流災害ですが、最近の気候変動による豪雨の影響や、この5月からの熊本地震に見られるように、地震や火山活動に伴う土砂災害への対応も大きな課題になってきています。

講師の池谷浩氏は土砂流被害の第一人者です。熊本地震の発生直後にテレビで解説、また一昨年8月の広島土砂災害の教訓を受けて、中央防災会議で対策をとりまとめ、提言しています。6月はちょうど梅雨時で土砂災害が起きやすい時期。さまざまなタイプがある土砂災害の現状と改めて知り、今後の防災や避難のあり方についてうかがいます。

【プロフィール】
池谷浩(いけや・ひろし)氏:京都大学農学部卒業後、旧建設省(現 国土交通省)入省。砂防部火山・土石流対策官、砂防部砂防課長、部長を歴任。砂防研究の第一人者として、新潟県中越地震や福岡県西方沖地震などの地震災害や、コロンビアのネバドデルルイス火山災害など、世界各地の災害調査・研究・分析を行う。著書は『土石流災害』(岩波新書)、『火山災害』(中公新書)、『砂防入門』(山海堂)など。


2016年 4月月例会のご案内

小児甲状腺がん多発は放射線の影響か?

日時: 2016年4月13日(水) 午後6:30〜8:30
講師: 津田敏秀さん(岡山大学大学院環境生命科学研究科 教授)
    津金昌一郎さん(国立がん研究センター 社会と健康研究センター長)
場所: プレスセンタービル9階会見場(東京都千代田区内幸町2-2-1)

福島の38万人の小児甲状腺がん健康調査の結果、現時点で100人を超える子供ががんと確定し手術を受けました。津田教授はその人数が異常多発であり、原因として放射線の影響を否定できないとし、日本特派員協会で警告を発したり、国際環境疫学会の医学専門誌「エピデミオロジー」で論文を発表しています。

一方、福島県や多数の学者は放射線の影響に否定的で、その理由にチェルノブイリの小児甲状腺がん発症のパターンと違う点や過剰診断の影響などを挙げています。

そこで同じ疫学者として各自の見解と相手への疑問、批判をコンパクトに示して頂き60分ほど会員の質問を受ける時間を設けます。


2016年 4月月例会のご案内

私はこう見た東京電力・福島第一原子力発電所の現状

日時:2016年3月24日(木) 午後6時30分から8時30分
発表者 大池淳一さん(JASTJ会員、テレビ朝日)
    山田理恵さん(JASTJ会員、朝日新聞)
会場 東京理科大学 数学体験館の「数学授業アーカイブス 兼 サロン」
住所 東京都新宿区神楽坂 1-3 東京理科大学 近代科学資料館 地下1階

日本科学技術ジャーナリスト会議(JASTJ)では、東京電力・福島第一原発の視察会を2月4日に開催し、21人の会員が参加しました。事故から5年近くが経過し、原発敷地内では防護服を着なくても問題はないとされる場所もできてきました。ただ、爆発した建屋近くはまだまだ高線量で、溶け落ちた核燃料の所在もわかっていません。

例会では、視察に参加しカメラ撮影をしていただいた大池淳一さん(ムービー)、山田理恵さん(スチル)のお二人に撮影された映像を見せていただきながら、視察の印象や視察を通じて考えたことなどをお話しいただきます。

お二人のプレゼンテーションを導入にして、視察に参加された方々も参加されなかった方々も加わっていただき、情報を共有し、原発事故から5年の状況を考えたいと思います。ぜひふるって参加をお願いいたします。


2016年 2月月例会のご案内

MRJとホンダジェットで日本の航空機産業は飛躍できるのか

講師 鈴木真二・東京大学大学院工学系研究科教授
日時 2月5日(金)18時30分〜20時30分
会場 東京理科大学 数学体験館の「数学授業アーカイブス 兼 サロン」
住所 東京都新宿区神楽坂1-3 東京理科大学 近代科学資料館 地下1階

