第23期科学ジャーナリス塾の取材実習第二弾は、10月23日(木)にオンラインで国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(以下、農研機構)の研究者の話を聞く形で行われた。塾生15名、塾関係者8名が参加した。

農業分野の温室効果ガス削減策
この日のテーマは「農業と環境問題」。農研機構 農業環境部門所長の山本勝利さんが「農業由来の温室効果ガスの排出削減」と題して、現状や対策研究の解説、さらに将来展望までを語った。
日本では、農業由来の温室効果ガス排出量のうち、牛のゲップ(消化管内発酵ガス)のメタンと水田・農地土壌からのメタン、二酸化窒素が半分ほどを占める。山本さんはメタン排出の少ない牛の開発に向けた取り組み状況などを解説し、塾生から様々な質問が相次いだ。

顕在化している異常高温の農業被害
ここ数年、異常な猛暑が続いているが、農研機構 気候変動適応策研究領域長の西森基貴さんは「気候変動の農作物影響とその適応策」について語った。
リンゴやブドウの着色不良など果実ではすでに高温障害が出ており、西森さんは、関心の高いコメについても近年、影響が無視できない状況になりつつあると解説した。コメへの影響は、米粒が白濁する「白未熟粒」が典型例で、産地では一等米の比率が落ちて、農家に大きな影響を与える。

品質低下のほかに収量減も懸念されるため、高温耐性米の開発状況や課題などにも話が及んだ。塾生からは「品質悪化や収量減のほか、病害虫の被害も拡大するのではないか」といった指摘も出て、活発な質疑が行われた。
文:北村行孝