フォークダンス方式で研究者たちと次々語らう「スピードネットワーキング」

 

会員 小島あゆみ

学会やセミナーの後に講演者に質問するのは、時間の制約があったり、自分の知識の足りなさから勇気が出なかったりと、意外に難しい。もう少しカジュアルに研究者と話す場があればいいのに、と私は常日頃から考えている。

そこで、WCSJ2025で気になったセッションに参加してみた。国際応用システム分析研究所(International Institute for Applied Systems Analysis :IIASA)が主催し、科学コミュニケーターのアネリーゼ・パーマー(Anneliese Palmer、以下、Lisa(リサ)さん)と南アフリカ国立研究財団(National Research Foundation of South Africa)の協力のもと開催された「科学者たちとのライトニングラウンド(即問即答)――人・地球・可能性:ウェルビーイングのためのシステム科学とジャーナリズム」(LIGHTNING ROUND WITH SCIENTISTS People, planet, and possibility: systems science meets journalism for wellbeing)である。

IIASAは東西冷戦下の1972年に政府の関わりを排して主要国が設立した研究所で、現在はシステム分析を用いた研究を通じ、地球規模の課題の解決を目指している(日本にも支部がある)。

リサさんによるIIASAの紹介、10数名の主にアフリカの研究者たちの短い自己紹介に続いて、スピードネットワーキングが始まった。このセッションの狙いは「短く集中した対話を通じて、科学ジャーナリストが新たな取材の糸口を発見し、システム思考への理解を深め、信頼できる情報源のグローバルネットワークを構築する」というもの。ルールは簡単で、フォークダンスのように会場の壁際に立つ研究者の前を科学ジャーナリストが1人ずつ順番に回っていく。1人の研究者と話せるのは5〜10分ほどで、深い話は聞けないが、それでもアフリカが抱える課題とその複層性、そして研究の学際的なアプローチを知ることができ、次第にIIASAのシステム思考に対しても理解が深まっていく。

印象に残ったのは、思春期の子どもたちのメンタルヘルスをテーマとしているケニアのダニエル・ムワンガさん(Daniel Mwanga)の話であった。彼はアフリカ人口保健研究センター(African Population and Health Research Center:APHRC)のデータサイエンティストである。ケニアでは、うつ病などの精神疾患や神経疾患をもつ思春期の子どもたちはプライマリケアに行かず、伝統医療や宗教指導者、教師に頼る傾向があるとのこと。そこで、教師が子どもたちの精神保健上の問題を発見した場合に医師と相談できるようにするシステムを構築しているそうだ。

ほかの研究者の研究テーマは、大気汚染、廃プラスチックのエネルギー貯蔵材料への変換、食糧安全保障を目指した作物のゲノム編集など、いずれも世界共通の課題であった。

このカジュアルでスピーディーなネットワーキングは、まず顔見知りになり、お互いの関心を述べ合うことで、将来的に科学ジャーナリストにとっては取材対象者、研究者にとっては広報やアウトリーチの依頼先となる道を開く第一歩であった。また、人見知りであっても、答えられない質問をされることがあっても話を続けざるを得ないという点で、科学ジャーナリスト、研究者の双方に胆力を鍛えるメリットがあると感じた。日本の研究機関でもお昼休みを利用するなどの工夫でぜひ試してもらいたい。

第13回科学ジャーナリスト世界会議 2025年 南アフリカ・プレトリア ページTOPへ戻る