日本の航空機関係者らの夢を載せて、わが国初のジェット旅客機「MRJ」が昨年11月11日に名古屋空港で初飛行に成功した。本田宗一郎の夢だった機体からエンジンまで自社製の「ホンダジェット」も、30年の歳月を経て昨年12月24日、ついに米国の顧客に第1号機の納入を果たした。突如わたしたちの目前に現れたこれらの”日本の翼”の技術的な実力はいかほどのものなのか、そして彼らはその勢いを失いつつある工業立国日本の屋台骨を支えるだけの産業に成長できるのか。航空イノベーションが専門の鈴木真二東大教授から率直な分析、評価、意見を聞きたいと思います。


2015年 12月月例会のご案内

チェルノブイリ原発事故30年を前に ―人体への長期影響を語る―

講師 アナトリー・チュマクさん(ウクライナ放射線医学研究センター副所長)
日時 11月26日(木) 18時~20時
場所 関西学院大学東京丸の内キャンパス(千代田区丸の内1-7-12 サピアタワー 10階)

チェルノブイリ爆発事故から25年目の2011年4月に出た「ウクライナ政府報告書」(ウクライナ国家緊急事態省)の健康影響の章を監修し、ウクライナ放射線医学研究センター副所長のアナトリー・チュマク博士が来日している機会をとらえ、話を聞きます。

博士は、同年8月に、長崎大学の山下俊一教授(現副学長)ら研究グループとウクライナ科学アカデミーが共同で刊行した「チェルノブイリ事故の健康影響〜四半世紀の結果」の事務責任者でもあります。この2冊の報告書によれば事故の影響は甲状腺ガンや白血病だけでなく非ガン系の疾病、神経精神医学的影響・心臓循環器系疾患・気管支肺系疾患など様々な健康への悪影響が指摘されています。特に、汚染地域(0.5〜5 mSv/年)の2世の子ども達にも健康影響が見られる点や高線量地区では健康な子どもは20%ほどと報告されています。

一方、IAEA (国際原子力機関)やUNSCEAR (国連科学委員会)は疫学的視点から「リスク評価」としては認めていません。来年はチェルノブイリ原発爆発事故から30年、福島第一原発の3基爆発事故からも5年の節目を迎えます。

原発事故における人体への長期健康影響については「リスク管理」「予防原則」の視点からも極めて重要であるため、チェルノブイリの最近の情報も含めてお話を伺い、質疑応答を致します。


2015年 11月月例会のご案内

地球温暖化交渉 ―COP21にむけて、国内外の視点から―

講師:有馬純さん (東京大学公共政策大学院教授、前JETROロンドン事務所長)
日時 11月10日(火) 19時~21時
場所 プレスセンタービル8階(東京都千代田区内幸町2-2-1)

 国連の「第21回気候変動枠組み条約締約国会議」(COP21)は、11月30日から、パリで開催されます。気候変動問題に関連して、JASTJではこれまで地球科学者、行政官、国立環境研究所スタッフ、NGOなど、さまざまな立場の専門家の話を聴いてきましたが、今回はCOP21に焦点を絞り、有馬純・東大教授に講師をお願いしました。
 有馬さんは、COP首席交渉官の立場で国際交渉現場での活動歴があり、また、2011年以来、ロンドンに拠点を置いて、各国の動き、駆け引き、思惑をウォッチしてきました。この国際会議には、どのような力学が働いているのか、その中で日本の立ち位置、課題はなにかなど、日本を外から見ることの大切さも含めて、話していただきます。

《有馬純(ありま・じゅん)さん略歴》
東京大学経済学部卒。1982年通商産業省(現経済産業省)入省。資源エネルギー庁企画官、大臣官房審議官(地球環境問題担当)などを務め、2008~2011年国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)交渉官。2011~2015年、日本貿易振興機構JETROロンドン事務所長。2015年4月から現職。


2015年 10月月例会のご案内

子宮頸がんワクチン問題の現状

講師:隈本邦彦氏 (江戸川大学メディアコミュニケーション学部教授・JASTJ理事)
日時:2015年10月15日(木) 午後6時半~8時半
場所:白山の東京富山会館5階会議室 (東京都文京区白山5-1-3)

