科学ジャーナリスト塾第15期(2016年9月〜2017年2月)の記録

第4回(2016年10月19日(水)開催)「編集者からみた写真」報告

報道写真と映像の技術
宮澤直美(塾生)

 第4回のテーマは報道写真と映像であった。9月に作成した「しらせ訪問」の報告書に写真をそえる際、もっと良い写真を撮れなかったものかと後悔したのを思い出した。

 報道写真で一番大切なことは、一目で伝わること。そんな写真を撮るために何が必要なのか、東京新聞編集委員の引野肇氏から、技術的なポイントから貴重な体験談まで伺った。同じ研究者の写真でも、記事の主役が“研究者”か“研究”かで構図は異なってくる。ただ、現場で常に理想的な構図をとるのは難しい。被写体に「一歩近づく」という言葉に、この写真で伝えねばという記者の使命感を感じた。

 映像の場合、無駄なものは一切入れないという。「映像におけるScience Visualization」をテーマに講演いただいたのは林勝彦氏。小学生のころに観たNHKスペシャル「人体」は今でも私にとって忘れられない作品で、林氏はそのプロデューサーである。最先端の内容を分かりやすくするために、様々な映像技術を用いて可視化や簡略化を行う。ただし、内容は真実でなければならない。そのため、専門家ととことん内容をつめたという。“科学ライターは孤独”(第2回の塾より)だったが、“映像制作は白熱した共同作業”であった。

 今回、良い報道写真・映像のために必要なものとして強く印象に残ったのは、記者や制作者の強い意志や熱意だった。「しらせ訪問」時の私に足りなかったものは技術だけかと自問してみる。きっと今ならもっと良い写真が撮れる。

主張を伝えるのは「計算された」画面
高山由香(塾生)

 10月も半ばを過ぎ、人口密度の下がった教室。いつもと変わらぬ穏やかな笑顔で塾長は言った。「今日の講師は『鬼デスク』ですよ」

 4回目のテーマは「編集者から見た写真」。「カメラマンではないから、使う側・選ぶ側の立場で話します」と、東京新聞編集委員の引野肇氏。取材場面別の解説では、時に厳しい言葉も交えて「理想の一枚」と現場のリアルを語った。塾生は「記者の主張を一瞬で伝える力を持った写真」の大切さと得難さを追体験した。報道写真の第一歩は、画(え)を見た読者が何を感じるかを意識すること。漫然と撮った写真を報道写真とは呼ばないことを肝に銘じた。

 後半は元NHKプロデューサー林勝彦氏による講義「映像におけるScience Visualization」。放射能汚染を題材に、目に見えないもの表現方法を解説した。印象的な映像技法と科学的な正確さのバランスは、作り手と監修者の真剣勝負から生まれていた。「世界へ出して恥ずかしくない映像を作るために、世界最高峰の監修者を付けた」と語る林氏は、元テレビマンらしく「キッカリ15分間」で講義を終えた。

 質問タイムでは、視覚情報の加工における「やらせ」と「整理」の線引き、撮影時の心構えが話題になった。まずは、取材対象が受ける迷惑を自覚することが肝要。同時に、読者や視聴者の負荷を考慮することも欠かせない。良い画の後ろではフレームの外側へも行き届く冷静な想像力と、真実を追い伝える情熱がせめぎ合っているのだと知った。

 

 
第4回塾のようす(撮影:都丸亜希子)