科学ジャーナリスト塾第15期(2016年9月〜2017年2月)の記録

第8回(2017年1月18日(水)開催)「原稿の発表―ライティングの指導(2)」報告

脱エッセー。伝える文章の基礎講座
沼口麻子(塾生)

 1月18日、JASTJ科学ジャーナリスト塾で、講師の高橋真理子氏(朝日新聞社)による、文章添削の実習指導が行われた。高橋氏は、本講座の提出期限を厳守した塾生8名の文章を例に、報告文や主張文の特徴を明示した。私が衝撃を受けたのは「小学校で教わった作文はエッセーであり、伝える文とは違う」という言葉だった。

 高橋氏によると、そもそも、学校における文章とは「書くこと」だけを目的としているので、作文は自由に書き連ねてよいエッセーの部類に入る。

 しかしながら、現実世界において文章・記事を作る一番の目的は「伝えること」。それは、事実を読者に伝える「報告文」である。理解してもらうためには正確性を最優先する必要はない。また、「主張文」とは事実に基づき、取材先や著者自身の主張を伝える文章のこと。そして、最初の方で訴えたいことを明確にした一文「トピックセンテンス」をいれることがもっとも重要だという。

 今回、私個人として一番面白いと感じたのは塾生の高山由香さんの「大海にも『お邪魔します』の気持ちで」という文章だった。海洋投棄や水質汚染を、家を汚すといったユニークな喩えを用いて、わかりやすい視点で表現していた。高橋氏から学んだ伝える文章の基礎を身につけ、高山さんのように更に独自の表現で読者の心を掴む文章を書ける日が来るのはいつだろうか。締め切りに間に合わずに原稿を提出していなかった私は、少し猫背になりながら、講座終了とともに次回の塾の原稿締め切り日を手帳に太字で書き綴った。

的確であることと魅力的に見せること
菊池結貴子(塾生)

 塾もラストスパート、最終作品の作成に入った。「海」にまつわるテーマで、一般市民向けの記事をつくる設定だ。第8回では、初稿に朝日新聞の高橋真理子氏が赤ペンを入れ、塾生全員でそれを共有した。プロの講師にくまなく文章を見てもらえる、貴重な機会だ。

 それぞれの原稿に対するコメントを振り返ってみると、塾生間で共通するものがあった。

 まず、読者目線が足りていないという指摘。冒頭に「何を伝えようとする文であるか」が明示されて初めて、読者は記事の内容をつかみ興味をもつ。しかし、今回はそれを欠いた原稿がほとんどであった。その一方で、「読者にとって不要な情報」として文や語句を削除されたものもあった。とにかく読者目線に立って、必要な情報を適切なタイミングで提示し、余分な情報は積極的に削る。直感的な理解に頼れない科学の話題では特に重要なことだろう。

 また、「的確であること」と「魅力的であること」のさじ加減を直された塾生が多かった。タイトルや見出しでは、興味をひく魅力的な表現が欲しいが、これが難しく、つい事実を淡々と記してしまう。一方、文末で締め方を工夫しようとするあまり、事実にそぐわない表現や紋切型の語句を使ってしまう例もみられた。場面や内容によって、どちらを重視するべきか見極める必要がある。

 どちらの点も、改善には練習あるのみだが、明文化されたことでだいぶ意識しやすくなったように感じる。学んだことはぜひとも今後活かしていきたい。

 

 
第8回塾のようす(撮影:都丸亜希子)