「体の広い範囲で持続 する疼痛の副反応症例等について十分な情報提供ができない」との理由で2013年6月に国が積極的勧奨の中止を決定したHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)。その後も、はたして安全で効果的なワクチンなのかそうではないのか、推進派・反対派の 論争が続いている。実はそれを伝えるメディアも、このワクチンがどのようなコンセプトで作られ、どのような効果が期待されているの か、その本質を十分知っているとはいいがたいのが現状である。また日本のワクチン安全対策の実情も知られているようで知られていな い。NHK記者時代に厚生省を担当してMMRワクチンの副作用問題、製造不正問題を取材し、現在は民間の医薬品監視団体「薬害オンブ ズパースン会議」のメンバーである隈本邦彦氏が、HPVワクチン問題をめぐる現状と課題を、基礎の基礎から噛み砕いでお伝えする。


2015年 9月月例会のご案内

日本の漁業政策 〜日本の漁業の特徴をふまえた資源管理の現状および課題〜

 ・講師 加藤雅丈さん(水産庁 資源管理部管理課 資源管理推進室長) 
 ・日時 9月11日(金)18時30分~20時30分
 ・場所 白山の東京富山会館5階会議室(東京都文京区白山5-1-3)

水産資源の減少による水揚げ量の減少、高齢化と後継者不足による沿岸地域経済の衰退、魚離れによる消費の減少と、日本の漁業をとりまく状況は厳しさを増しています。

前回7月の月例会で、『魚はどこに消えた?』の著者である片野歩さんに日本の漁業の厳しい現状と、資源管理を中心とした問題点をお話いただいたことを受け、参加者からは長く水産行政を担ってきた当事者である日本政府の見解も聞いてみたいと言う声が上がりました。

そこで、今月の例会では、水産庁の資源管理部管理課の加藤雅丈さんをお呼びして、日本の漁業の特徴を踏まえた資源管理の現状とその課題についてお話を伺います。

《加藤雅丈(かとう・まさたけ)さん略歴》
1965年生まれ、神奈川県藤沢市出身
昭和63年、東京水産大学卒、水産庁入庁
水産政策の企画、水産流通、国際資源調査、TAC(漁獲可能量制度)、指定漁業の管理等を経験。
24年4月神奈川県小田原市水産振興担当部長、今年4月より現職


2015年 7月月例会のご案内

日本の漁業は復活できる! ~乱獲から個別管理へ~

・講師 片野歩さん(seafood specialist 水産会社勤務 ライター)
・日時 7月13日(月) 18時30分~20時30分
・場所 富山会館5階会議室(東京都文京区白山 5-1-3)

日本の海からニシンが消え、マイワシが消え・・・そして昨年にはニホンウナギが絶滅危惧種となり、さらには太平洋クロマグロまでもが絶滅危惧種に指定されました。いったい日本の漁業はこの先 どうなってしまうのでしょう。日本の漁業のこんな衰退の理由について、日本政府は、世界の二百海里漁業専管水域の設定による遠洋漁業の衰退と海洋環境の変化のためだ、と説明しているようですが、世界の漁業の堅実な状況と見比べれば、最大の原因はやはり乱獲とみるのが自然です。片野さんは、雑誌や本などを通じて、日本は欧米諸国のように「乱獲の漁業」から「資源管理の漁業」に一日も早く転換すべきだと主張しています。6月にソウルで開かれた「第9回科学ジャーナリスト世界会議」の「持続可能な漁業」のセッションでは、スピーカーの一人として日本の漁業の厳しい現状を報告しました。片野さんに、日本の漁業の厳しい現状と問題点、乱獲を乗り越えた欧米各国の状況、 日本の漁業のこれからのあるべき姿などを伺います。

《片野歩(かたの・あゆむ)さん略歴》

2015 Seafood Champion Advocacy部門を受賞。1963年東京生まれ。早稲田大学商学部卒。水産会社勤務。 1995~2000年ロンドン駐在。 90年より北欧を主体とした水産物の買付け業務の最前線に携わり現在に至る。 特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには 20年以上毎年訪問を続けている。このほか中国の水産物加工にも携わる。 著書に「日本の水産業は復活できる!」(日本経済新聞出版社) 「魚はどこに消えた?」(ウェッジ)。


