科学ジャーナリスト塾第15期(2016年9月〜2017年2月)の記録

第9回(2017年2月1日(水)開催)「原稿の修正―ライティングの指導(3)」報告

トピックセンテンスからブレない文章を書く
藤田豊(塾生)

 第9回科学ジャーナリスト塾が2月1日に開催され、JASTJ Web編集長の漆原次郎さんが、塾生の原稿を添削しながら、ライティングの指導を行った。

 漆原さんは「トピックセンテンスが重要だ」と繰り返し強調した。伝えたい事をトピックセンテンスにまとめ、最初の段落に置く(前回の高橋講師からも同様の指導があった)。最後までそこからブレない。伝えたい事にプラスにならない話題は(どんなに書きたくても)書かない。漆原さん自身がトピックセンテンスを目につく場所に貼って執筆していると、具体策の伝授まであった。

 読んでスッと入ってくる文章を書くには? 伝えたい事を一つに絞る、読みなれている文章の型からはみ出しすぎない、一文を短く区切る。この話題の時、塾生の伊藤隆太郎さんから「読者が知っている内容は入りやすい」との指摘があった。未知のことを紹介する科学記事では新規情報を既知情報の上に乗せると分かりやすくスッと入ってくる文章になる。ひとつの書き方だ。

「原稿ができあがったら声に出して読むと、文章がスムーズかどうか分かる」との漆原さんの言葉が印象に残った。さらに、音読する事により筆者がある程度、第三者的に文章に向き合うことができ、伝えたい事が明確であるか、トピックセンテンスからのブレはないか、を判断する効果もあると考えられる。

 この文章のトピックセンテンスは明確だろうか? そこからのブレはないだろうか? 読者に今回のジャーナリスト塾の内容が伝わっただろうか?

奥義「見えるところに貼りなさい」
伊藤隆太郎(塾生)

 塾、というよりは道場だ。1対1の文章指南。ジャーナリスト塾もいよいよ終盤に入り、2月1日の9回目はサイエンスライター漆原次郎さんとの真剣勝負だった。

 まずは、書くときの身の構え。「その文章の中で伝えたいことを集約した一文を、執筆前につくり、見える所に貼りましょう」。この構えで、原稿はブレにくくなる。読み手にも「伝えたいこと」が伝わりやすくなる。

 だが、その伝えたいことが抽象的ではいけない。「日本の海洋技術について」……これはダメ。「海洋技術の今を伝える」……まだダメだ。「日本近海で、資源として有望なマンガン団塊が大量に見つかった」。うむ、これなら手に取りたいし、読んでみたい。

 では、どのように伝えよう。実際に塾生原稿に一つずつ、漆原さんが手を入れる。「○○だそうです」「○○といいます」……。文中に繰り返された表現が、書き換わる。「××さんが△△という資料で○○と述べた」。根拠を示せば読者は引きつけられるし、説得力が高まるだろう。文章に力が増していった。

 勝負が進むにつれ、議論も起きた。「地球の地形図は3割ほどしか完成していない」という話題を、どう書き出すかをめぐり、意見が割れる。「海底がまだ5%しか分かっていない、という背景から書くべきだ」「いや『地球はたった3割だ』という全体像をまず示すほうがいい」。さあ、どっちか。正解はないし、だから難しくて楽しい。

 比喩を用いるときのルールや、タイトルの付け方の原則など、指導はどこまでも具体的。師範の技にみんなで鍛えられた。

 

 
第9回塾のようす(撮影:都丸亜希子)