科学ジャーナリスト塾第15期(2016年9月〜2017年2月)の記録

見学会 南極観測船「しらせ」(2016年9月22日(木)開催)報告

しらせ訪問から学んだこと
七海裕貴(塾生)

 2016年9月22日、千葉県船橋港にて柴田鉄治さん案内で南極探査船「しらせ」の見学会に参加した。あいにくの雨だったが、思ったよりも親子連れが多く会場を賑やかにしていた。また古めかしい迷路のような船内には、写真・ポスター・南極の石など様々な展示物があり、小さな博物館のようになっていた。船体や防寒着の色などオレンジが目立つ。それは「単純に見やすいから」とのことだった。当時の乗員の生活を少しでも感じたいと思っていたところ、寝室の限られた個人スペースに張られたシールや、散髪部屋の入り口にある手作りのユーモアがあるチラシにそれらを感じた。

 見学会終盤、ミサワホーム井熊英治さんから南極クラスを受けた。話に引き込まれるようなプレゼンや南極の氷に触る機会があり南極を身近に感じることができた。南極クラスは年間300回ほど全国の学校で開催しているとのことだ。この授業を受けて「南極に行ってみたい」と思った子供たちの幾人かが、将来南極に挑戦していくのだろうと思い、感慨深く感じた。質疑応答で、南極に基地を作ることで得られる技術は「シンプルに簡単に高性能なものが作れること」との話があり、ものづくりの人間側として共感できた。

 しらせへの訪問や柴田さんの体験談を聞くまで、南極へ特に関心がなかった。なんとなく南極には何もないと思っていたからだ。しかし南極には、独自の生態系、地球と宇宙の歴史、地球環境、そして南極を平和的利用のみに限定する南極条約など貴重なものがあった。今回の学びを個人的に広めていきたいと思う。

 
隊員たちが互いに髪を刈る理髪店。
部屋にはトラ刈になった隊員の写真(撮影:七海裕貴)

南極では息が白くない?! -昭和基地での秘話を聞く-
藤田豊(塾生)

 9月22日に、科学ジャーナリスト塾の番外編として、塾アドバイザー柴田鉄治氏の案内で、南極観測船「しらせ」(初代)の見学会が催され、塾生の多くが参集した。南極での越冬を4回も体験をされたミサワホームの井熊英治氏の「南極クラス」に参加し、南極の話を伺った。 我々の集合時間が遅かったため、井熊氏の「南極クラス」は既に終了していたのだが、柴田氏と井熊氏が同時期に「しらせ」に乗船していたというご縁があり、井熊氏が我々塾生のために特別に時間外クラスを開いてくださった。

 話の中で「南極では、吐いた息が白くならない」という事実を初めて知り、不思議だった。「南極の空気は綺麗なので、呼気中の水蒸気が液化・凝固するのに必要な微細なゴミ粒子が存在せず、水蒸気が気体状態で拡散する」との解説に、なるほどそうなのかと合点した。

 また、プレハブ住宅は南極基地の建物開発から生まれた、という話は聞いたことがあったが、ミサワホーム社員である井熊氏の話からその経緯を知る事ができた。昭和基地ではそれぞれの分野の専門家は1~2名しかおらず、何をするにも観測系・設営系を問わず隊員が助け合う以外にない。そのため、ミサワホームでは昭和基地の建物を設計するに当たり、誰でも簡単に素早く組み立てられることを基本にしたのだという。その構造が後のプレハブ住宅に繋がったという説明を聞き、プレハブ住宅誕生秘話を知った。

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「南極クラス」内の展示品(撮影:藤田豊)