2015年 5月月例会のご案内

政治から見た原発問  ~超党派「原発ゼロの会」が目指すもの~ 

講師: 河野太郎氏(「原発ゼロの会」共同代表・自民党議員)
日時:  5月28日(木) 19時00分~20時30分
場所:  関西学院大学丸の内キャンパス(千代田区丸の内1-7-12 サピアタワー10階)

「福島第一原発3連発爆発・メルトスルー」放射能惨事から5年目に入りました。原因究明は、依然として進まず、その影響は深く広く広がり続けています。INESレベル7とレベル3の大気汚染と制御不能の汚染水は一人一人の生活・人生・土地・生態系を破壊し、自殺者を含め原発関連死者数は1,000人を超え(東京新聞推計)、およそ10万人の人々が故郷に帰れていません。これだけの大事故であるにも関わらず関係者が誰一人として裁かれていない事を批判する人もいます。また、新しい訴訟の動きも出てきています。日本の法律ではどんなに低線量でも確率的影響があるとのICRPの見解を認め通常・公衆は1mSv/年と決ている点、4.5 mSvでも小児癌に有意差などの国際論文が複数公表されている事実などから南相馬市の住民は国を相手に「20 mSv帰村撤回訴訟」を起こしました。国民の半数上が今も再稼動などに疑問を抱いているだけに、いま政治と民主主義が問われていると言えます。 あの事故とは何だったのか? いったい何が起きたのか? なぜこれほど問題解決が遅れているのか? これから日本はどうすればいいのか? 

今回の月例会は、「原発ゼロの会」が主催した37回に及ぶ「国会エネルギー調査会(準備会)」で、関係官僚や有識者と徹底討論を続けてきて見えてきたこと、「政治家」の目に映った、原発事故の知られざる裏側、エネルギー政策の現状、問題点、今後の課題などを忌憚なくお話を伺い活発な質疑応答を行います。


2015年 3月月例会のご案内

コンピューターは人間の知性を凌駕するか~人工知能技術の現状と展望

講師: 松尾豊・東京大学大学院准教授
日時: 2015年3月31日(火) 午後6時半〜8時半
場所: 東京富山会館5階 会議室 (東京都文京区白山5-1-3)

 人工知能技術の急速のシンポと応用に注目が集まっている。1960年代に人工知能(AI)という言葉が生まれて以来、大まかにいって3度目の研究ブームだが、今回は以前とは様相が異なるようだ。 コンピューターの高性能化とインターネットの普及による莫大なデジタル情報の生成を背景に、これまではごく限られた範囲や用途でしか発揮されなかった人工知能技術が大きく利用可能性を広げるとともに、人間の汎用的な知性に匹敵するまでに拡張しつつある。人工知能がチェスや将棋といったゲームの世界から社会に進出しようとしている。グーグルやフェイスブックなど資金力を有するIT企業の投資が目を引くのも、大学や政府が先導した過去の人工知能ブームとは状況が異なる。
 その結果、2045年頃に機械の知性が人間を上回る技術的特異点(シンギュラリティ)を迎えるとか、人工知能が人間の職を奪う時代が来るといった予言・予測を耳にするようになった。今回のブームは本当に人間を凌駕する人工知性を生み出すのか。もしそうであるなら社会はその技術革新にどう備えるべきだ。この分野の第一人者、松尾豊・東大大学院准教授とともに考えます。

松尾豊(まつお・ゆたか)さん 略歴:
 現職は、東京大学大学院工学系研究科准教授(技術経営戦略学専攻)で、同研究科の消費インテリジェンス寄付講座の代表でもある。
 1993年東京大学工学部電子情報工学科を卒業、2002年に博士課程修了。産業技術総合研究所研究員や米スタンフォード大学言語・情報研究センター客員研究員を経て、07年に東大大学院准教授。
 昨年6月からは人工知能学会が設けた倫理委員会の委員長として、人工知能技術が社会にもたらす影響などについて議論を始めている。


