日本科学技術ジャーナリスト会議(JASTJ、佐藤年緒会長)は4月14日(日)、科学技術に関する優れた報道や科学技術の啓発活動などを顕彰する「科学ジャーナリスト賞」の選考委員会を開き、2019年度の受賞作品を決定した。今年度は、応募作品が新聞4、映像7、書籍42、ウェブ2、展示3の計58点で、2018年度の92点、2017年度の73件に比べて少なかった。理由はわからないが、新聞や映像など全般に応募作品が少なかったためだ。
この中からJASTJ会員による1次選考で、新聞2、映像3、書籍6、展示1の計12点を選抜した上、最終選考委員会(メンバーは下記)で審査、以下の通り決定した。
授賞式は、5月28日(火)に東京・内幸町の日本プレスセンタービル10階ホールで開く。
科学ジャーナリスト大賞(2件・順不同)
金沢工業大学殿
「『世界を変えた書物展』など金沢工業大学による自然科学書の稀覯本収集・展示活動」(上野の森美術館、展示期間2018/9/8~24)
[贈呈理由]展示企画の顕彰は、開催期間が限られているため難しい。今回は、開催期間中に選考委員に見てもらうことができ、ほぼ全員から高い評価を得たので、展示企画作品として初めての大賞受賞が実現した。多くの来場者が「新しい世界を開いた初版本」に直に触れ、科学の発展に果たした役割を学べた。
日本放送協会(NHK)津放送局
第三制作ディレクター 森哲也(もり・てつや)殿
チーフ・プロデューサー 遠山哲也(とおやま・てつや)殿
NHKスペシャル「見えないものが見える川 奇跡の清流・銚子川」(2018/11/11放映)
[贈呈理由]映像が美しく、見る人を引き込む力がある。「奇跡の清流」として銚子川を取りあげた着眼点もよかった。サイエンスとしては、いま一歩のところもあったが、映像作品としての秀逸さが救いとなった。
《注》大賞が2点になったことは2012年に次いで2回目。展示の授賞は昨年の「世界一小さな科学館『理科ハウス』の設立・運営に対して」についで3件目。
科学ジャーナリスト賞(3件・順不同)
毎日新聞水戸支局兼科学環境部記者(報道時は大阪本社科学環境部記者)
鳥井真平(とりい・しんぺい)殿
「『ハゲタカジャーナル』をめぐる報道」(2018/4/3~2019/1/19)に対して
[贈呈理由]掲載論文の品質管理をせず高額な掲載料を徴収する「ハゲタカジャーナル」の問題点を鋭く衝いている。この報道を契機に文部科学省や大学でハゲタカジャーナルに注意を促す動きが生まれた。科学・技術ジャーナリズムの原点に迫るものだといえよう。
駿台予備学校講師
山本義隆(やまもと・よしたか)殿
「近代日本一五〇年――科学技術総力戦体制の破綻」(岩波書店)の著作に対して
[贈呈理由]「明治維新から150年」を成長と繁栄の時代だとナショナリズムを強調するような視点とは異なり、福島第一原発事故に至る科学技術体制の破綻の歴史と捉えた。科学ジャーナリズムに批判精神が足りなかったことを厳しく糾弾した書でもある。
国立科学博物館副館長(兼)人類研究部長
篠田謙一(しのだ・けんいち)殿
「江戸の骨は語る――甦った宣教師シドッチのDNA」(岩波書店)の著作に対して
[贈呈理由]江戸屋敷で発掘された3体の遺骨から宣教師シドッチのDNAを蘇らせた過程をドラマティックに描いた好書で、研究者の熱い思いも盛り込まれていて興味深い。科学者の書いた啓蒙書としても、高く評価されよう。
科学ジャーナリスト賞選考委員(50音順、敬称略)
〔外部委員〕
相澤益男(国立研究開発法人科学技術振興機構顧問)、浅島誠(東京大学名誉教授、帝京大学特任教授)、白川英樹(筑波大学名誉教授)、村上陽一郎(東京大学名誉教授、国際基督教大学名誉教授)
〔JASTJ内部委員〕
大池淳一(JASTJ理事)、佐々義子(同)、柴田鉄治(同)、林勝彦(同)、元村有希子(同)