2015年 2月月例会のご案内

どうなる!日本の再生可能エネルギー~その現状と課題

講師: 山家公雄・エネルギー戦略研究所株式会社所長
日時: 2015年2月26日(木) 午後6時半〜8時半
場所: プレスセンタービル8階 会議室 (東京都千代田区内幸町2−2−1)

福島第1原子力発電所の事故から4年。日本のエネルギー政策は今なお混迷が続いています。その最たるもののひとつが、再生可能エネルギーの導入拡大策をめぐる政策のぶれです。原発依存を下げ、気候変動問題にも対処するため、再生可能エネルギーの大規模な導入を目指し、再エネの固定価格買取制度(FIT)がスタートしましたが、経済産業省はわずか2年ほどの運用で制度の根幹にかかわる見直しを実施しました。

FITの何が問題とみなされたのか。見直しで制度はどう変わったのか。またFITの先駆的な事例として知られるドイツやスペインの現状はどうなのか。エネルギー政策、とりわけ再エネに詳しい論客である山家公雄さんを招いてお話をいただき、会員とともにこれからのエネルギー政策に関して議論したいと思います。

山家公雄(やまか・きみお)さん 略歴:
 現職は、エネルギー戦略研究所㈱取締役研究所長、京都大学と東北公益文科大学で特任教授。1980年東京大学経済学部卒業、日本開発銀行(現在は日本政策投資銀行)に入行。同行の環境・エネルギー部課長(電力担当)、環境・エネルギー部次長、調査部審議役、参事などを経て、2009年からエネルギー戦略研究所所長。13年から東北公益文科大学(山形県酒田市)、14年から京都大学でエネルギー政策について教鞭もとる。著書に「再生可能エネルギーの真実」、「オバマのグリーン・ニューディール」「日本型バイオ・エタノール戦略」など多数。


2015年 2月月例会のご案内

エアバックリコール問題の背後にあるもの

講師:清水和夫さん

日時 2015年1月23日(金) 午後7時から

場所 千代田区内幸町2-2-1
  プレスセンタービル8階 特別会議室

タカタ製のエアバックの爆発を原因とするリコール問題は、アメリカのみならず世界に波及し、リコールされる自動車の台数は拡大し、日本の自動車産業の根底に、深刻な影を落とし始めています。

エアバックに使用される火薬の管理は、自動車産業の中の一つのエアポケットともいえる分野で、省庁の縦割り行政の矛盾の象徴ともいえる側面もあります。この問題を適切に処理しないと、今後の日本のものつくり産業に深刻な影響をもたらしかねません。エアバックリコール問題に精通する国際自動車ジャーナリスト・清水和夫さんをお招きし、日本の自動車産業が直面している問題の深層について語っていただきます。

(講演者のプロフィル) 

1954年生まれ東京出身。武蔵工業大学電子通信工学科卒業。1972年のラリーデビュー以来、国内外の耐久レースに参加する一方、国際自動車ジャーナリストとして活動。自動車の運動理論・安全技術・環境技術などを中心に多方面のメディアで執筆し、TV番組のコメンテーターやシンポジウムのモデレーターとして多数の出演経験を持つ。東海大学の講師として自動車技術の歴史を教える。2011年12月から日本自動車研究所客員研究員。ほかにも自動車や交通ITSに関する多様な検討委員を務める。自動車技術を正しく伝道することがライフワーク。近年注目の集まる次世代自動車には独自の視点を展開。自動車国際産業論に精通する一方、スポーツカーや安全運転のインストラクター業もこなす異色の活動を続けている。 連載および寄稿先として『CAR GRAPHIC』(カーグラフィック)、『LE VOLANT』(学研)、 『CARトップ』(交通タイムス社)、『GENROQ』(三栄書房)、 『モーターマガジン』(モーターマガジン社)、 『ホリデーオート』(モーターマガジン社)などがある。著書はNKH出版より『クルマ安全学のすすめ』、『燃料電池とは何か』、『ITSの思想』など上梓。